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総理の『要請』に対する違和感



安倍首相は、意図的にか、無意識のうちにかはわからないが、新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐことを理由に、憲法、地方自治法の日本の法体系をすっ飛ばし、自民党の改憲草案にある緊急事態条項を適用してしまっているのではないだろうか。

総理は、27日、全国の小中高校、特別支援学校のすべてに、3月2日から春休みまでの一斉休校を『要請』した。
小中学校の大部分は市区町村、高校は都道府県や市などが設置している。
休校かどうかの措置は設置者が決めることになっている。
地方自治体の固有事務である。
それに対し、総理大臣が『要請』できるという概念は、学校等の問題に限らず、存在しない。
『要請』という言葉の持つ意味はわからないが、国と地方自治体の法的な関係性において根拠はない。

ただ、この問題で思い出したのが、自民党が現行の日本国憲法を改正するために、平成24年(2012年)4月に発表した「自民党改憲草案」の第9章に新設するとしている「緊急事態」条項だ。

ここには、外部からの武力攻撃、内乱等における社会秩序の混乱、地震等による大規模な自然災害その他の法律で定める緊急事態において、特に必要があると認めるときは、法律の定めるところにより、閣議にかけて、緊急事態の宣言を発することができるとある。

そのもと、「内閣総理大臣は財政上必要な支出その他の処分を行い、地方自治体の長に必要な指示をすることができる」(自民党改憲草案第99条1項)と書かれている。

もちろん、事後の国会の承認とか条件はつくし、『要請』と、従わなければならない「指示」とでは意味が違うのだが、総理の感覚的にはこれと同じ発想のうえに立って行われているような気がしてならない。

この『要請』を受けた地方自治体の側には、対応に違いも生じているようだが、松阪市の場合は、27日の夕方か夜に、県を通してその『要請』を知るやいなやただちに小中学校長、教職員組合関係者を招集、当夜のうちに一斉休校を内諾するというスピード感ある対応だったようだ。

総理の発想はいかにも安倍総理らしく、しかし、それは文部科学省や厚生労働省との調整もとったわけではなさそうで、改憲草案にもある閣議も無かったような『要請』であるが、地方自治体の側は「初めてで驚いた」「異例」と驚きながらも総理の『要請』はあたかも「指示」であるがごとくそれにしたがって着々と対応してしまうことに違和感を持った。

総理が突然に『要請』というかたちをとって法的根拠のない“権限”を振り回すよりも、厚生労働省と都道府県との協議をもとに、市町村に必要な情報を提供することで対応することは可能だったはずだ。

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