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社員9割外国人、武田薬品社長から見た「日本人」の長所と短所

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6.2兆円のシャイアー巨額買収で世界トップ10に食い込んだ。今や社員の9割は外国人。グローバル化した「世界のタケダ」を率いるフランス人社長、クリストフ・ウェバー氏は、日本人をどう見ているのか。

シャイアー買収、NY上場で世界企業に

武田薬品工業代表取締役社長CEO クリストフ・ウェバー氏
武田薬品工業代表取締役社長CEO クリストフ・ウェバー氏

武田薬品工業は2018年12月にニューヨーク証券取引所に上場し、翌月の19年1月には日本企業史上最高額の6.2兆円を投じてアイルランドの製薬大手・シャイアーを買収。製薬会社の売り上げで世界トップ10の仲間入りを果たした。

今や世界に80拠点を持ち、社員5万人を抱え、そのうち外国人社員が9割を占めるグローバル企業である。

だが14年に社長、15年にCEOに就任したクリストフ・ウェバーCEOは、今なお江戸時代の創業時から受け継ぐ価値観(タケダイズム)を重視した経営を推し進めている。真のグローバル企業とはどのようなものか。そこで働く人やリーダーに求められるものは何か。クリストフCEOに尋ねた。

――ニューヨーク証券取引所への上場とシャイアーの買収から1年が過ぎました。買収前と後では何が変わったのでしょうか。

買収後、当社の米国での事業は以前の3倍の規模になり、1カ所しかなかった製造拠点は7カ所に増えました。そのことで米国市場でのプレゼンスは格段に高まりました。これは我々の戦略上とても重要なことです。特に世界のライフサイエンス研究のハブである米国ボストン地域において、我々が最大の雇用主になったことは、米国におけるタケダの存在感を格段に高めたと感じます。それによって各種研究機関とは引き続きよいパートナーシップを保つことができ、バイオテック関連企業やスタートアップ企業とも提携しやすい環境ができました。

米国は新しい医薬品が最も早く使用される国ですから、当社のようなR&D(研究開発)主導の会社にとっては、この地で強いプレゼンスを持つことが非常に重要です。

ニューヨークでの上場に関して言うと、世界を代表する製薬会社は大抵米国に上場していますから、それらの世界企業と同じレベルでタケダを認識してもらえることは競争力を高めるうえで重要です。その意味で米国での上場は我々の戦略上、必須でした。また日本で株式を購入できない人に代替案を提示することも、シャイアー買収における重要な要素でした。とはいえ時価総額の過半数は東京にありますから、我々にとって1番は東京市場であり、米国は2番という位置づけです。

タケダの創業精神は海外でも通用する

――買収を決定した当初から、統合作業は1年以内に終えると公言していました。現在の進捗状況はいかがでしょうか。

世界の医薬品企業売上高ランキング

人の配置に関しては、現在(19年12月中旬)までに95%を終えています。ただ各国での法人統合については、細かい手続きが必要でもう少し時間がかかります。

――これほど大規模な組織と人の統合作業を1年足らずのスピードでやり遂げられた要因とは何でしょうか。

当初から極力、早く2社を組み合わせることを目指していました。そのために1年前から新しい組織デザインの検討を始めていたのです。ですから統合にあたっては準備していたデザインに基づいて進めていけばよかったわけです。

我々が最も重視したのは、単に違う組織を加えるのではなく、新しく1つのチームをつくること、ワン・タケダをつくることでした。先ほど95%が終わったと申し上げましたが、それは、「新しいタケダ」のチームがほぼできあがったという意味です。世界中のシャイアーのロゴマークはタケダのものに変わりました。日本企業がM&Aをする場合、こういうやり方はあまりないと思います。

――今回の統合で全社員の9割が外国籍となり、執行役員クラスで構成されるタケダ・エグゼクティブ・チーム(TET)も11カ国に及ぶ国籍のメンバーで構成されています。にもかかわらずCEOは東京にグローバル本社を構えるなど、日本企業としてのアイデンティティを重視されています。

日本の会社であるかどうかの切り分けに、社員の国籍の比率を用いるのは正しくありません。会社の国籍を決めるのは、ホームベースと歴史です。どこにヘッドクォーター(本社)があるのか、またその会社の価値観がどこから来ているものなのかが重要なのです。

2018年7月にオープンした武田グローバル本社(中央区日本橋本町)。本拠地は日本であることをアピール。
2018年7月にオープンした武田グローバル本社(中央区日本橋本町)。本拠地は日本であることをアピール。(時事通信フォト=写真)

タケダは1781年に日本で創業した日本の会社であり、そのことがタケダという会社を決める要因だと私は考えます。ですからタケダでは世界のすべての社員が、誠実、すなわち公正、正直、不屈という創業時から受け継ぐ4つの価値観(タケダイズム)を大事にしています。

新しく入社する人、特にリーダー層にはこの会社の価値観を事前に伝え、合意してもらえるかどうかを確認します。また海外で新しいマネジャーが入社した場合、「グローバル・インダクション・フォーラム」という入社研修を日本で1週間受けてもらい、タケダの価値観を学んでもらいます。今回の統合に際しても、多くのインダクション・フォーラムを実施しました。研修を受けたマネジャーが自国に戻って現場に伝えることで、組織の隅々までタケダの価値観を浸透させたいと考えています。

タケダの社員が優れた人たちで、彼らをリスペクトしている

――日本の伝統に基づいたタケダイズムは、グローバル企業の根幹となりえるのでしょうか。

私はそう考えています。会社には価値観が必要ですし、目的が必要です。ただほかの国のカルチャーでは、タケダイズムの内容は捉えづらいかもしれません。ですから並行して、患者、信頼、レピュテーション、ビジネスという、行動と判断の基準となる「優先順位」を設けています。この優先順位はタケダイズムをより理解しやすいよう、別のディメンションでかみ砕いたものです。患者さんに対して正しいことをすれば、社会の信頼が醸成され、会社のレピュテーション(評判)がよくなり、それにともなってビジネスもついてくる、という流れです。この価値観をシェアするために、世界各国でトレーニングを実施しています。

――CEOは意思決定をする際、さまざまな人の意見に耳を傾け、参考にすると聞きます。その意図を教えてください。

ご指摘の通り、私は様々なプログラムを通じて、マネジャー、リーダー層ほかいろいろなレベルの人と話し合う機会を設けています。日本でも月に1回、定期的に「ラウンドテーブル・ミーティング」という小規模のグループディスカッションを実施しています。そうした場所で聞いた意見をインプットして、意思決定を行うのです。

その理由は、まずタケダの社員が優れた人たちで、彼らをリスペクトしているからです。私は常にベストではありません。会社のことをすべて知っているわけでもありません。コミュニケーション部門、研究開発部門、製造部門と各分野に私より優れた人がいます。そうした人の意見を聞くことは、私の仕事である「明確な意思決定」をするうえで欠かせません。それが私のスタイルなのです。ときには、コンセンサスがない形で意思決定をすることもありますが、全体の5%程度にすぎません。

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