- 2012年07月27日 11:55
iOS6でAppleとGoogleの核戦争が勃発?!
1/2iOS6のリリースが大きな話題となっているAppleですが、Appleファンやサーチ業界を超えたレベルでiOS6はAppleのGoogleへの徹底抗戦宣言ではないか、という話がIT業界全体で盛り上がっているようです。今回はそんな噂の内幕をサーチエンジンランドのダニー・サリバンが詳細解説。 - SEO Japan
画像を見る
アップルが、リリース間近のiOS 6で、ついにグーグルに「核戦争」をしかけると言う噂が絶えない。今のところグーグル対アップルの核戦争は起きていない。事実、起こり得ない。それには理由がある。ただし、その一方で、アップルは遥かに規模の小さい、賢明な封じ込め戦略を着々と進めている。
グーグルとの核戦争
核戦争の例えは、スティーブ・ジョブズ氏の自伝(ウォルター・アイザックソン著)から引用した。ジョブズ氏はグーグルのアンドロイドOSに怒り心頭であり、アップルのアイデアを盗んだと2010年の初めにアイザックソン氏に語っていたほどだ:
私はアンドロイドを破壊する。なぜなら、アンドロイドはオリジナルではないからだ。この件に関しては、核戦争も辞さない。
ジョブズ氏はアンドロイドに対して核戦争を仕掛けるつもりだったかもしれないが、グーグルの検索製品に核戦争を挑むと言う意味ではなかった。昨年も説明したように、ジョブズ氏は、この発言を行った直後に、デフォルトの検索プロバイダーとして、グーグルとの検索契約を延長していた。マップに関する契約も延長していたのだ。
アップルとグーグルの契約に関しては比較的情報が少ない(消費者にはこの契約の中身を知る権利がある点を指摘した連邦取引委員会への書簡にも目を通しておいてもらいたい)。しかし、怒りが頂点に達していた時であっても、ジョブズ氏はグーグルに噛みつき、契約を反故にする行為を回避していた。
アップルがグーグルを見限ることが出来ない理由
消費者の選択肢を簡単には切り捨てることが出来なかったのだ。これはジョブズ氏がグーグルを捨てることが出来なかった理由の一つだと思える。
アップルユーザーがアップル製品をどれだけ愛していても、グーグルやグーグル検索等のグーグル製品を嫌っているわけではない。消費者による選択において、私達の多くは過激な変化を望んでいるわけではない。アップルとグーグルの“いずれかを選ぶ”のではなく、両社の最高の製品を選ぶことを望む人達が圧倒的に多い。アンドロイドを嫌う人達であってもグーグル検索を利用している。
なぜなら、グーグル検索が優れているためだ。世界中の多くの国々で最も多きなシェアを獲得しているのもグーグルであり、米国も例外ではない(中国、ロシア、韓国、そして、日本は例外)。グーグルは、消費者が調査を行う際に一貫して選択されている。ピューインターネットが先日実施した調査でもこの点は証明されている。
ジョブズ氏自身、グーグル検索を確保していたのだ。それでは、この核戦争の言及は何だったんだろうか?この発言の直後に次のようにジョブズ氏は話していた:
グーグルは罪の意識があるため、怯えているはずだ。検索を除くグーグルの製品 – アンドロイドにしかり、グーグルドキュメントにしかり – は最低だ。
グーグル製品を否定するジョブズ氏がグーグル検索を例外視した部分を強調した。
検索の選択肢をなぜ変えたのか?
アップルがグーグルの検索エンンジンをデフォルトの検索エンジンから外し、米国では唯一代わりを務めることが可能なマイクロソフトのビングを採用したと仮定しよう。すると何が起きるだろうか?まず、事実上、ライバルから別のライバルにすり替えただけである。そして、デバイスのユーザーを怒らせる重大なリスクを抱えることになるだろう。
2009年にベライゾンがマイクロソフトと契約を結び、デフォルトの検索エンジンに据えた件を思い出してもらいたい(その後、アンドロイドが適用を除外されていたことが判明していた)。ベライゾンがブラックベリーに対して変更を加え始めると、ユーザーによる激しい抗議に直面したのだ。
アップルがiOSのサファリのデフォルトの検索エンジンをビングに切り換えた場合、グーグルが消えたと勘違いしたユーザー達がパニックに陥る可能性が高い。デフォルトを変更することは可能である。しかし、競合を理由に挙げ、最高の検索エンジンをデフォルトとして選ばなかった訳を説明しなければならない気まずい状況にアップルは身を置かれることになるだろう。ユーザーのことを第一に考えた素晴らしい製品を世に出す企業として評価されているなら、このような状況に身を置かれるのは避けたいところだ。
だからと言って、グーグルが最高の検索エンジンだと言い切れるわけではない。このような適切度を評価する独自の調査が存在しない。グーグルは、アップルが戦わなければいけないライバル(そしてビングはこのライバルに苦戦している)であると言うイメージが消費者に浸透している。ビングをデフォルトに据えると、アップルが好むとは思えない問題が発生するだろう。さらに、検索の品質が改善されない場合は、アップルに批判の矛先が向けられる可能性もあるのだ。
核戦争ではなく、封じ込めを
冷戦の引用を引きずり出すなら、米国もソ連も核に手を出さなかった事実を強調しておきたい。お互いに脅威を認識していたため、両国は冷静さを維持していたが、アップルとグーグルの戦いで冷戦を引用するなら、“封じ込め”と言う用語の方が適切だと思える。
封じ込めを行うことで、米国は世界中の国々に社会主義が広がる事態を回避しようと試みたのであった。iOSにおけるアップルの戦略は、とりわけ消費者にメリットがある点を明確に示しつつ、妥当だと思えるポイントまでグーグル主義を抑え込むことである。
画像を見る
