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原子力規制委員候補の発表会見

人選における基本的な考え方

福島の教訓から学ぶ

先日発表したガイドラインを含めいくつかの基準をもとに、政府として責任をもって人選を進めてきました。

その際、最も私どもが考えたのは、なんといっても「福島の教訓から学ぶ」そういう人選をしなければならないということです。東京電力福島原子力発電所事故は、原子力規制というものが安全神話にとらわれるあまり本当の意味での対策をとってこなかったことが原因であると考えております。

その結果として、事故から1年半が経とうとしている今も、多くの方々に放射線の高い地域から避難を強いることになってしまっています。国や行政への信頼も含めて、信頼を取り戻すことができるかどうかきわめて厳しい状況にあります。

そういう状況であるだけに、福島から学んでいない者は、原子力の行政に関わる資格がないと考えて、そういう観点からの人選を進めてまいりました。

与野党のさまざまな意見を取り入れた形で、原子力規制委員会設置法が成立しました。

高い独立性と透明性をもって、一元的に原子力規制行政を行う仕組みがまさに今できつつあると、そんな状況です。その仕組みの中に、しっかりと「人」を配置することによって、組織に息を吹き込み、国民から信頼される実力ある組織を作っていく必要があると思っています。

国民から信頼される組織

事故の反省を踏まえた厳しい安全規制を行う考えを持っていること

電力会社など関係業界からの影響を受けず、公平性に疑いがないこと、

この2つを前提としています。

実力ある組織

さらに、実力ある組織であるために、委員会全体として、次の4点についてバランスを考えました。まず第一点目として、

・規制、シビアアクシデント、核セキュリティ、保障措置いわゆるセーフガード、それらをも含めた専門性をこの5人で確保するということ。

緊急時には原子力施設内の対応に責任を持ち、施設外の対策にも知見を提供できること

・規制庁という行政組織を束ねることになるので、平時からのマネジメント能力についても必要であること

・世界が注目する原子力規制委員会なので、国際性も考慮しました。

いま申し上げた点を、委員長および、委員4人が一体となって実現できる、そのようなチームを選んだつもりです。

田中俊一さん

委員長には、原子力の専門的な知識と経験に加え、事故の教訓をしっかりふまえ、深い反省に立って、これから原子力安全規制ができる人物を選ばなければなりません。

 知識と経験

田中さんは、原子力委員長代理や日本原子力学会の会長を務めた経験をお持ちです。我が国の原子力行政において非常に痛恨の記憶の1つでもある、99年のJCO事故の際には自ら現場に入り、自らも放射線測定を行いながら、現場の技術者をとりまとめて活動されました。知識という面でも経験という面でも、日本の規制組織の代表としてふさわしい方です。

事故への反省

おそらくみなさん記憶をされていると思いますが、事故収束の糸口がまだ見えなかった昨年の3月に、いちはやく「緊急提言」をとりまとめ、会見で「技術者の総力を結集するよう」呼びかけたのが、田中さんです。多くの専門家が、率直に話すことを躊躇した時期があった。そういう時期において、「原子力を推進してきた人間として、国民に謝らなければならない」と口にしたのが、これが大変注目を集めました。

除染への取り組み

ただ私は、この言葉や当初のこの発言をもって、田中さんが大変深い反省をしていると考えているわけではありません。当時の会見でも、除染の緊急性を訴えた田中さんは、事故から2か月後にはいちはやく福島での除染をスタートさせました。線量の測り方や効果的な除染の方法を各地で繰り返し説明し、そして自ら泥まみれになってスコップを持って除染活動をしてこられた。その後、福島県の除染アドバイザーになり、原子力損害賠償紛争審査会の委員になってからも、今日に至るまで毎週のように除染の現場に行って具体的な活動を継続されている。

田中さんは福島市の出身で、高校時代まで福島県内で過ごしたと聞いている。もちろん、ふるさとを思う気持ちもあったとは思いますが、ここまで継続的に、反省を体現してこられたことに私は心から敬意を表したいと思っています。

この1年強の活動を見てきて、知識と経験、そして反省を踏まえて前に進める力に、私は田中さんに強い思いを持っている。率直に深い反省を持ち続ける一方で、すぐ目の前にある課題に向かって、先頭に立つことを恐れず指揮をとる。いま原子力規制に求められているリーダー像がここにあるのではないでしょうか。

 

 

