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クルーズ船、日米対応の巧拙

東京に出てくると、クルーズ船が留置されている横浜に近いこともあり、詳しく情報収集をし、その結果を解説してくれる知人がいた。「日本は良いことをしたのだから、本当のところ、適切に対応していれば世界的な評価が上がったはずだ」と。

新聞が報じているように、ダイヤモンド・プリンセス号はイギリスの船である。だから日本は寄港を拒否できた。しかし、日本人乗客が多かったからだろう、寄港を認めた。それに、三菱重工が建造した船だったことも影響したのかもとの説があった。

寄港させたからには、「日本がイギリスの管轄権にある船を善意で寄港させた」、「その上で必要な措置をイギリスと協議のうえで施す」としなければならなかった。この措置と外部への情報発信を行うには、少なくとも外務省と厚労省の協議が必要だった。省庁間をまたぐ対応なので、首相以下官邸の差配がポイントとなる。

この点、「イギリスの船を・・」とは、公式の情報発信になかった。そう思って間違いないだろう。つまり、いかにも日本の全責任でという雰囲気でコロナ対策が行われてきた。だから、アメリカのメディアからは当然のこととして、イギリスのメディア(NHKに相当するBBC)からも、感謝されるどころか非難の集中砲火を浴びている。

アメリカは日本の対応に非常に不満だった。だからチャーター機を飛ばして真っ先に自国民を引き取った。自国民の(まさに)窮地からの救出が遅れて病死者が出ると、トランプの大統領再選が危なくなる。そのくらいの瀬戸際だったのだろう。

アメリカは自国民を守るために最大限の努力を払う国である。海外でアメリカ人がアメリカ大使館に助けを求めると、きわめて適切に対応してくれる。そのようにアメリカの知人が話していた。ついでにこの知人は、「身の危険を感じると真っ先に逃げそうな日本大使館と真逆なのでは」と、笑いながら付け加えることを忘れなかった。

それはともかく、クルーズ船の件において外務省の姿はない。厚労省だけが登場し、対応の不備を指摘されると苦し紛れの、的を外した言い訳を繰り返すだけである。

「世界から称賛される絶好の機会を逃したのはきわめて残念なことだ」と、冒頭に紹介した知人は感想を述べていた。それと同時に思うのだが、クルーズ船のコロナの患者を治療しつつ観察することで、日本としてコロナ対策に関する新たな知見を得るチャンスでもあった。それさえも逃したのではなかろうか。

日経新聞によると、ダイヤモンド・プリンセス号で出た死者のうち、「80代の女性は発熱後、病院への搬送までに1週間かかった」らしい。以前に書いたように、持病に対応するための薬の手配が遅れたことも併せて考えると、「政府の取り組みは適切であると思っている」との菅官房長官の発表は根拠レス、自己擁護としか思えない。

いずれにしても残念である。同時に、日本にも危機が迫っている。

下船した乗客をそのまま帰宅させたことの是非はともかく、その帰宅に公共交通手段を利用させたこと、帰宅後の自由な行動を原則として認めたことは、厚労省が主張してきたコロナの感染経路に関する自信度をアピールするだけの目的で取られた措置ではないのか。その主張が崩れる可能性を想定した場合、日本をますますコロナ汚染国にするリスクを冒し、賭けに出たことになる。

ちなみにクルーズ船に閉じ込められていた同級生だが、自由に沖縄に帰宅し、自由に行動しているとのことである。本人には、感染していないとの自信があるのだろう。「でもね」と思う。厚労省としてそこまでの自由を認めることが正しかったのだろうか。もうすぐ、この賭けの結果が判明する。

もっとも、その賭けが成功裡に終わったとしても、「たまたま」感は拭えないのだが。コロナ問題が終息した後、客観的な情報と分析結果の公開が望まれる。

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