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ニューヨーク州のビニール袋禁止令は米国の環境保護法の手本となるか - 田村明子 (ジャーナリスト)

ニューヨーク州で、2020年3月1日から小売業者による単発使用のビニール袋の配布が禁止される。わかりやすく言うと、お店で食品や洋服などの買い物をしても品物を入れるビニール袋をくれなくなるということだ。


ビニール袋が禁止されるのを前に、ニューヨークのスーパーではエコバッグが無料配布された(筆者撮影)

過剰包装だとよく言われる日本の外に一歩でると、包装は実に簡素なものである。アメリカでは基本的に、デパートなどで買い物をしてもビニール製のショッピングバッグにポンと放り込まれる。だが3月からニューヨークでは、そのビニール袋ももらえなくなる。

「Bag Waste Reduction Law/袋の廃棄物削減法」と呼ばれるこの新しい法律の対象になるのは、州の消費税を徴収する許可証を持っている小売業者全般だ。

消費者たちは今後、自分のエコバッグ等を持参するか、5セント出して紙製のショッピングバッグを買わなくてはならない。ドラッグストアが処方箋の薬を出す場合、また野菜などを小分けにする小型のビニール袋などいくつかの例外が設けられているが、基本的にビニールのショッピングバッグの配布は今後ニューヨーク州内で禁止となる。

小売業者が違反した場合は、一度目は警告を受けるだけだが、二度目の違反からは罰金250ドルが課されるという厳しさだ。

アメリカの中では2016年に施行したカリフォルニア州、オアフ島など一部で施行されてきたハワイに続いてニューヨーク州が3番目になる。この新法の背景は、どのようなものなのか。

環境汚染の原因を削減する

2017年3月にニューヨーク州知事、アンドリュー・クオモがニューヨーク州環境保護庁のバジル・セゴスをリーダーとした「New York Plastic Bag Task Force/ニューヨーク州ビニール袋対応委員会」を設立した。この委員会のメンバーたちが、一度だけ使用され廃棄処分となるビニール袋の川や湖など自然環境に与える悪影響について研究報告を何度か重ねた末に、今回のビニール袋の配布禁止令が施行されることになったのだ。

ニューヨークに限ったことではないが、治安のあまりよくない区域に行くと、街路樹の枝には多数のビニール袋がからまり、歩道にはビニールゴミがからっ風に舞っている。これらのビニール袋がいずれは川に、そして海にと流れていって、生態系に深刻なダメージを与えているのだ。死亡したクジラやウミガメなど海洋生物の胃袋から、びっしりとつまったビニール袋が取り出されるという悲惨な映像が世界各地で報告されている。またビニール袋を製造する過程で生じる環境汚染も、長い間指摘されていた。

現代社会では、ビニールやプラスチック製品の使用を全てやめるというのは不可能だ。だが手提げ代わりにたった一度だけ使われるビニール袋なら、各自のエコバッグで十分に代用可能だ。実際、筆者が子供のころは誰もが自分の買い物かごを持参して八百屋やスーパーに行ったものである。

まずはできるところから、環境保護法を改善していこうという試みだ。

トランプ政権下で逆行してきた環境保護法

改めて説明する間でもないことだが、ドナルド・トランプ大統領が所属する共和党は、経済の発展とそれを支える大企業の優遇政策を最優先事項にしてきた。その一方で民主党は、「不都合な真実」のドキュメンタリー映画を製作したアル・ゴア元副大統領が良い例であるように、環境保護と自然との共存を理想に掲げてきた。

少々乱暴にわかりやすく言うなら、強くて豊かでこそアメリカ、と目先の利益を常に優先させる共和党。ある程度富を分配させ、長期的なSustainability、要するに使い捨てではない共存社会を目指すのが民主党である。

もちろん込み入った政治の世界には、白黒ではっきり割り切れないグレイの部分はたくさんある。「オバマ政権時代にこんな環境破壊が起きている」というような、細かいご指摘は勘弁していただきたい。どこの政権でも、常に100%理想の政治を実施できるわけではない。

だが現在のトランプ大統領は、「地球温暖化」を真っ向から否定するアンチ環境保護派を自ら公言しており、パリ協定から脱退するなど取り組みは極端だ。彼が大統領に就任してから、水質、そして大気汚染の基準を取り締まる環境保護法が次々と解体され、緩められてきた。ニューヨークタイムズ紙によると、トランプ大統領がキャンセルさせてきた環境保護法は95件にも及ぶという。

トランプ政権に立ち向かうリベラル州

さてご想像通り、今回のニューヨーク州のビニール袋配布禁止令を出したクオモ州知事は、民主党だ。弁護士の資格を持ち、元ニューヨーク州司法長官でもある彼は、クリントン政権下でアメリカ合衆国住宅都市開発長官を務めたこともある筋金入りの民主党なのである。

このクオモ知事のリーダーシップに加え、2018年11月のニューヨーク州議会の上院選挙で民主党が8議席を取り戻し、この法案が無事に可決されたのだ。(現在は63席中40席が民主党が占めている)

良く言われるようにアメリカ合衆国は実際には合州国であり、それぞれの州政府が独立国に近いほどの自治権を有している。日本では県ごとに法律が違うなどあり得ないが、アメリカでは飲酒年齢や運転免許獲得の年齢など、州法で定められていることは少なくない。

ニューヨーク州では、昨年12月に不法滞在中の移民でも合法的に運転免許獲得ができるという、不法移民を狙い撃ちにするトランプ政権の神経を逆なでするような法案を成立させたばかり。(もっとも4年前にこの法案を可決したコネチカット州では、それによって無免許のひき逃げ事件が減っているという統計が出ている)

3月からいよいよ施行されるニューヨーク州のビニール袋禁止法は、トランプ政権のアンチ環境保護ポリシーにささやかながらも一石を投じることになるだろう。カリフォルニアとニューヨークという二大経済大州がこの法を取り入れたことが、アメリカの残りの州にどう影響を与えるのかが注目される。

ビニール全廃へは課題山積み

もっとも、現実的な課題はまだまだ山積みだ。

筆者はスーパーでもらうビニール袋をゴミ袋として再利用してきたので、今後はゴミ専用のビニール袋は購入せざるを得ないことになる。結局、ビニール袋の使用を全否定はできない。だが再利用できないタイプの小さなビニール袋など、ゴミを減らす法案には大賛成だ。

もちろん長期的に考えれば、将来ビニールやプラスチックに取って代わる、自然に還元される実用的な材料の開発が、現代の全人類の最大の課題である。現在出回っているBiodegradable(生物分解性)のビニール袋は使用中の耐久性などにおいて、まだまだ問題が多い。使用中は丈夫で、時間がたてば無害に自然に還元されるという虫の良い条件を満たす材質が、今切実に求められている。

それまではニューヨークに来る際には、男性も女性も必ずエコバッグを忘れずに持参していただきたい。

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