更田豊志さん

まず、委員会に必要なのはなんといっても原子炉の専門家ですが、率直に申し上げて、この人選についてはさまざまな悩みがありました。みなさんご存知だと思うが、原子力の分野は非常に細分化されていて、ひとくちに「原子炉の専門家」と言っても、さまざまな分野があります。いわゆる「反対派」と呼ばれる方を含めて、多くの方々を候補者として捉え、人選を行ってきましたが、最終的にこの方にお願いしたいという結論になりました。

この人選を行ったポイントは、2つあります。

原子炉の分析力

1つは、「原子炉の状況を【自分で】判断できる人」だ、ということです。今回の事故の反省に立ち、原子力規制委員会は、規制にも緊急時の対応にも、事業者から独立した立場で臨みます。原子炉の状況を事業者にゆだねるのではなく、自身で判断し、把握し、そしてそれを事故の収束や原子力の規制に活かしていく必要があります。

更田さんは、事故の時に燃料がどのような状態になるのか、この分野が専門で、シビアアクシデントについても研究の対象としてこられました。研究炉を使った実験や、実際の原子力発電所で使われた燃料を使った試験でも、多くの経験をお持ちです。

常に事故は起きうると想定し、その先頭に立って研究をしてきた人にこそ、新たな規制を任せるべきではないかと考えました。

現役の即戦力

もう1つは、「これからの原子力規制を担う自覚を持っている人」だ、ということ。

更田さんは、54歳で、研究者としては最もいままさに脂の乗り切った、現役にあたります。いま直面している多くの課題を乗り越えるためには、すでにキャリアを終えた大家(たいか)というだけではなく、更田さんのような現役の力こそ必要だと考えました。

事故後、「安全研究は、安全性を確認するためのものではなく、潜在的に存在している危険を指摘するためのものだ」と、内部から積極的に声を上げ、学会などでの議論をリードしてこられたのも更田さんです。

さらに国際的な場でも、OECDの原子力施設安全委員会でワーキンググループの議長として、先進国ので安全研究の協力促進をまとめた経験をお持ちです。気力、体力ともに充実しているということはもちろんですが、なんといっても、今後の原子力規制を、自分の背負うべき問題として、強い当事者意識を持っていらっしゃることが決め手になりました。

中村佳代子さん

次に、放射線の有害な影響から人と環境を守るという規制委員会の役割を担ううえでどうしても必要だと考えたのが、放射線防護の専門家。放射線審議会で委員を務めておられる、中村佳代子さんにお願いしたいと思います。

東京電力福島原子力発電所事故の後、放射線の影響に関係するいくつかの規制が作られましたが、判断の根拠を国民に分かりやすく説明することが十分にできないまま、多くの方々に不安を抱かせることになってしまいました。その反省に立ったうえで、2つの改善目標があると考えました。

専門家の知見を取り組みしくみづくり

まず第一に、専門家の科学的判断をダイレクトに規制に反映するということです。

これまでの審議会というこの仕組みは、仕組み自体にどうしても限界がありました。省庁が規制の案を提出し、専門家にはその是非を聞くだけになっていたというそういう指摘もあります。

今回の法改正で放射線審議会は規制委員会のもとに入りますが、それだけではなく、「人」という面でも中村さんに委員として入ってもらうことで、専門家の意見を最初からダイレクトに規制に反映させていくことができるのではないかと思います。

分かりやすい言葉で説明する

もう1つの目標は、専門家が分かりやすい言葉で国民に直接、説明するということです。そこで、ご自身の口から説明ができる方に委員になっていただきたいと考えました。

いわゆる「リスクコミュニケーション」の必要性です。中村さんは、東京電力福島原発事故の後、自らを「専門知識の通訳」と位置づけ、活動してこられました。

電話での健康相談を積極的に受け、1人1人の不安を受け止めるリスクコミュニケーションを実践する一方で、マスコミを対象とした勉強会を主宰するなど、情報を広く伝えることにも力を尽くしてこられました。

さらに、市民の意見に耳を傾けるという面でも中村さんは優秀な「通訳」だといえます。震災後、放射能と向き合わざるを得なくなった福島の高校生たちとじかに接し、「若い世代が科学的で冷静な目線を持っていることに驚かされた」「そのような若い世代の目線を、社会に伝える方向でも役に立ちたい」と思われたそうです。

中村さんは、化学(ばけがく)の分野で研究者としてのキャリアをスタートされ、放射線医学の分野でも大学の医学部や病院という現場で、幅広い経験をお持ちです。その、分野を横断したご経験を、相手に合わせた柔軟なコミュニケーション力につなげていただきたいと思います。

