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両極化する米国の新聞事情

米国の新聞を巡る状況は、はっきりと二分されてきたようです。

全国紙は有料のデジタル購読者を順調に伸ばし、経営を安定軌道に乗せた一方、ローカル紙はますます厳しい状況に追い込まれている、という構図です。

最近の動きを追ってみます。

まず、今月17日、サクラメント・ビーやマイアミ・ヘラルドなど14州で30のローカル紙を有する新聞チェーンMcClatchyが再建計画の承認を求めてニューヨーク州南部地区破産裁判所に自主的に破産を申請しました。

McClatchy傘下の各新聞は発行され続けますが、ヘッジファンドの管理下に置かれる見通しで、そうなれば通例として、残酷なまでの人減らしは避けられないでしょう。

1月29日には、8年前に31のローカル紙を買収して注目を集めた、あの投資の神様、バークシャー・ハサウェイのウォーレン・バフェット氏がその全てを50の日刊紙を有する新聞チェーン、リー・エンタープライズに売却したことが明らかに。

買収当時は、成算があるように語っていましたが、最後には、「新聞ビジネスはtoast(もうおしまいの意)だ」と語り、「They’re going to disapper」などと完全に見放す一方、「生き続ける可能性がある新聞」としてNYタイムズ、WSJ、ワシントンポストをあげていたそうです。

昨年、11月には、451紙を有し、米最大の新聞チェーンGateHouse Mediaと216紙のGannettが合併し、700紙近い規模になりました。

このため、ブルッキングス研究所のClara Hendricksonさんは即座に「この合併は米国のローカルニュース危機を深める」と指摘する記事を書きました。なぜなら、両チェーンとも過酷な人減らし有名なので、 Hendricksonさんは「この合併で3500~4000人の削減が予想される」と推定しました。

このGateHouse傘下の新聞のうち200社を運営するヘッジファンドで、人減らしでひときわ有名なAlden Global Capitalは同じ頃に、これも77紙のTribuneの筆頭株主になりました。ここでも同じことが起きそうです。

それに引き換え、バフェット氏が「生き残る」と名指しした3紙は、極めて順調のようです。

NYタイムズは今月6日、「電子版の有料購読者が前年同期比で70万増えて、342万9仙人に達した」と公表しました。紙の新聞との合計は428万5千部です。(電子版の数字はコアのニュース版のもの。この他に有料のクロスワード、クッキングの購読者が96万6千あります)

これで、2019年のトータルのデジタル収入は8億6千万ドルに達しましたが、それでも来月からデジタル版の値上げに踏みきり、月額15ドルが13%アップの17ドルになるとのことです。強気です。

続いて翌7日には、Wall Street Journalが「初めて有料購読者が200万を越えた」と発表しました。そのリリースは、NYTへの対抗心がありありで微笑ましいほどです。

株式が非公開のポストは公式な発表をしていませんが、NiemanLabの記事によると、これまでの内部リーク(意図的?)では、2018年12月時点では「150万を越えた」とあったそう。その時点でのNYTは270万、WSJ170万だったそうですから、そこそこ、いい勝負をしてるわけです。

そして、この大手3社とも記者を増員していて、この点でも、ヘッジファンドのもとで苦労を重ねているローカル紙とは天と地ほど違います。

PEN Americaのレポートによると、2004年以来、アメリカの新聞の編集部から47%ものスタッフが失われ、全新聞(週刊新聞などを含む)の20%にあたる1800紙が消えたとのことです。

こうしたことを念頭に置くと、さる15 日にWaPoに掲載された「ローカル紙を殺してはならない」という主張が納得できます。

筆者は、NYタイムズでPublic Editorをつとめ、今はWaPoのメディアコラムニストとして有名なMargaret Sullivanさん。

Sullivanさんは、ここであげたいくつかに言及した後、Duke大学の調査研究に触れてこう書きます。

「ローカル紙は、地元のテレビ、ラジオ、オンラインのみのニュースサイトを集めたより多くのコミュニティニュースを報じていることが分かった。ローカル紙は苦しんでいるが、今も群を抜いてコミュニティの最も重要なジャーナリズムのプロデューサーである」

そして、こんな重要なローカル紙を殺さないために、Duke大の調査チームの一員の言葉を引きます。

「直接、間接の公的資金を供与するという実質的な政策変更を急いでやらなければならない」

これを受けた彼女の結論は悲鳴のようです。

「これは、かっては報道機関の独立性を脅かしかねないものとしてジャーナリズムではデリケートな問題だったが、今や、真剣に捉えなければならない。最近の記事が明らかにしているように、その危機は日ごとに深まっている。ジャーナリズムはこれまで以上に重要なのだ。無駄にする時間はない」

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