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ひきこもり30年 姉を殺害した発達障害の弟に「社会秩序維持のため」求刑を上回る判決 障害に無理解な社会

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ひきこもりはなぜ「治る」のか?―精神分析的アプローチ (シリーズCura) [単行本]

ひきこもりとは思春期・青年期に起きる問題で、6か月以上自宅にひきこもって社会参加をしない状態が続き、ほかの精神障害がその第一の原因とは考えにくいものを言います。この被告人と違いアスペルガーなどの障害がない場合が多いのです。この被告人はそれだけ過酷な状況にあったもといえるでしょう。


 

 約30年間の引きこもり生活を送った末、支援を続けた実の姉を包丁で刺殺したとして殺人罪に問われた被告人(42)の裁判員裁判の判決で、大阪地裁は2012年7月30日、求刑の懲役16年を上回る懲役20年を言い渡しました。

 判決は、動機を姉への逆恨みとした上で「姉は身体的、金銭的に被告に尽くしてきたのに、理不尽に殺害された」と指摘し、約30年間引きこもり状態だった被告人の犯行に先天的な広汎性発達障害の一種、アスペルガー症候群の影響があったと認定したそうです。

 その上で

「家族が同居を望んでいないため社会の受け皿がなく、再犯の可能性が心配される。許される限り刑務所に収容することが社会秩序の維持にも役立つ」

として、求刑より長期間の矯正が必要と判断したというのです。

 12歳から30年間もひきこもり、というのには正直驚きました。そして、判決によると「姉は身体的、金銭的に被告に尽くしてきたのに、理不尽に殺害された」というお姉さんや、被告人とは同居したくないというご家族のことを想うと、暗然とせざるを得ません。

 そして、この判決で、アスペルガー症候群などの発達障害やひきこもりに対する偏見が広がらなければいいのですが。

 

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(厚生労働省HP ひきこもり対策推進事業 より)

 

 

 

 それにしても、詳しい事情は分からないものの、障害者を刑務所に収容しておいた方が社会秩序の維持に役立つとまで言い切る判決には、違和感を持ちます。「社会に受け皿がない」から再犯可能性が高まるのであれば、それは本人の責任ではないからです。

 この事件について、兵庫県ではとくに有名な、発達障害に詳しい六甲カウンセリング研究所の井上敏明所長(臨床心理学)は

「アスペルガー症候群だからといって、すぐに再犯に走るわけではない。発達障害には家族など周囲の理解が必要だ。単に刑務所に長期収容するだけでは何の解決にもならない」

と言っておられます。もっともですね。

 この判決は、ひきこもりの問題を姉のせいと思い込んだ被告が、姉に恨みを募らせた末の犯行と指摘したそうです。しかし、私も発達障害の子供たちを何人も担当しましたが、その視野の狭さがまさに障害の故なのです。それが発達障害なんです。そして、障害は周りの適切な援助と指導があれば乗り越えられるのです。

 日本発達障害ネットワークの市川宏伸理事長が、被告人が十分に反省していないとするこの判決に対して

「アスペルガー症候群の人は反省していないのではなく、言われることが分かっていないだけだ。裁判員の理解がないとこういう結果になりやすく、裁判員制度が始まるときに心配していたことが起こった」

と批判なさったのは重要な指摘です。

 

 

アスペルガー症候群

発達障害の一類型。知的障害あるいは言語的コミュニケーションの障害を伴わない自閉症を指し、しばしば高機能自閉症と同じ意味で用いられる。

当事者は社会的に困難を抱えながらも、知的障害がなく、一般的なコミュニケーション場面では一見して障害とわかりにくい。そのため、1990年代には障害の一種として知られていたにもかかわらず、福祉行政の対象になり得ていなかった。発達障害者支援法は、地域ごとに発達障害者支援センターを開設することや、乳幼児期から成人期まで地域で一貫して支援を受けられる体制をつくること、医療や福祉的支援の専門家を確保し当事者や家族を含めた関係者の連携をとることなどを盛り込んでいる。支援法の施行により、医師の診断に基づいて精神障害者保健福祉手帳を取得することが可能となり、精神障害者枠で就労することもできるようになった。 

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新版 発達障害児のための支援制度ガイドブック [単行本(ソフトカバー)]

 

 

 さて、最近、生活保護を受けておられる方々を「ナマポ」といって蔑視する風潮があるようですが、ひきこもりの方々も「ヒッキ―」と呼ばれて、いわれのない差別を受け、なおさら「社会復帰」が難しくなっています。そして、すでに100万人以上がひきこもり状態にあるといわれています。

 そもそも、一言で「社会復帰」と言いますが、社会で働くことだけが価値があるという絶対的な価値観が、引きこもっている方々だけではなく、多くの人を生き辛くさせていると思います。

 そんな中、ニートやひきこもり、不登校等の社会生活を円滑に営むうえで困難を有する子ども・若者に支援が必要になっているということで、2010年4月に「子ども・若者育成支援推進法」が施行されました。これを受けて、内閣府は2012年7月4日、困難を有する子どもの支援者調査報告書を公表しました。これは、困難を有する子どもの支援者2,856人(714法人)を対象に、2011年10月3日~11月10日に調査を行ったものです。

