記事

【香川ゲーム規制条例】「ゲームは1日60分」で物議醸す日本、学校でのスマホ使用を違法にしたフランスでは何が起きた?

2/2

フランス人生徒・保護者の声は?

ベコフ氏は、結果的にスマホ規制は、生徒たちがスマホと距離を置くことができ、保護者や教師からも支持を得ているという。

「保護者の多くが『子どもが四六時中、スマホを離さないこと』が親子けんかの一番の原因だと言います。そのため、行政の力による今回の規制は、せめて学校にいる間だけでも子どもたちがスマホから離れることができると特に保護者から歓迎されています」

実際に、スマホ規制から約1年後のYouGov(英国のデータ収集と分析の専門会社)が行った調査でも、1030人中、82%のフランス人が「学校でスマホは禁止されるべき」だと答えている。

実際に生徒と保護者は、学校でのスマホ規制をどのように捉えているのか。

スマホ規制が始まったときに中学に在学し、現在パリ郊外で高校に通うアンヌさん(15)は、こう語る。

「以前は、食堂や休み時間も、友達たちは携帯と睨めっこという状況に違和感を覚えていました。今回の法律により、友達と対面して話す機会が増えたので嬉しいです」

「一方で、ゲームやSNSの使用には、良い面もあります。また、学習アプリの使用は学校の成績向上にも繋がります。学業に影響を与えない範囲で、きちんと取り組み方を決めて日常で使用することが大切だと思います」

取材に応じてくれたアンヌさん(15)

アンヌさんの母親で、企業のサイバーセキュリティ部門で働くジュアンヌさんは、家庭ではゲームや携帯電話を使用する際の徹底したルールを設けているという。

「我が家ではスマホの使用は1日90分まで許可していますが、それ以外の時間には娘に読書や家族と話す時間を大切にするよう勧めています。デジタル社会に対応させてあげることは重要ですが、“度を過ぎた使用“をすると、豊かな人間性を育む機会を失ってしまいます。娘が生涯、幸せな人生を送れるよう、親の私には愛情をもって、コントロールしてあげる責任があります」

「でも、残念ながら街中を見渡すと、親自身がスマホやゲーム利用のコントロールができていない人が多い。だから、行政や教育機関の力も借りて、社会が一体となって子育てをサポートすることが重要です」

「子どものスマホやゲームの長時間使用は、プライベートな問題に留まらず、若者の健康、文化の維持、そして未来の社会にも影響する。だから、社会全体の課題だと私は思います」

「今日の10代は、精神的健康において危機寸前」

そもそも、子どもがスマートフォンを長時間使用することは、なぜ危険なのか。米「アトランティック」誌に掲載された、サンティエゴ州立大学心理学教授ジーン・トウェンジ氏の寄稿は、「今日の10代は、精神的健康において危機寸前だ」と警鐘を鳴らしている。

トウェンジ教授は、1995~2012年までに生まれ、スマホやSNS(ソーシャルメディア)と共に育った世代を「iGEN」と呼び、彼らは「スマホの中で生活」し、外に出なくなったと指摘している。

実際に同記事に掲載されている米国の調査によると、友達とほぼ毎日過ごす10代の子どもの数は、2000年~2015年の間で約40%減少し、交流の場はバーチャル空間に変わったという。

さらに精神的にも影響を及ぼすとし、週に10時間以上SNSを使用した8学年生(13~14歳)たちは、少ない時間使用していた人よりも56%多く“自分が不幸だ”と答えたという。

それを示すかのように、2012年~2015年までの間でうつ症状になった10代の女子は50%も増加。さらに、自殺率においては2007年に比べ、2015年では男子が2倍、女子が3倍増加したという。

家庭間でのスマホ使用が、子どもに影響を及ぼす

では、一番身近な存在である家庭では子どもたちのスマホ使用に対しどのように気を付ければいいのだろうか。心理学博士でパリ第7大学研究員のセルジュ・ティスロン氏は、「子どもたちがデジタル機器に惹かれるのは、大人が、それに重きを置いていることに関係している」と、指摘する。

「親子で過ごすとき、小さな子どもは、親が携帯電話をいじることを非常に邪魔だと感じています。それに、子どもと遊ぶときにスマホを使用する親は、短い言葉で返答し、子どもに向ける表情が乏しく、教育的支援が少ない傾向があります。その結果、子どもは放置をされていると感じます」

写真AC

「そして、こうした子どもたちは、顔の表情から他人の感情を理解することが苦手になる可能性があります。結果、対面せずにコミュニケーションを取れる携帯電話を常に使うようになり、悪循環となります」

ティスロン氏は、様々な年代の子どもが健康的にデジタル機器を使用できることを目指し、下記のキャンペーンを提唱している。

3歳まで:子どもがいる部屋に、スクリーンがオンになっているデジタル機器を置いたままにしない

3歳~6歳:スクリーンは共同スペースに置く。3歳には30分、6歳には最大1時間とスクリーンを見る時間を制限する。子どもの個人用に一切デジタル機器は購入しない(タブレット、ゲーム機など)

そして食事中に、子どもを落ち着かせるためや、ご褒美としてデジタル機器を使用しない。

6歳~9歳:子どもにスクラッチ(子ども向けプログラミング言語学習環境)の使用、ストップモーション動画などを作成させてあげる。

9歳~12歳:子どもにスクリーン使用時間の管理を促す。また、インターネットに潜む罠について説明する。

12歳以降:子どもたちはまだ親のことが必要。必要に応じて、サポートしてあげる。
もちろんゲームやスマホの使用には利点が多数ある。しかし、長時間の使用をすることは、子どもの多くの”可能性“を失うことに繋がる。そういったプラス・マイナス両方の影響や、バーチャルと現実世界の間でのバランスのとり方を、明確に子どもや保護者に伝えることが大切だ。そのうえで、家庭、各教育機関、行政が手を取り合って、子どものネットやゲームの正しい使用をサポートすることが必要なのかもしれない。

あわせて読みたい

「オンラインゲーム」の記事一覧へ

トピックス

  1. 一覧を見る

ランキング

  1. 1

    ようやく減りだした東京の感染者数 人流抑制は変異株に有効か

    中村ゆきつぐ

    05月17日 08:31

  2. 2

    ジェンダー問題の被害者?“おじさん上司”にも存在する生き辛さ

    ABEMA TIMES

    05月17日 09:23

  3. 3

    企業でいえば万年課長 大臣の一言でいつでも飛ばされる官僚はつまらない商売か

    ヒロ

    05月17日 10:54

  4. 4

    本仮屋ユイカ 有村騒動で涙…1ヵ月半で破綻した信頼関係

    女性自身

    05月16日 22:58

  5. 5

    「オリンピックは中止すべき」の調査結果は正しくない〜統計はウソをつく

    新井克弥

    05月17日 14:16

  6. 6

    対コロナ戦争の誇り高き勝利国インドを地獄に叩き落とした変異株 東京五輪は本当に可能なのか

    木村正人

    05月17日 09:33

  7. 7

    「IOCは今後、五輪ができなくなる」舛添氏、日本が中止に言及した場合のIOC対応に注目

    ABEMA TIMES

    05月16日 18:36

  8. 8

    石橋貴明の始球式が“神対応”と話題 若者ファンが急増のワケ

    女性自身

    05月17日 13:22

  9. 9

    東京オリンピック 強行しても拭えない「穢れ」の印象

    柴那典

    05月17日 08:16

  10. 10

    ヒートアップする言論、スルーする回答

    ヒロ

    05月16日 10:41

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。