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流行と副産物

 何でもインフルエンザの流行が急速に収まっているそうで、とりあえず世間で行われている感染症対策は一定の成果を上げているようです。とかく学校などは集団感染の温床になりがちですが、その辺も閉鎖されれば不特定多数のルートを持つ感染症対策としては一定の効果が見込めるでしょうか。新種のウィルスによる死亡者は0人から数人へと前年比での増加が見込まれているところですが、感染症全般による死者数は例年より少なくなることが予想されます。

 思い起こせば10年余り前のこと、メキシコから新型のインフルエンザが広まり世間は結構なパニックに陥りました。私は毎年インフルエンザの予防接種を打っていますが、その年ばかりは早々にワクチンが枯渇し、予防接種を受けられなかったことを覚えています。ただ、その年は誰もが感染症予防に気を遣ったせいかインフルエンザの流行は例年に比べて穏やかで、むしろ安全なシーズンでもありました。

 感染症は個人の努力ではなく、社会全体で防ぐものでもあります。ワクチンで100%防げる類ならいざ知らず、そうでないならば「周りにどれだけ感染者がいるか」も重要になってくるわけです。ワクチン未接種者が多く、罹患者が普通に街を歩いているような社会では、個人がどれだけ防護に気を遣っても限界があります。しかし周囲の人も感染予防を意識していれば、自身がウィルスに触れる機会も相応に減ることでしょう。

 コロナウィルスの水際作戦は何もかもが後手に回っているイメージですが、コロナ対策の成果としてインフルエンザに代表される「その他の感染症」が激減するなら、結果としては有意義なのかも知れません。防ぐべきはコロナウィルスだけではない、コロナウィルス以上に死者を出しているウィルスは普通にあります。新手のウィルスを防げなくても、それ以上に従来型のウィルスを防いだなら、結果オーライです。

 そしてコロナ対策の副産物としてはもう一つ、テレワークや時差通勤などの導入が否応なしに後押しされていることでしょうか。この辺、今までは「旗を振るだけ」「看板に掲げるだけ」の企業が専らでしたが、関連会社や自社ビルで罹患者が発見される企業も相次いだことから、急遽「本当に」テレワークや時差通勤を始める会社が増えているわけです。まるで黒船が来たような勢いで。

 もっとも「実際に」テレワークを始めたことで浮かび上がってきた問題も多いのではないでしょうか。私の勤務先でもグループ会社にコロナウィルス感染者が出たという事情もあってテレワーク指令が飛んできたものの、部署によって取り組みには歴然とした差があります。そしてそれは業務内容(顧客対応など)によるもの以上に、「人」の違いによって差が出ていると言わざるを得ない状況です。

 要因の一つは、間接雇用の多さです。つまりは、派遣社員ですね。自社の直接雇用社員とは異なり、他社から派遣を受けている従業員ともなりますと、その就業形態を簡単に変えることはできなかったりします。このため派遣社員が実務の主力となっているような部署では、派遣契約通りに9時から出社する派遣社員と、その指揮命令のために出社する自社社員とで、テレワークとは無縁の日々を送っています。

 もう一つは、「こういう時こそ」とばかりに張り切って出社する社員が幅を利かせていたりすると、これまた残業よろしく「周りも皆そうしているから」と同調圧力が生まれ、定時に帰れない&テレワークなどもってのほか、みたいな機運が生まれるわけです。総じて残業がやる気の尺度として扱われ残業が昇進に繋がるような組織では、こういう時こそ出社することがアピールに繋がると、そう考える人が増えることでしょう。

 加えて管理職が「部下の自主性に期待する」ばかりですと、上記の傾向には拍車がかかります。結局のところ「常態」が出社で「非常」がテレワークとして位置づけられている限り、部下は「常態」を選びがちです。そこで管理職が部署の業務を調整し、しかるべくテレワークと出社のローテーションを組んでいくようであれば、多少は変わるかもしれません。しかし上司が「自主性に期待する」ばかりであったなら?

 部下が自らテレワークを申し出てくるのを待っているだけの管理職に率いられた部署では、必然的にテレワークなど誰もやらなくなります。上司が自らの責任で部下に命じれば問題は解決しそうなものですが、往々にしてヒラ社員側の「自主性」の不足を問いがちなのが我らの社会という印象ですね。長時間残業が横行するのも部下のタイムマネジメントの問題と捉えるような会社ならば、テレワークが進まないのも同じように考えられていることでしょう。

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