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エンタメ狂がモノ申す-ポケモンは誰のモノ?-ポケモンマーケティングを考える- - 廣瀨 涼

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■要旨

2月27日は「ポケモンの日」である。ポケモンシリーズ最初のゲームソフト『ポケットモンスター 赤・緑』が発売されたのが1996年2月27日(火)であったことから、その始まりを記念して日本記念日協会は2月27日を「Pokémon Day」と認定している。ポケモンといえば、ポケモンと呼ばれる不思議な生き物が生息する世界において、プレイヤーとポケモンとの冒険を描くロールプレイングゲーム (RPG) のことである。ポケモン関連ゲームソフトシリーズの累計出荷数は、2019年9月末時点で全世界3億4,600万本以上に達している。また、1996年のソフト発売以来、ゲームを含めた関連市場の全世界累計販売高は、2017年3月末現在で6兆円以上にもなるなど、世界的に人気のあるコンテンツといえるだろう。

■目次

1――2月27日は「ポケモンの日」
2――三世代にわたって愛されるポケモン
3――かつて子どもだった大人たち‐ポケモンマーケティングにおけるウィンバック戦略‐
4――ポケモン市場の変革
5――ポケモン市場の3つのセグメントとポケモンセンターの役割
6――2人の主人公
7――ポケモンマーケティング

1――2月27日は「ポケモンの日」

2月27日は「ポケモンの日」である。ポケモンシリーズ最初のゲームソフト『ポケットモンスター 赤・緑』が発売されたのが1996年2月27日(火)であったことから、その始まりを記念して日本記念日協会は2月27日を「Pokémon Day」と認定している1。ポケモンといえば、ポケモンと呼ばれる不思議な生き物が生息する世界において、プレイヤーとポケモンとの冒険を描くロールプレイングゲーム (RPG) のことである。ポケモン関連ゲームソフトシリーズの累計出荷数は、2019年9月末時点で全世界3億4,600万本以上に達している 2。また、1996年のソフト発売以来、ゲームを含めた関連市場の全世界累計販売高は、2017年3月末現在で6兆円以上3にもなるなど、世界的に人気のあるコンテンツといえるだろう。

1 ポケモン公式サイトより https://www.pokemon.co.jp/info/2020/01/200131_cm01.html(2020/02/12閲覧)
2 株式会社ポケモン公式サイトよりhttps://www.pokemon.co.jp/corporate/services/ (2020/02/12閲覧)
3 2017年夏テレビ東京ステークホルダー通信「世界と世代をつないでいくアニメ「ポケモン」の魅力」https://www.txhd.co.jp/ir/library/business/pdf/txhd/07_02.pdf?1709(2020/02/12閲覧)

2――三世代にわたって愛されるポケモン

初代ポケモンが発売されてからもうすぐ25年が経つ。ポケモンが発売された当時子どもだったファンも大人になり、ポケモンから離れていったものもいる。しかし、彼らの子どもがポケモンファンになり、ポケモンというコンテンツと再び出会うことで、子どもと一緒にプレイしたり、一緒に消費はしなくても、ポケモンに触れる機会が再び生まれた父母世代も多いのではないだろうか。また、父母世代が子どもだった頃に一緒にポケモンを消費していた祖父母世代が今度は孫とのコミュニケーションにポケモンを使うなど、ポケモンは三世代にわたって消費されるコンテンツになった(図1)。


しかし、ポケモンはその歴史の長さから発売されているシリーズも多種多様で、親世代はよく知っていても、子ども世代が知らないポケモンも存在するなどジェネレーションギャップが存在する。この世代間のギャップを埋め、三世代のポケモンファンを迎えてくれるのがポケモンセンターである。

「ポケモンセンター」とは、ポケモン関連商品を販売する専門店で、株式会社ポケモンが経営する、唯一の直営店でもある。ポケモンのキャラクター戦略の拠点として多角的に展開しており、欲しいポケモングッズが必ず手に入る店舗として、どの世代のポケモンファンも取りこぼさないような仕組みができている。ポケモンセンターは、ゲームやアニメにも同名の施設が登場していたことから、ポケモンファンにとって「聖地」として位置づけられており、ポケモンカルチャーを集約する受け皿としての機能を持っていた。

