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<政僚シリーズ8>長期政権の膿が噴出した黒川東京高検検事長定年延長-政僚を検察にまで及ばす驕りは許されず

<欧米社会では公職トップの任期は2期8年が常識>

 アメリカでは大統領も州知事も、或いはロサンゼルス市長も2期8年と任期が決まっている。権力は腐敗していくからである。その極みは日本の政治史上最長の政権となった安倍政権に如実に表れている。私は、あまりこうしたことだけを追及したくなかったが、予算員会分科会で私のスタイルで森雅子法相に質問した。

 私は、余人を持って代え難しという場合、定年延長はあっていいと思っている。日本は定年が決められているが、アメリカ社会では大学教授などには定年はない。今の民主党の大統領選候補選びを見ても、サンダースの78才を筆頭に有力候補の大半は70代しかも後半で、現大統領のトランプも73才である。更に、マレーシアのマハティールは92才であり、激務の国のトップも務まるのだから、私は定年延長もあっても何もおかしくないと考えている。

<検察官には検察庁法適用が当然>

 しかし、検察官の定年は検察庁法に63才と決められている。かつ1981年改正で国家公務員に60才定年制がひかれた時の想定問答に定年延長出来ないとしていた。ところが、安倍政権は法律を学んだものには常識の特別法(検察庁法)が一般法(国家公務員法)に優先するというルールを踏みにじり、法律を無視して違法に黒川東京高検検事長の定年延長をしたのである。

 自民党は三角大福中の派閥闘争に明け暮れた反省から、総裁は任期は3年、最長2期6年と定められていた。安倍政権が長く3期目もありそうだったことから、3期9年に延長した。その後で、安部首相を3期目の総裁に選んだ。自民党は節度をもってルールを先に変えているのに、それを政府はしゃぁしゃぁと解釈を変更して任期を延長したのである。

<極めて妥当だった塩飽審議官の定年延長>

 私は、農林水産省時代国際部対外政策室長の時(1989~91年)に、塩飽二郎という立派な審議官の下、文字通り鞄持ちとして世界各地を飛び回り、年11回も海外出張をしたこともあった。

 国際交渉はボトムアップではなく、トップダウンつまり交渉者同士のやり取りで決するのでトップの力量が鍵を握る。日本のように2年かそこらでクルクル変わっていたら交渉がうまく進まない。日本のコメの自由化問題が急を告げていた頃であり、塩飽審議官は農業交渉のグループの中の顔役になっていた。農林水産省は昔は国際関係をそれほど大事にしてこなかったため、国際分野での人材育成を怠ったのであろう、代わる適材は見当たらなかった。ガット・ウルグアイラウンドの真っ最中なのに、塩飽審議官が60才で定年になり困ったものだと思っていたところ、余人を持って代え難しということで定年が1年余延長された。

<消えた私の第二の塩飽の夢>

 塩飽審議官は学生時代に結核を患い、3年か4年療養生活を強いられたので同期より年長だった。艱難辛苦を乗り越えられたのだろう、威張って大声を張り上げることなどなく、洒脱な人格者だった。今思い起こしてみると塩飽審議官にお仕えした2年間は、私にとって最高の役人時代だった気がする。

 つまらぬ告白をすると、私もいつか塩飽審議官のように余人をもって代え難し、という国際交渉のプロになろうと秘かに決意した。ところが、望み通りにはいかないのが世の常、国際分野の幹部との声はかからず、いつの間にか政界に身を置くことになってしまった。羽田元首相の政界進出の強い勧めに8年間も応じずにいた理由の一つは実はここにあった。

<検察にまで政僚を跋扈させんとする安倍政権>

 もし黒川東京高検検事長が、例えばカルロス・ゴーンの問題を扱っており、今後も国際問題がからむ複雑な案件を引き続き担当するためにやむをえないといった具体的な理由があるのならば、定年延長にも理はあると思う。それでもルールには従わなければならない。

