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移民“侵略者”への強い憎悪、独で「反イスラム・テロ」9人殺害 - 佐々木伸 (星槎大学大学院教授)

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 ドイツ西部の地方都市ハーナウで19日深夜、「水たばこバー」2軒を狙った「反イスラム・テロ」と見られる襲撃事件があり、移民のイスラム教徒ら9人が犠牲になった。犯人は極右思想に傾倒していたと見られ、事件後、母親と死亡しているのが見つかった。ドイツでは移民や難民を憎悪したヘイトクライムが増加しており、イスラム教徒の移民社会に大きな衝撃を与えている。


「連中を抹殺しなければならない」

 犯行があったハーナウはフランクフルトから約20キロの人口9万人ほどの都市だ。現地のメディアなどによると、犯人の男は「トビアス・R」という43歳のドイツ市民だとされる。男は19日夜10時ごろ、繁華街にある水たばこバー「ミッドナイト」で銃を乱射、4人を殺害した。

 男はさらに「ミッドナイト」と同じく、水たばこを提供している「アリーナ・カフェ」を襲撃、5人を殺害した。十数人が負傷し、1人は重体といわれる。警察が男の身元を特定し、自宅に踏み込んだところ、男と母親(72)が死亡しているのが見つかった。犯行後に自殺したと見られている。男の車から銃と弾薬が押収された。

 ドイツ大衆紙ブルトによると、男は動画や犯行声明を残していたとされ、移民の国外追放を主張し、「それができないなら、連中を抹殺しなければならない」などと強調していた。声明を読んだ専門家は「ネットにあふれる極右思想をつなぎ合わせたお決まりのパターン」と指摘し、移民や難民の急増を阻止するという“陰謀論”に満ちていたことを示唆した。

 水たばこは中東で人気のある伝統的な嗜好品だ。襲撃を受けた一帯はクルド人やトルコ、シリア、アフリカ諸国からの移民が集まる場所として知られ、炙り肉を売るケバブ屋などが立ち並んでいる。イスラム教徒の排斥に取りつかれた男がこうした移民を狙ってテロを起こしたことが濃厚。男は銃の所有許可を得ていたが、当局からはマークはされていなかったという。

 ドイツでは昨年10月、ユダヤ人を敵視する男が東部ハレにあるシナゴーグ(ユダヤ教会)を襲撃し、2人を殺害したのをはじめ、移民の受け入れを支持した地方政治家が殺害されたり、サッカーの試合の際にネオナチ活動家の追悼が公然と行われたりするなど、極右の台頭が問題になっている。先週には、警察がモスク(イスラム寺院)を狙った大規模テロ計画を摘発し、12人が逮捕されたばかりで、イスラム教徒の恐怖感が高まっていた。

 メルケル首相は事件後、「差別主義や憎悪は社会に巣くう害毒だ。克服されなければならない」と述べた。

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