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日本の"夫婦同姓"制度が、現代女性に強いている超差別的デメリット3つ

国会でのヤジ問題から大きな注目を集めるようになった選択的夫婦別姓の制度。議論が繰り返されながらなかなか進まなかった過去があります。なぜこの制度が必要なのか、改めて考えたいと思います。

街の女性※写真はイメージです(写真=iStock.com/recep‐bg)

夫婦別姓が認められないのは日本だけ

「女性が結婚したら夫の姓を名乗るのは当たり前」

こんな「常識」が刷り込まれている人も多いのではないでしょうか。実は夫婦同姓を法律で義務付けているのは、先進諸国のなかでも日本ただ一国なのです。私たち「選択的夫婦別姓・全国陳情アクション」はTwitterで集まったメンバーが、全国の地方議会に働きかけて、国会に意見書を送ることで選択的夫婦別姓を実現しようとしている組織です。なぜ選択的夫婦別姓が望ましいのか、お話しさせてください。

旧姓の使用を認めている企業が半数以下

結婚している女性には、仕事のときは旧姓を名乗り、プライベートでは戸籍上の姓を名乗る、いわゆる「ダブルネーム」を用いている人も多いと思います。なぜわざわざそんなことをするかといえば、新しい姓になると、「この人、誰?」ということになり、いままで信用、実績、資産を積んできた名前が消えてしまうからにほかなりません。

通称の使用が認められているので改姓による不利益は緩和されているという意見もありますが、政府の調べでは旧姓使用を認める企業は全体の半数以下。人事や経理などバックオフィスの人たちの事務的負担が増えるという理由からです。

企業での旧姓使用の状況

立場によってダブルネームの使用が認められないこともあります。読者の方の中には役員や会社を経営している方もいると思いますが、役員登記、特許出願などは戸籍上の姓で行われます。それまで積み上げてきたキャリアが消えてしまうと感じる方も多いでしょう。これは「社会的な死」を意味します。

また親から法人を受け継いだ女性は、自分の姓を失うわけにはいかないので、結婚をあきらめたり事実婚を選択したりしているケースも多いという事実があります。

離婚・再婚……女性だけが煩わしい手続きを強制される

私自身は初婚・再婚で2回改姓しています。井田というのは、実は元夫の姓です。子育てや仕事に影響がないよう、離婚後も婚氏続称(結婚時の姓を継続して名乗る手続き)して、「井田」で20年以上社会生活を続けてきました。戸籍上では再婚して別の姓になっています。

再婚にあたり事実婚ではなく法律婚を選択したのは、いまの夫が腫瘍摘出手術を受けることになったのがきっかけでした。病院から「“奥様”でない方には手術合意書に署名していただけない。ご家族の方を呼んでください」と言われたことから、もし彼に何かあったときのためにも、やはり法律婚をしておくべきだと判断しました。

私はそのときすでに子供が二人いて、彼らは私の離婚、再婚にあたって改姓を望みませんでした。でも保護者名は変わる。すると保険や学校関係、すべての習い事の費用の引き落としまで名義変更が必要だったので、おそらく100以上の手続きをしたと思います。その煩雑さは想像を絶するものでした。

たとえば仕事で海外に行くときは、今の戸籍姓でパスポートを取らざるを得ない。しかしパスポートとクレジットカードが同じ姓でないと、ホテルでカードを出したときに「これは誰のカード?」となる。それならカードの姓を変えようとしたところ、当時、私の使っていたカードは名前だけを変えるということができず、「カード番号も変わります」と言われてしまいました。ということは、そのカードで引き落としていた電気・ガス・水道など光熱費や、銀行口座、証券口座など、生活のすべてを変える必要がある。働きながらこのような煩雑な手続きをするのは大きな負担でした。対して男性は結婚・離婚・再婚をしても、そういう手続きがほぼ必要ない。これは明らかに女性だけに負担を強いる不平等な制度だと言わざるを得ません。

結婚は相手の「家」の戸籍に入ることではない

「結婚したら、女性は男性の家に入るので、男性の姓を名乗る」

このように思っている人も多いと思いますが、これは大きな誤解です。なぜこのような誤解が生じるかといえば、明治31年にできた家制度という法律の名残りがまだ人々の意識に残っているから。しかしこの制度はあまりにも戸主の権限が強く、差別的だったため49年間しか存続せず、73年も前に廃止されています。

いまの法律では「結婚した男女は夫の姓か、もしくは妻の姓のどちらかに統一しなくてはならない」ということを定めているだけなので、本当は夫が妻の姓を名乗ってもまったく問題はありません。しかし実際は女性が改姓するケースが96%を占めます。そしてわずか4%の妻の姓を名乗る男性は、「我の強い妻の尻に敷かれている」とか、「実家の財産目当てなのか」とか「婿養子なのか」といような偏見にさらされてしまいます。

実は、「婿養子」という制度も、さきほどの家制度の廃止とともになくなっています。「サザエさん」のマスオさんは、よく婿養子の代表のように言われますが、実際は磯野ではなくフグ田というマスオさんの氏でサザエと結婚している。妻の両親と同居しているだけなのです。

さらにいえば、よく芸能人などが結婚すると「電撃入籍」などと言いますが、この「入籍」という言葉の使われ方も間違いです。養子縁組などの際、すでにある戸籍のなかに入ることを「入籍」といいますが、お互い初婚であれば新しく2人の戸籍をつくるだけなので、結婚イコール入籍というのは誤りなのです。

あるいはちかごろ妻のことを「嫁」というのが流行っていますが、嫁とは家制度の時代に親から見た息子の妻のことなので、「妻」という意味で使うのは誤用です。

女性の改姓は古い価値観を温存する可能性も

繰り返しますが、結婚することは相手の家に「嫁ぐ」とか相手の家族の「戸籍に入る」というものではありません。にもかかわらず家制度の名残は私たちの意識のなかに実に根深く残っています。その一つが、女性が結婚と同時に望まなくても改姓を迫られる社会的圧力であるように思えてなりません。

それでは、この現状を変えるにはどうすればいいか。その答えの一つが、冒頭で触れた「選択的夫婦別姓」制度の導入です。これは結婚した男女が自分の姓をどうするか、次の三つの選択肢のなかから選べるようにするというもの。すなわち、(1)二人とも夫の姓を名乗る、(2)二人とも妻の姓を名乗る、(3)夫も妻も自分の結婚前の姓を名乗り続ける。

この選択的夫婦別姓制度を実現させようという動きは過去に何度もあったのですが、一部議員の強硬な反対によって実現には至っていません。次回は、その理由について詳しく説明したいと思います。

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井田 奈穂(いだ・なほ)

「選択的夫婦別姓・全国陳情アクション」事務局長

本業はIT企業の会社員。Twitterでつながった仲間と、地元議会に陳情書を提出したことをきっかけに2018年11月、団体を設立。約1年で37件の意見書を地方議会から国会に送り、国会議員への直接陳情も続けている。クラウドファンディング「#自分の名前で生きる自由」実施中。

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(「選択的夫婦別姓・全国陳情アクション」事務局長 井田 奈穂 構成=長山清子 写真=iStock.com)

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