大島賢三さん

国会事故調の教訓

委員の候補者3人めは、大島賢三さんです。この3人めの委員についても、難しい検討でした。その時にやはり、大きな成果を残してくださった国会事故調の教訓をしっかりと息づかせてくれる方に1人入っていただく必要があるのではないかと思いました。

教訓を実行につなげるマネジメント力

大島さんは、国連の事務次長として人道問題に取り組んだ経験をお持ちです。チェルノブイリ原発事故の被災者への国際的な支援を、ロシア・ベラルーシ・ウクライナの政府と調整するという難しい役目を果たしてこられました。

その後、国連大使としても、北朝鮮の核実験の際に安保理制裁決議を調整し、実績を残してこられました。

そのような大島さんに、今回我々が国会事故調を通じて学んだ多くの教訓を、ただの学びにとどめず実行力のある形にしていく役割を担っていただきたいと考えました。

教訓を実行するためのマネジメントを担う人が、委員の中にこそ必要だと考えたこともあります。

国際社会の目

さらに原子力の規制業務が一元化され、核セキュリティ、核不拡散の保障措置等も併せて所管することになりますので、国際的視点を踏まえることが今まで以上に求められます。国内のみならず世界からも信頼され、尊敬される組織を作るために、外交官として活躍してこられた大島さんのような「国際社会の目」を肌感覚で知っている人が必要です。

被ばく者医療への貢献

そして、大島さんに委員になっていただきたい理由がもう1つあります。大島さんは、広島市のご出身で、2歳のときにご自宅で原爆に遭い、被ばくされました。

被ばく者手帳の重みを誰より分かっていらっしゃる立場で、今も、広島の「放射線被曝者医療国際協力推進協議会」で理事を務め、海外に在住する被ばく者への医療支援を推進するなど、尽力されています。

放射線の有害な影響から人と環境を守るという強い思い、日本の原子力規制組織としての使命を必ず実現してくれる方だと思います。

島崎邦彦さん

最後に、地震の専門家です。東京電力福島原発事故を見れば、原子力の規制に自然災害、特に地震の専門知識が必要だということには、みなさん納得してもらえるはずです。

ただ、個々の知見があっても、それらを実際の政策に役立てることができなければ、意味がありません。震災後、実は有用な研究がすでに発表されていたにもかかわらず見過ごされていたというようなことも、明らかになってきました。

過去の研究の有用性

島崎さんは、阪神淡路大震災のあと、政府に設けられた「地震調査委員会」で長期的な観点から地震を評価されてきました。2002年に発表された、「大きな津波を伴う地震が日本海溝の、どこでも起きうる」という研究は、いま再び注目されていますが、当時は残念ながら政府の政策に直結することがありませんでした。

島崎さんは、そのような政府の政策決定の問題点について当時から鋭く指摘されてきました。過去の地震のデータが限られていることや、地元への影響が大きすぎることを理由に、地震の予測を防災対策にすぐに反映できないことに、いら立ちを感じたとおっしゃっています。

専門家の知見を結集

原子力規制委員会に、地震の専門家に入っていただくことのねらいは、まさにそこにあります。学術世界を広く見渡しながら、地震学の中のどの研究を原子力規制に活かすべきなのか、委員会の外ではなく中で、検討してほしいと考えています。

島崎さんは、地震予知連絡会会長、日本活断層学会会長、日本地震学会会長などを歴任されました。地域ごと、分野ごとに細分化されている地震学にあって、非常に幅広い見識を持っておられる、地震学の第一人者ともいうべき人物です。自らが窓口となってすべての専門家の力を結集するという難しい任務を、責任を持って引き受けてくれると考えています。

原発への厳しい視線

加えて、島崎さんは、原子力施設の地震対策についても厳しい考えをお持ちです。「従来の地震予測は、最も起こりやすい地震を想定しているので、それより大きな被害が出ることもある」としたうえで、「原子力施設にはより厳しい基準が必要」と主張されています。

これから原子力施設に地震が与える影響について1から見直していく中で、島崎さんの広い知見と高い問題意識は、不可欠だと考えました。

以上が委員候補5人の紹介であります。全体のバランスの面からいってこの5人がベストの陣容だと考えている。なにより非常に大変な役職を引き受けてもいいという意欲を持っている方たちだということもきわめて重要です。その5人の方々の覚悟を大切にしたいと思っています。

もちろんこの人事は国会のまさに承認が必要。また、国民の理解も不可欠だと思っています。できるだけしっかりとさまざまな検討をいただいてできるだけ早く結論を出していただき、早い時期に原子力規制委員会を発足させていただきたいと思う。

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