 政界で後継候補を探すのは至難の業であり、なかなか適当な人は見当たらない。だから、安直に2世3世議員が増えていく。しかし、霞が関あるいは裁判官や検察の法曹界では優秀な人材は目白押しであり、代わりはいくらでもいる。それを安倍内閣は自分に近い者を検事総長にしようとしているのである。検察は時の政権をも起訴する権限を持っていることから、公平性、中立性が要求される。

 ところが驕る安倍政権は、検事の人事にまで平然と介入し、私が再三にわたって警鐘を鳴らす政僚の跋扈がついに検察組織にまで及ばんとしているのだ。

 可哀想なのはこんな騒動に巻き込まれた黒川氏である。ただ、もし黒川氏が本当に検察のエースだとしたら、違法な定年延長など辞退して、検察の意地を示してほしいものである。

<アメリカでもトランプ大統領が司法介入、辞任要求騒動に発展>

 安倍首相はやることがトランプ大統領に似ていることが多い。海の向こうでもトランプ大統領が盟友ロジャー.ストーン被告の求刑を巡り、ツイッターで不満を述べ、それに従った形となったことから、バー司法長官が「職務を遂行できない」と不満を述べた。一方、4人の担当検事は抗議の意味で担当を降り、更に元職員1100人がバー長官の辞任を要求する騒ぎとなっている。その要求書の中で、司法省は政治に関係なく正義を守るための適切な行動を促している。やはり、同じことが起こっても、アメリカには自浄作用はあるのに、日本は少しも反省がみられない。

<支離滅裂迷答弁>

 森法相の答弁や説明はもう滅茶苦茶・支離滅裂である。例えば元々65才定年制にしようと検討しており、それを先取りして解釈を変更したと言い訳しだした。確かに65才といっても昔と今では元気さが違うし、方向は理解できる。しかし、ルールを改正してからやるべきであって、先取りしてやるということなどあり得ない。完全な後付けであり、麻雀ではないし許されることではない。この他にも、国家公務員法が適用される、法解釈を変えた、口頭決裁した・・・と信じがたい答弁が続いた。この件は、多くの同僚が追及していたので詳述は避ける。

 私は、何よりも法相の答弁に誠実さの一かけらもなかった事に驚いた。なぜなら7年前テレビ入りの予算委員会で、特定秘密保護法担当大臣に質問した時にはオドオドしており、あまりいじめるのはよくないと思い止めたくらいであった。ところが、7年経ち悪い方向に成長し、ふてぶてしくなり白々しい答弁を平然とするようになっていた。嘘に嘘を重ねる弁解は聞くにたえない。2月26日の法相不信任案提出は必然である。

<対策本部会合欠席からも森法相辞任は当然>

 新型コロナウィルスの水際対策として、現在入国管理難民法5条第14号でもって外国人の入国を拒否している。「日本の利益及び公序を害するおそれがある者」を上陸(入国)拒否できるという第14号は、そもそもテロリスト等の入国を防ぐ事を想定している。それを場当たり的に、この規定による閣議了解という際どい理屈で外国人の上陸(入国)を止めている。当日、(2月25日)毎日新聞もそのことを問題視し、14号で対応するのではなく、ちゃんと法律を整えるべきだと詳細に報じた。

 ところが、2月16日に森法相は新型コロナウィルス対策本部の会合をすっ飛ばして、地元福島県の書道展の挨拶に出かけて欠席した。小泉環境相、萩生田文科相も地元行事で欠席したが、森法相こそ出席が必須の関係閣僚だったのだ。イスラエル等は日本人の入国を明確に拒否しており、上陸拒否は国際問題にもなりつつあるのだ。それにもかかわらず大臣の欠席を許す、安倍政権の危機意識の低さはここにも現れている。そこで「さぞかし、いっぱい立派な書をみてこられただろう。それならば立派な書で以って辞表を書いていただきたい」といつもの嫌味で質問を締めくくった。

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