そのため休みの日にポケモンセンターに行くと、親子で「どのポケモンが好きか」といった談義に花を咲かせているのを目にすることができる。現役のポケモンファンである子ども世代にとってはゲーム内に登場する施設に実際に入ることができるという感動を提供する一方で、父母世代には昔自分が一緒に冒険したポケモンが出迎えてくれるノスタルジア(なつかしさ)を誘発する機能を持っているのである。

ポケモンセンターは、すべてのポケモンにスポットを当てることで商品ラインを広げ、幅広いニーズに応えるのみならず、三世代がコミュニケーションをとることができる場の提供を可能にしているのである。

3――かつて子どもだった大人たち‐ポケモンマーケティングにおけるウィンバック戦略‐

ポケモンセンターが過去のポケモンファンとの接点を提供することで、また過去シリーズに登場したポケモンが今でも登場していることで、ポケモンは潜在的に過去にポケモンファンだった層をウィンバックさせるための市場環境を整えてきた。ウィンバックとは、一度離反してしまった顧客をまた呼び戻して 購入してもらう事で、顧客カムバックとも言う。

また近年では、発売当時は子ども向けとされてきたキャラクターも当時の子どもが大人になったことで、彼らをターゲットとした大人向けのポケモングッズが販売されるなど、子ども向けというイメージからリブランディング(Re-Branding)されてきている。

このように新シリーズが継続して発売される中でも、過去のシリーズのファンを呼び戻すために、ポケモンはノスタルジアマーケティングを積極的に行ってきた。特にポケモンが20周年を迎えた2016年9月には、YouTubeで『ポケモンジェネレーションズ』と呼ばれるTVアニメ版とは異なるゲームのシナリオに忠実なオリジナルアニメシリーズを配信した 。

この配信では、当時発売されていたポケモン第6世代に当たる『ポケットモンスターX・Y』までのすべてのシリーズのシナリオからエピソードが作られており、過去にポケモンシリーズを一度でもプレイしたことがある消費者に懐かしさを喚起させる作品となっていた。

また劇場版ポケットモンスターにおいても、2017年からはゲームの世界観に重点を置くよりも、過去にポケモンファンであった消費者を再度取り込むことに軸足を移しており、2017年公開の『劇場版ポケットモンスター キミにきめた!』は、1997年に放送されたテレビアニメ第1話のストーリーに基づくスピンオフとして制作された。

2019年に公開された『ミュウツーの逆襲 EVOLUTION』も1998年に公開された劇場版第1作『劇場版ポケットモンスター ミュウツーの逆襲』のリメイク作品であり、かつて子どもだった大人たちに対してアプローチされている。

4――ポケモン市場の変革

もともとポケモンはゲームソフトであり、そこからグッズ化、アニメ化、映画化とその市場を拡大してきた背景があるため、ポケモンというマーケットの中心には常にゲームソフトが存在していた。そのため、消費者が初めてポケモンと接点を持つ場所として想定されていたのは「ゲーム」であった。

言い換えればアニメやグッズや映画は、ゲームを盛り上げるための付随したマーケットであり、シリーズの舞台とそれぞれをリンクさせる必要があったのだ。しかし、この従来の消費者のロールモデルはPokémon GO(以下ポケモンGO)の登場で大きく変化することとなる。

ポケモンGOとはスマートフォン向け位置情報ゲームアプリで、スマートフォンのGPS機能を使用しながら移動することでポケモンの捕獲・育成・交換・バトルをすることを目的としている。世界中にユーザーを持つ同アプリは2019年8月に10億ダウンロードを突破しており、ゲームソフトの累計販売数である3億4,600万本を大きく上回る。

このことは、初めてポケモンと触れる機会がゲームではなく、ポケモンGOがきっかけとなった消費者が大量に生まれたことを意味する。例えばインターネット行動分析・ヴァリューズの「ポケモンGOの利用者調査」4から2017年6月の年代別利用者(10代以下は除く)の割合を見ると、全体の25%が50代以上であった。

また、50代以上の定着率が最も高かったなど、従来ポケモンのメインターゲットとされてきた幼児~20代という層から大きく離れた層から支持されている。この層では、健康増進やポケモンGOをきっかけとした孫とのコミュニケーションが目的となっているようである。このようにポケモンGOというアプリはポケモンのファン層の構造を大きく変化させたと言えるだろう。


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