iPhone 4Sにシリが導入されたとき、私はアップルが“ベータ製品”を消費者に提供したと感じた(今もなおベータのままである)が、私の知る限り、このような行為は数回、もしくはシリで初めてである。しかし、アップル自身のデバイスでグーグルの封じ込めを始めることが出来たため、賢明な判断であったと言える。シリは、検索がどこに向かうのかを決める効果があり、必ずしもグーグルに向かうわけではなくなった(ちなみにグーグルとアップルの契約では、グーグルが音声検索のデフォルトになる点が予測されているわけでも、必要とされているわけでもなく、あくまでもサファリにおいてのみである)。
この封じ込め政策は、恐らく、一般のユーザーが理解する範疇を超えていると思われる。彼らにとっては、シリはiPhoneに頼みごとをすることが可能な優れたツールでしかない。アップルがグーグルを捨てた点を消費者に気づかれることなく、グーグルを捨てるための巧妙な戦略だったのだ。
シリ検索エンジン
アップルはアップル独自の検索エンジンを構築する可能性がある。長年、大勢の人々がこの可能性について指摘してきた。しかし、ある程度の規模で検索を実施する取り組みがいかに難しいかを見てきた経験から、個人的にはアップルが検索エンジンを作るとは考えていない。検索はアップルの中心的な強みではなく、また、グーグルとマイクロソフトの両社と激しい競争に直面することは避けられないためだ。
デバイスまたはOSを持っていれば、検索で優位に立てると考えているなら、その考えを改めるべきである。このアドバンテージを持つマイクロソフトは、1998年にMSN検索を立ち上げて以来、検索業界でトップに立つべく努力してきた。デバイス、ブラウザ、そして、OSと抱き合わせで提供しているにも関わらず、そして、長い年月をかけて取り組みを続けているにも関わらず、いまだにユーザーはグーグルを求めている。さらに、3年前には新しいテクノロジーを基にゼロから始め、ビングブランドを構築したにも関わらず、今でもユーザーはグーグルを選んでいる。
アップルは、今までの取り組みを継続するべきである。シリを成長させ、その他の検索パートナーと手を組み、グーグルを引き続き封じ込めることで、グーグルがいなくても問題視されない検索の分野で勝利を収めることが出来るのだ。
最終的に、アップルはシリのウェブベース版のアップル検索エンジンを立ち上げるかもしれない。シリと名付け、Siri.comで提供することも出来るだろう。選択したプロバイダーから人気の高い検索に対する答えを引き出し、拡大を続けていけば、パートナーがいない際に利用される“予備”の検索エンジンを巡る状況は変わるだろう。グーグルは水面下でビングに置き換えられていくのだ。
これが、アップルがグーグルに勝負を挑む方法である。爆弾を落とすことなく、戦争を起こしていることを消費者に気づかれることもない。
グーグルにどれだけ大きなダメージを与えるのか
グーグルは、モバイルデバイスへの参入を中止し、開戦を回避した方がよかったのだろうか? その可能性はある。ジョン・グリューバー氏等はそう考えている。私は、独自のブラウザ、独自のOS、独自のモバイルデバイスの開発に走るグーグルを見て、検索のみに焦点を絞っていたら、多くの敵を作ることなく、より大きな成功を勝ち得ていたのかどうか考えることがある。
しかし、グーグルは被害妄想を持った企業である。マイクロソフトがサービスをブロックするのではないかと恐れブラウザを作り、モバイルデバイスにおいても取り残されることを恐れて参入していた。グーグルが攻撃的な目的を持っていた点を否定しているわけではない。しかし、モバイルはさらに検索との関係を強化しており、アップルを敵に回すリスクを負ってでも独自のモバイルプラットフォームを作る戦略は、妥当だと思える。
するべきだった、することができた、するところだったと言う議論、そして、誰が最初にモバイルを始めたのかと言う議論を永遠に繰り返すことも出来る。しかし、アップルとグーグルがどのような経緯で現在の状況を迎えていたとしても、現実に激しい競争が行われているのだ。それでは、グーグルにとって封じ込めは何を意味するのだろうか?簡単に言うと、グーグルにとっては、あまり多くの被害を受けないと考えられる。
何が封じ込められるかに左右される
クエリを音声で入力する機能は素晴らしく、重要な意味を持つと思え、また、拡大を続けている。アンドロイドでは、音声検索はiPhoneよりも以前から提供されており、グーグルのエリック・シュミット会長は、2010年の年末に、クエリの25%は音声で入力されていると明かしていた。しかし、こういったクエリからグーグルは利益を得ているのではないだろうか?
収益に関して言えば、例えばズーイー・デスチャネルがグーグルではなくシリに雨が降っているかを尋ねたとしても、グーグルはほとんど影響を受けない。ズーイー・デスチャネルはグーグルの広告をクリックしていたわけではないのだ。
ユーザー達は、容易に失敗しないものの、ハッキリしていない対象の検索をシリで行っている。ウルフラムアルファはシリのクエリの約25%を担当していることが明らかになっているが、シリの検索が占める確率は不明である。たとえ大きな数字であったとしても、グーグルが収益源としているわけではない、参照情報が大半を占めるはずである。
グーグルに関するこのデータは判明しており、音声検索の13%から33%がローカルに関連している。シリにも同じ状況が当てはまるとすると、グーグルはこの価値の高い検索を失いつつあると言えるだろう。しかし、シリが現在ローカル検索を送る手法においては、イェルプも、アップルも、そして、グーグルも大した利益を上げているとは思えない。この手の検索は、電話番号や住所を見せるだけで終わるためだ。



