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【読書感想】世界の刑務所を訪ねて

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世界の刑務所を訪ねて: 犯罪のない社会づくり (小学館新書 た 27-1)

世界の刑務所を訪ねて: 犯罪のない社会づくり (小学館新書 た 27-1)

  • 作者:田中 和徳,渡辺 博道,秋葉 賢也
  • 出版社/メーカー: 小学館
  • 発売日: 2020/01/30
  • メディア: 新書

Kindle版もあります。

世界の刑務所を訪ねて(小学館新書)

世界の刑務所を訪ねて(小学館新書)

  • 作者:田中和徳,渡辺博道,秋葉賢也
  • 出版社/メーカー: 小学館
  • 発売日: 2020/01/30
  • メディア: Kindle版

内容(「BOOK」データベースより)

世界の刑務所は、日本の刑務所と大きく違っていた!アメリカ、ジャマイカ、フィンランド、バルト三国、イタリア、オーストラリアなど世界各地の刑務所の実態と、再犯防止策をレポート。さらに、日本の再犯防止のための取り組みとして、官と民の協力で運営され、職業訓練などに力を入れている“新しい刑務所(PFI刑務所)”や、犯罪をした者の自立更生を支える保護司の活動と更生保護施設の実情を紹介。こうした状況を踏まえ、日本を犯罪のない安全・安心な社会にするために何が必要なのかを提言する。

 刑務所、ねえ……

 犯罪者の処遇を改善することにお金を使うくらいなら、まっとうに生きている人たちのための使い道を探したほうが良いんじゃないの?とか、つい言いたくなってしまうのです。

 でも、社会の安定とか再犯の防止、犯罪者を国家で養うためにかかるコストなどを考えると、刑務所というのは「とにかく犯罪者を閉じ込めて懲らしめ、反省させればいい」というわけではなさそうなのです。

 今の刑務所で何年、何十年もの刑を受けていても、出所後の再犯者の割合は、かなり多くなっています。

 再犯者による犯罪が多いのは、いまに始まったことではありません。1948年から2006年までに裁判で有罪が確定した犯罪者100万人を調査したところ、全犯罪者の3割を占める再犯者が、なんと全犯罪のおよそ6割を実行していることがわかりました。犯罪の大半は、一度は刑務所に入ったことのある人たちが起こしているのです。したがって、もし刑務所を出た人たちが二度と罪を犯さなくなれば、犯罪件数は劇的に減るでしょう。

 現在、日本の刑務所の収容コストは受刑者一人あたり一日1500円程度(そのうち食費は約500円)です。ただし、そこには刑務官の人件費や施設維持費などが含まれていません。それらを含めた総額を受刑者数で割ると、年間費用は受刑者一人あたり約300万円です。ただし、これは刑務所に入ってから出所するまでのコスト。犯罪者に関しては、それ以前からさまざまなコストがかかっています。警察や検察などの捜査や拘置所での留置、そして裁判などにかかる費用を加えると、犯罪が認知されてから刑務所を出るまでのコストは一人あたり1000万円を軽く超えてしまうでしょう。

(中略)

 たとえば5年ぐらい実社会から隔離されていた人が、いきなり塀の外に出されたらどうなるのかを、ちょっと想像してみてください。刑務所では朝から晩まで命じられたとおりに規則正しい生活をすることになりますし、食事もきちんと与えられます。ところが自由の身になった途端、誰も面倒をみてくれない。お金も大して持ち合わせていないので、すぐに無銭飲食をして捕まってしまう人もいます。

 ただし、すべての受刑者がいきなり実社会に出ていくわけではありません。所定の刑期が終わる前に仮釈放となって出所した人は、あとで詳しく説明する「保護観察」を受けながら徐々に社会に馴染んでいけるようになっています。いわば自動車運転の仮免許を手にした人が、助手席に指導者に乗ってもらって公道を走る練習をするようなものだと思えばいいでしょう。本格的に社会復帰するまでに適切な指導を受け、そのあいだに住居や仕事を見つけるなどして、「ソフトランディング」するわけです。

 しかし満期で出所した人には、保護観察という段階がありません。しかも、仮釈放を認められずに満期まで刑務所で過ごすのは、素行が悪い、反省した様子が見られない、あるいは、住居がないなど、本人または環境に何かしら問題のある受刑者が多いのです。それがいきなり実社会に放り出されるのですから、再び犯罪に走ってしまう可能性は仮釈放の人よりも高くなるでしょう。やはり「ハードランディング」は危険です。

 いまの日本の制度では、「再犯しそうな人」ほど、いきなり塀の外に出されて、社会復帰がさらに難しくなっているのです。

 悪いことをした人が苦労するのは当然、とは思うけれど、お金もないし、前科があると仕事も見つけにくく、家も借りにくい、ということになると、結局のところ、「食べていくために再犯をし、刑務所に入ることを望む」ような人も増えてしまうのです。

 それで、年間一人あたり300万円もお金がかかっているわけですから、うまく「更生」してくれて、自活してくれれば、かなりのコスト削減にもつながります。

 人をひとり監視しながら食べさせる、というのは、こんなにお金と人手が要るものなのか、と考えずにはいられません。

 この本では、アメリカや北欧、オーストラリアなど、西欧諸国の刑務所を著者たちが実際に訪問してレポートしているのですが、西欧諸国の刑務所は、日本に比べて開放的で、最近は、受刑者の待遇も改善されているそうです。アメリカの刑務所には、電話やシャワーを受刑者が自由に使える、という施設もありました。もちろんその犯罪の内容と刑期にもよるのですが。殺人などの罪や性犯罪については、どの国も厳しく対応しているようです。

 最近は、受刑者数の増加によるコストを削減し、社会復帰を促すために「電子監視」というシステムを導入している国も増えているそうです。

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