 この調査で、「困難を有する子ども」を支援するうえでもっとも大変だったと支援者が感じたケースは、「ひきこもり」(28.7%)がもっとも多く、次いで「不登校」(19.5%)、「発達障害」(9.5%)という結果が出ています。なにしろ、「やる気があれば何でもできる」と言いますが、本人にやる気や気力がわかないのですから、ひきこもりの方々を支援することがいかに難しいかがわかります。

 支援対象者の家族が抱えていた問題については、「過干渉」(45.4%)、「両親の不仲」(36.7%)、「子どもに障害があるが、その受容ができない」(36.7%)、「子どもへの依存」(35.0%)の順で多かったそうです。

 他方、支援対象者本人が抱えていた問題については、「こころの不安定さ」(82.4%)、「コミュニケーション能力の低さ」(80.0%)、「人と関わることへの不安」(77.7%)、「自己表現力の低さ」(75.3%)、「同世代からの孤立」(74.6%)の順で多かったというのです。

 家族が良かれと思ってしている過干渉などの問題が、家族以外の他者との関係性を成長させることを阻害している場合もあるのだと思われます。


ひきこもり

長期間にわたって家庭内にひきこもり、社会的な活動に参加できない状態。対人恐怖症や気分障害、人格障害が認められる場合もあるが、ひきこもり自体が問題の中心となる人がかなりいると推測される。不登校がきっかけとなることが多く、男性に多い。家族との接触もほとんどなく、自室にこもって対人接触を全面的に回避しているケースもある。この状態が本人の社会性の成長を阻み、対人関係への自信を喪失させ、自己評価を下げる。その他、強迫傾向、昼夜逆転、家族への攻撃性などが見られるが、生活態度とは裏腹に、社会で生きていけないことに対する焦りや苦悶がある。 

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ひきこもりの家族関係 (講談社プラスアルファ新書) 

「ひきこもる」ことは、そんなに悪いことなのか!?ひきこもりの子どもたちは自分が人とうまく関われないことに苦しみもがいている。人生を賭けて訴える心の叫びに、親はどう応え、何をすればいいのだろうか。

 

 

 

 「ひきこもり」は、上に書いてあるように、さまざまな要因によって社会的な参加の場面がせばまり、就労や就学などの自宅以外での生活の場が長期にわたって失われている状態のことをさします。部屋に閉じこもったままでいる人もいる一方で、コンビニなどには行ける人もいますし、趣味のためには外に行ける場合もあります。

 「ひきこもり」をしている人々の性格の特徴があたかも一種類にくくれるような言われ方をすることがありますが、原因も様々で、今回の事件の被告人のように精神的な疾患がある場合もない場合もあり、実際には、多彩な人々が、「ひきこもり」の状態におちいっているのです。その対処も一律には論じられませんから、きめ細かい対策が必要です。

 これらの問題について、橋下大阪市長は「たかじんのそこまで言って委員会」で、ニート対策として「ニートは拘留の上労役に科す」と発言して批判を受け、維新の会は発達障害は家庭教育に問題があるなどという家庭教育支援条例を作ろうとして恥をかきました。彼らは無知なうえに非人道的なことを言っていますが、そんなに物事単純なら苦労しません。

 ひきこもりの問題は難しくて、本人や家族の努力だけではどうにもならないことが多いのです。精神障害である発達障害も、もちろんそうです。

 しかし、少なくとも、ひきこもりからの脱出はひきこもり期間が短いほど対処が容易です。親だってわからないものはわかりません。助けを求めましょう。恥ずかしがらず、隠そうとせず、是非早めに専門機関にご本人やご家族がご相談してみてください。

ひきこもり地域支援センター連絡先

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(個人には手に余る問題です。自助グループや専門家に相談を)



  支援者が見た支援に関する課題として、「行政機関の理解・協力を得ること」(43.6%)がもっとも多くあげられています。ところが、2012年4月1日現在、内閣府で把握している地域支援協議会は、36か所に過ぎません。

 また、日本の15~39歳の各年代の死因の第1位は、自殺となっているのですが、これは国際的に見ても深刻です。15~34歳の若い世代で死因の第1位が自殺となっているのは先進国7か国では日本のみで、その死亡率も他の国に比べて高いのです。若い世代がいかにギリギリのところで生きているかがわかります。

 ところが、日本の学校教育費の対GDP比の水準はOECD加盟国中第24位と低く、公的負担の比率は3.3%で、対象国の中で最下位です。

 財政状況が厳しい中、限られた予算を再び「コンクリート」に振り向けるのではなく、重点的に「人」=教育と福祉に。

 弁護士として困難を抱える子どもたちと接し、一緒に悪戦苦闘していると、発達障害にしても、ひきこもりにしても、社会の理解も援助してくれる資源も非常に乏しいことを実感しています。責めるのではなく、頑張れというのでもなく、寛容と理解と心的・物的援助こそが求められています。

児童虐待相談・通報件数過去最高 いじめ・虐待対策は地域ぐるみで子どもを育てること 子ども未来通信24 

我が子をいじめで失わないために 子ども未来法律事務所通信23

「待つ」   子ども未来法律事務所通信7

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