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休校で家にいる小4の息子へ

 先週、とつぜん君たちは「コロナ・ウィルスのため学校はしばらく休みです。総理大臣からの要請がありました」と先生に言われた。6年生を送る会だとか、今年のおさらいのテストだとか、あと1ヶ月いろいろと楽しみにしていること、めんどうくさいこともあった。それがみんな、なしになった。
 反応はいろいろだ。「ちょーラッキー!」とはねてるやつもいるし、君の小1の妹のように「学校はたいくつだから好きな勉強できてうれしい!」なんていう人もいる。君は、広い校庭でやるのに、週末のサッカー・クラブの練習まで中止にされたことをどううけとめているんだろうか?

 父さんは「なるほどしょうがない」という理由があるなら、日々の工夫をするけど、じつはあまり納得していない。朝、君たちが学校に行き、夕方学童や児童館から帰ってくるというながれは、働く大人の暮らしにとって大切だから、休校とかそういう大きな決めごとには、きちんとした理由がなければ困る。むしろ休みにするのは、大人が満員電車に乗って行く会社のほうだろうとモヤモヤしている。

 もう一つ父さんの強いモヤモヤは、多くの大人が「かんたんに休校と決めてしまったこと」だ。教育という、君たちの毎日の暮らしとともにある仕事では、遠い「国の政府」ではなくて、「近く」の役所(世田谷区とか、従兄弟の住む西宮市といった町の事務をするところ)の人たちが決めるルールなのに、総理大臣の「強いお願い」に、あわてて多くの人があっという間にしたがったことだ。ルールが守られていない。

 街ではコロナが入ってきてから、とても残念なことをやっている人たちもいる。

 検査をさせずに数をかくす。ウィルスのための来年の国の予算をゼロにする。ぜんぶを中国人のせいにする。ウィルスの専門の先生をバカにする。うつしたかもしれない人を悪く言う。バカなデマやうわさにのって、意味のないちりょうをして、ティッシュを買いしめる。「となりの人がマスクなしでセキをした」とパニックになって地下鉄を止めちゃう。

 はじめてのことだから、不安になることはわかる。父さんも少しだけ不安だ。おじいちゃんもおばあちゃんも90才に近いからだ。でも、そういう残念なことをしている人たちは、やっぱりどうかしていると思う。

 こういう父さんのモヤモヤや、残念なできごとには共通した原因がある。

 それは、たくさんの大人が「自分の頭で考えることをやめてしまった」ことだ。

 手洗いちゃんとやったから学校はインフル・ゼロなのに、わざわざ休みにして学童保育のせまいへやに入れば、逆にもっとうつりやすくなるんじゃないの?
石川県や滋賀県にある市のように、そこで暮す人たちが「休校にしません」って、自分で決めればいいんじゃないの?
 もちろん父さんの考えが完全に正しいかどうかは、わからない。でも、決められたことの理由があいまいなら「はい、そうですか」とはかんたんには言いづらい。

 少し不安な気持ちがあっても、人の言ったことに自動的にしたがわずに、友だちやまわりの人の生活のことをちょっとでも「自分の頭」で考えれば、
 ウィルス患者数をちゃんと調べて、ウィルスをやっつけるためのお金80倍くらい増やして韓国なみにして、中国って14億人もいるから、すごく低い比率でしかいない患者数だよねっておちついて、ウィルス学者の話を正しく聞いて、ティッシュは輸入なしに日本でぜんぶ作れることも思い出して、そんなことで電車を止めることで起こることは何だろうと、静かに気づける。

 「大人なのに自分で考えないの?」と君は思うかもしれない。残念ながら、自分の頭でものを考えることは、大人ですらさほどかんたんではない。君たちと大人のちがいは、ノコギリクワガタとミヤマクワガタのちがいくらいでしかない。

 だからぼくたちには、あまりよゆうがないときでも、いちど立ち止まって「ん?オレ(あたし)は本当に自分で考えてそう決めたのか?」と思いかえす習慣が必要だ。

 

 父さんは、そういうことができる人になるために勉強をするのだと思う。
「勉強してんだから、頭使ってんじゃん」と君は思うかもしれない。
そこは少しズレることがある。「勉強する」と「自分の頭で考える」は同じではないからだ。

 みんなは勉強を「頭を使うことだ」と決めてしまいがちだけど、じっさいは「勉強はしているけど考えていない」ときのほうが多い。勉強を「知識をふやす」ことだと決めると、「頭に入れっぱなし」となって、「入れたものをどう使うか?」を考えなくなる。
 だから脳みその「あのあたりの知識を出せ」と言われたら、「はい、あのあたりですね?!」と「そのまま」出してしたがう。それなら脳みそは、ただの引き出しだ。

 でも、自分の頭で考えるとは、「今、僕たちが解決する問題に、あの知識では役に立たないから、この知識を使います」と決めて、それを少しの勇気を持って「言える」人間になることだ。少々反対されても。

 この休みに、なにすればいいんだよとぼんやり思っている息子よ。

 「そう言いますけど、自分で考えたら、いろいろとモヤモヤが残ったので、自分でこっちを選びます」と言える人間になるために(すぐにはなれないが)、なにをすればいいんだろうか?

 父さんは、とりあえずそういうモヤモヤを言葉にして書いておいたらどうかと思う。

 僕たち以外にも、これまで「みんなはそう言うけど、なんだかモヤモヤする」と悩んだ人、今も悩んでいる人、そして今そう思って、そのモヤモヤを言葉にしている人たちがいる。

 一人で書いていると「オレってバカみてぇ」と弱気の虫が出てくるので、そういう「モヤモヤの仲間」を見つけるといい。
 だから「むかしモヤモヤすることを書き残した人の本」、「今のモヤモヤを書いている人の本」を読むと、その準備ができそうだ。

 そこには「答えは出てないけど、とりあえず、自分の頭で悩んでいる姿」がある。
 ちなみに、そういうモヤモヤが大昔に書かれていて、かつそれが今もモヤモヤしている人に読まれているよ。それを「古典」と呼ぶ。

 マンガ『ジャイアント・キリング』はめちゃめちゃおもろい。でも、一度ページを閉じて、父さんと本屋さんに行こう。

 そこにはモヤモヤした人の記録がものすごくたくさんあるよ。そして、どこかみんなちょっとマヌケで悲しい。モヤモヤしてるんだから当然だよ。
 でも、不思議なことにそういう記録(歴史って言ってもいい)を読むと、なぜだか自分の頭でものを考える助けになるんだよ。

 とりあえずは、リヒター『あのころはフリードリヒがいた』とか、鶴見俊輔(つるみしゅんすけ)『人が生まれる』なんかいいよ。父さんも40年ぶりくらいに読み返すわ。

 あ、外国人の悪口ばかり書いてある本は、読まなくていいよ。
 この世には絶対に許しちゃダメなことがあるってことを知らなければならない。

 

 それも自分の頭で考えることの助けになる。
 君なら必ずそれがわかるよ。

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