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ワタミ・中国全面撤退の舞台裏

中国・武漢発の新型コロナウイルスによる肺炎の感染拡大を受け、ワタミは上海、深セン、蘇州、広州に展開する7店舗を閉店し、中国からの「全面撤退」を発表した。多くの日本企業が中国に拠点を持つ中で「いちはやい」経営判断が注目された。今回は、その決断の舞台裏を説明したい。

決断に至るまで、あらゆるデータと中国の大手外食企業の経営者からの情報で、さまざまなシミュレーションを繰り返した。

2000年代前半に流行したSARS(重症急性呼吸器症候群)は終息までに8カ月続いたが、今回の感染者数や罹患(りかん)率はそれ以上だ。終息まで6カ月、9カ月、12カ月とそれぞれ想定し、その累損と撤退の損失をはかりにかけ撤退を判断した。

経営者仲間から「もともと中国から引くつもりだったのでは」と言われるが、それも違う。「サーモン伝説和民」など新しい業態を立ち上げ勝負に出たばかり。

しかし、私は経営判断をする際、「2ついっぺんに賭けをしない」というスタンスをとる。感染終息の先行き、新業態の先行き、2つ同時に賭けをしないことも決め手となった。もちろん撤退に際し、日本から中国に出向していたワタミの社員は全員帰国し、今後も他で活躍してもらう。

終息後の中国経済が、すぐに外食を楽しむほど「回復」するかという視点も重要視した。中国では、企業が従業員の賃金を数割減らして払っている現状もあり、目減りした賃金での生活では、感染拡大が終息しても個人消費は容易には戻らないだろう。

もともと、私とワタミは「チャイナ・リスク」を意識した経営を行ってきた。中国事業が全利益の3割を超えてはいけないと独自方針を決めていた。それはやはり共産党一党政権による独裁や情報の不透明さからだ。当局が発表する感染者数や死者数も、国際社会では信用されておらず、今回も中国の情報の不透明さが指摘されている。さらに、中央政府による役人などの左遷の話題も聞こえ、左遷理由の説明もなく独裁色を感じる。

実は今回の中国撤退の経営判断で唯一意識した「企業」がある。それがディズニーだ。上海と香港にあるディズニーランドの休園決定の判断は早かった。いまだ再開の目途も立っていない。ディズニーの判断は米国から見た目線でのリスク判断と言ってもいい。何より人が集まる、楽しむ「消費の象徴」だ。今後、国内で感染拡大が止まらない時、東京ディズニーランドの休園判断は大いに注目され、「流れ」を決定づけるだろう。

日本経済への影響も今後、ますます出てくると思う。しかし、「何もしないで、ただ様子を見る」というのが、経営者が一番とってはいけない手だ。あらゆるシミュレーションをし、決断し、少しでも良い方向に行動する。厳しい時こそ方法は無限大、と言い聞かすべきだ。世界第2のマーケット中国には、いずれまたワタミも挑戦する。その日に向けた戦略や構想も考え始めている。

夢はあきらめたらそこで終わり。その言葉になぞらえたら、決してあきらめてはいない。いつの日か「中国再挑戦」も、「しっかり」経営判断したい。

【夕刊フジ】「渡邉美樹経営者目線」(毎週火曜日連載)より

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