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新型コロナウイルス感染拡大で株価指数ショートの"Window of Opportunity"か?

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(金融日記 Weekly 2020/2/14-2020/2/21)

 極めて残念なことに10日ほど前に書いた筆者の予想は実現しつつある。当時、WHOのいま思うと楽観的だった見通し、圧倒的な兵力が投入されている中国政府の新型コロナウイルスの封じ込め作戦で、この惨事は武漢でのエピデミックに留まり、それ以外の地域では小規模な感染で収束するだろう、と多くの識者が考えていた。それゆえに、すこし大きな台風やどこか遠い世界で発生する疫病のようなものぐらいに世界では受け止められていたのだ。

●新型コロナウイルス(COVID-19)の次の感染爆発の地は東京になりそうだ
http://blog.livedoor.jp/kazu_fujisawa/archives/52168377.html

 しかし、グローバル化により恐るべき感染スピードを手に入れた新型コロナウイルスは、韓国でイランでイタリアで、そして、日本でもアウトブレイクの兆候を見せはじめた。このままで行けば、世界同時流行、すなわちパンデミックも時間の問題なのかもしれない。そして、いまや多くの識者が筆者と同じような意見を唱えはじめた。すなわち、東京などの大都市では感染爆発は避けられない事態になってきた、ということだ。

●韓国、新型ウイルスへの警戒レベルを「最高」に引き上げ 大統領発表
https://www.afpbb.com/articles/-/3269755

●イタリアで感染急増、130人超 11自治体を封鎖
https://www.sankei.com/world/news/200223/wor2002230018-n1.html

●周辺国、イラン国境封鎖 ヨルダンも入国禁止へ 新型肺炎
https://www.jiji.com/jc/article?k=2020022400021

●新型コロナ国内感染者838人
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200223/k10012298071000.html

 また、新型コロナウイルスが狂わせるのは人体の免疫機構だけではない。社会の免疫機構を暴走させはじめている。中国政府は、武漢の交通網を遮断し市民に自宅隔離を命じ、感染拡大を防ぐ社会の免疫機構をすぐさま発動させた。そして、この1ヶ月の間、武漢だけでなく、中国の都市や香港やシンガポールでも移動制限と自宅待機、イベントの中止など多くの感染拡大を防ぐ施策が実行された。一方で、日本国政府はこの無症状でも強い感染力を持つステルス機のような新型コロナウイルスの侵入をほぼノーガードで許した。

 当然だが、これらは多くの経済的損失を生み出す。すでに航空産業などの破綻が始まっている。これが中国の不良債権問題に飛び火すれば、まさに免疫システムが暴走し、自らの身体を一気に蝕むことになるだろう。日本でも当然だが中国からの観光客に支えられていた百貨店や飲食店などは悲鳴を上げはじめている。昨年の第4四半期に消費税増税のショックを受けて大幅なマイナス成長を記録した日本経済は、続けざまに大きなショックに見舞われることが必定となった。

来月に徐々に明らかになる2月の経済統計でいくつものショッキングな数字を呆然と眺めることになるだろう。そして、いまのところ好調なアメリカ経済だが、果たして、世界第二位の中国経済、第三位の日本経済がこれだけおかしくなるのに無傷でいられるだろうか。イランやイタリアなど中国から遠く離れた地でもアウトブレイクをはじめた新型コロナウイルスが、アメリカ本土を容赦なく侵攻していく可能性も十分に考えられる。

 ところが、こうした事態にもかかわらず、日本の株価指数も世界の株価指数も下がらない。いったいに何が起こっているのだろうか。現状、一般大衆の一部でパニックになっているが、冷徹な市場関係者は、致死率1〜2%程度であろう新興ウイルスのパンデミックが世界の終わりでないことは理解しているだろう。しかし、株式市場が無視していいようなカタストロフィックイベントでは決してない、というのも確かなことだ。

実際に筆者の周りで、積極的にショートしないまでも、さらにTOPIXやS&P500のような市場を代表する株価指数を買い増そうという投資家はまったくいない。むしろ、多くがこうした株式市場へのエクスポージャーを減らしている。では、誰が買っているのか? インデックスファンド投資家と、ディープラーニングに基づくAIたちである。

 この数年、インデックスファンドはパンデミックといいほど世界で大流行している。代表的な指数には年金ファンドなどから毎月の積み立てとして自動的に買いが入る。また、日銀も日経平均ETFを買うものだから、こうした指数に組み入れられている銘柄の株価に大きな歪みが生じている。市場は徐々にファンダメンタルズに基づき適正な株価を見つけるという重要な機能を失いつつあるのだ。

さらに、AIファンドも流行している。こうしたAIファンドの多くがディープラーニングによる機械学習で勝ちパターンを見つける。この数ヶ月の一本調子の上昇から、こうしたAIファンドは下がったら買い増すというパターンになっていることが容易に想像できる。事実、インデックス投資家とAIにより売買される日経平均株価と、主に個人投資家などの人間によって売買されているマザーズ銘柄では大きなパフォーマンス格差が生じているのだ。

(赤線が日経平均ETF、青線がマザーズ指数ETF)

 WHO事務局長のテドロス博士は、中国政府が多大な犠牲を払いながら武漢への封じ込め作戦を決行している間、まだ世界で感染爆発は起こっておらず、人類が世界的な流行であるパンデミックを防ぐ"Window of Opportunity"(絶好の機会、期間限定のチャンス)があると必死に各国政府に働きかけていた。しかし、日本国政府をはじめ、多くの国がむざむざとこの新興ウイルスの侵入と拡散を許してしまった。いまやパンデミックを避けるための"Window of Opportunity"は閉ざされつつあるのだ。

 一方で、臨機応変な投資家やトレーダーには、株価指数を売り込む"Window of Opportunity"がいま開いているのかもしれない。そして、このような"Regime Change"では、機械的に買うインデックス投資家やパターン認識しかできないAIたちが最も大きい損失を被ることになるのかもしれない。
 Before COVID-19とAfter COVID-19では、世界はまったく変わってしまったのである。

●Coronavirus: 'Window of opportunity narrowing,' says WHO director


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日本株

直近1年の日経平均株価とインプライド・ボラティリティの推移

出所: 日経新聞社

サイズ/スタイル/セクター別の週間パフォーマンス(2020/2/14-2020/2/21)

出所: 東証、日経新聞社、セクター指数はTOPIX17業種

個別銘柄の週間パフォーマンス(2020/2/14-2020/2/21)

出所: 会社四季報、Yahoo!ファイナンス

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