蒸気発生器は、原子炉から出てくる高温高圧の水(熱湯)を熱交換して蒸気を作り出す装置である。4号機では原子炉から排出される熱湯は157気圧、約320℃。蒸気発生器で約70気圧266℃の蒸気をつくり、タービンに送られる。タービンに接続された発電機は870万kWの電力を作り出す。
蒸気発生器は高さ20mを超える巨大な装置で、内部には一基あたり3382本の細い管が逆U字型にめぐらされている。細管は外径が22・2㎜と細く、管の厚さはわずか1・3㎜。どれか1本でも完全に破断すれば(ギロチン破断と呼ばれている)、高圧の原子炉水が蒸気側に勢いよく流れ出し、蒸気となって大気に吐き出される。この状態が続けば、原子炉水はどんどん流れ出て、ついには炉心溶融(メルトダウン)に至る。蒸気発生器は、加圧水型原発の〝アキレス腱〟ともいわれる設備だ。
実際に1991年2月に美浜2号機(福井県)でギロチン破断が起きた。原子炉水が破断した細管から勢いよく2次系に流れ出し、蒸気となって大気に噴き出した。緊急炉心冷却装置(ECCS)が作動しても水を炉内に十分に送り込むことができず、あわや炉心溶融の大惨事になる寸前だった。
この事故の原因は、蒸気発生器細管の上部に挿入されている触れ止め金具が設計通りに設置されていなかった施工ミスだとされた。細管内は、流れる水の勢い(毎秒3m程度)と沸騰する泡の影響で常に細かく振動し続けている。金具の位置が悪かったため、震動が想定よりも大きくなり破断したというのだ。

蒸気噴出の瞬間はドカンと大きな音がし、周辺住民にも聞こえたという。住民たちは13時台の事故を夕方のニュースで知った。原子力資料情報室は直ちに「崖っぷちに立たされた私たちの命」というリーフレットを作成し、事故の深刻さと問題点を浮かび上がらせた。