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コロナウイルスによりリモートワーク奨励で炙り出される「無能」と「解雇」

田端信太郎さんが、こんなことを書いています。

https://twitter.com/tabbata/status/1233897921172520960
[引用]

っていうか、「リモート勤務」「在宅勤務」って、ダメな奴はクビにしていいって解雇ルールとセットでないと機能するわけない。

片方だけやろうとするから、PCのインカメで仕事してるかAI認識して監視するとか意味不明なことになるw

--ここまで--
 この辺、パッと見すると単なる出羽守(でわのかみ;海外「では」と安易に日本と比較する馬鹿のこと)に呼応して田端さんがツイートした感じですが、実際にいまAI事業の界隈では大量のリモートワーク監視を目的として「こいつはちゃんと働いてるのか監視するシステム」をどう実装するかの議論が花盛りであります。

 逆に言うと、営業会社でも客先訪問してトークをするにあたり、毎朝決まった時間に出社して、客先での商談が終わった後直帰せずに会社に戻り、日報を書いて帰るというのがどれだけ業務上の無駄であり、社員の時間を奪ってすり減らし、結果として非効率な経営をしているのかということでもあります。「営業は組織でやるものなのだから統制しなければならない」という意見ももっともなのですが、報告書を書いて管理職が読めば売上が上がるというわけではないというのも真理なので、今回のようなコロナウイルス発生という環境の大きな変化に、企業組織がどう対応できるのかという「適者生存」の理(ことわり)を示しているようにも思います。

 職種によってはリモートワークが成立しない職種や業種も数多くあります。電力会社などインフラに関係する企業や、小売店など商業施設など、社員さんを現場に貼りつけなければ価値を生みだせない事業は特にそうです。電車の運転手をリモートワークにしますとかあり得ないわけで、そんなら自動運転でええやんけとなり、全部自動運転にしたら走る列車に飛び込んでしまう人対応や、足の不自由な人の乗降をアテンドするときも含めて円滑に運行できるよう駅員さんをもう少し増やせという議論も出てくることでしょう。

 リモートワークで社員さんの働きを監視するということは、明確に「この仕事をしなさい」という業務内容の明示がどうしても必要になってきます。一般的に、日本企業での採用は部門や職掌での採用にあたり、細かなジョブディスクリプションを決定して雇用契約を交わすということは少ないので、結果的に「おまえの配属された部門のボスの言う通り頑張って働いてください」という結論になりがちです。

 一方、私の関係先がいち早くリモートワークにしていきなり困難に直面したのは「自宅PC前に入るようなんだけど、何をしているんだか分からない」という管理職や事業長からの愚痴のような悩み相談チャットでした。知らねえよ。でもいままでオフィスで一定時間顔を合わせていたので何となく仕事内容を管理できているつもりでいたけれど、実際には四六時中その人の勤務内容を管理できていたわけではないので、必要に応じて報告させたり資料を出させたりすることで「仕事を管理していた風に思っていた」だけなのではないかと思うのです。

 そして、リモートワークが実際に導入されてみると、なにかあったらそっと聞くというオフィスしぐさができなくなる半面、顔を出して何かPCに向かい作業をしている人の、集中力を途切れさせないように業務状況を聞いたり内容を打診したり進捗を聞いたりする必要が出てくる。離席が可視化されると、今度は何故離席するのか報告させようとする。その総体として、管理業務がより細かくなる傾向になるのがリモートワークでの働き方で、それにまだ、リモートワークを導入した日本の企業の大多数が慣れていないということでもあります。

 おそらくは、そのうちリモートワークに移行したけど大失敗したのでやめましたというような失敗事例がたくさん報じられるようになると思います。半分ぐらいは「いままでそれだけオフィスに社員さんを縛り付けて管理していた手法ができなくなったので、そりゃ仕事もうまくいきませんよね」という企業の仕事の進め方の問題に過ぎないのですが、やはりここで炙り出されるのは「オフィスにいたから働いているように見えていた人たち」です。

 たぶん、頑張って働いているように見えていたけど成果が出ていない人っていると思うんですよね。

 要するに無能のことなんですが。田端さんは「ダメな奴はクビにしていいって解雇ルールとセットでないと機能するわけない」と喝破するのは、いままでそれだけ企業の中にはオフィスに無能が隠れていたということですよ。会社で顔を突き合わせて働いている、という属人性の部分がなくなって、リモートワークが始まってしまうと、その人の成果そのものが問われるようになる。そこに職掌が行うべき業務が明確化され、人工知能で働きぶりが監視されるっていう世界観になると、いままで良く分からないけど評価の高かった人が外れ値としてガンガン検出されるようになると思うんですよね。

 大きい組織ならなおさらで、小さい企業だといままで目が行き届いていたのでむしろリモートワークはより凄惨性を高めるツールになっていくと思います。環境が大きく変わったとき、柔軟に仕事の仕方を変えられるよう、どんな仕事をしているのか、何が成果か、どうその人を評価しているのかをきちんと整理できている会社ほど、うまくコロナウイルスを乗り越えて業務をまとめてやっていけるんだろうなあと思います。

 余談ながら、いち早くリモートワークを打ち出した某社、導入数日で業務が激しく滞って面倒が起きているという相談がありました。そんなもの、いきなり人工知能を導入してどうにかなるものではないと思うのですが、オフィスで果たしていた機能や、VPNのようなインフラに関する部分、あるいは子供が家にいると在宅で働くことなどできないという当たり前の事柄なども踏まえて、一定期間の移行期による仕事の質の低下があることぐらいは想定しておかないといけないと思うんですよね。

 コロナウイルスに便乗して、リモートワークを導入しましたと企業の先進性を謳いたい部分もあるとは思いますが、失敗事例を見ると「まあ、それはそうよな」という話のオンパレードでありました。

 また、本来なら在宅で済ませられる仕事を、でかいオフィスに机並べて社員さんを詰め込んで捌いていた業界各社、セキュリティと作業ツールさえどうにかなれば「みんな在宅でいいんじゃね」と気づき始めたところがあります。そうなると、大きなオフィスビルとか別に要らなくない? みたいなムーブメントでも起きるんじゃないかと戦々恐々です。なんてったって、会社としてもオフィスビルは無駄、社員さんにとっても長い通勤時間は無駄、これらの無駄が企業経営の販管費その他を上げ、利益を圧迫していたのだと気づくところも出るでしょう。

 もちろん、収益を稼ぎ出す部門が知的労働の塊だからといって、野放図にリモートワークしていて起きることは機密漏洩や人材流出だよという議論はどうしても出るとは思いますが、リモートワークに向く職種については今度おおいに知見が高まっていくことでしょう。

 コロナウイルスがいいことだとは全く思いませんが、社会環境が変わり企業の姿勢も変化せざるを得ないときに、きちんと環境に適応していく会社が生き残るというのは間違いないんじゃないかと思います。


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