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「連れ去り」を禁止しない日本は違憲・違法という主張の問題点 モラハラ被害を潜在化させてしまう

 このブログでは何度もテーマとして取り上げていますが、離婚を前提とした別居において、それまで監護していた親が子を連れて出ることの是非が、違憲・違法ということで国賠訴訟がまた起こされています。
子の連れ去り規制、「国は未整備」 当事者ら集団提訴へ」(朝日新聞2020年2月8日)

 ハーグ条約を批准した日本で、国内の「連れ去り」が禁止されていないのは二重基準だと主張、子育ては幸福追求権として憲法13条で保障された基本的人権であるというのがその骨子のようです。
 それにしても子育てが基本的人権ですか。実際にもこのような「権利」的な発想なんでしょう。極めて違和感のある主張です。

 親権もそうですが、あくまで子の福祉のためのものとして位置づけられています。そこにあるのは、「権」とはなっていても、その本質は子に対する責任であり義務なのです。

 子育てに生きがいを持つというのは一般的にはその通りだとしても権利ではなく、副次的な効果にすぎません。子の教育に対して国家がどこまで干渉できるのかという観点からは「権利」と位置づける余地はありますが、親権があくまで子のために位置づけられたものという本質は変わりません。

 したがって違憲の主張それ自体、論外と言えます。
 そこをはき違えていることに非常に違和感があるわけです。子を自分の権利の客体という発想だからです。特にモラハラ系の親にありがちなのですが、その考え方の本質は子に対する支配でしかありません。

 さて、別居時において話し合いができるのであれば話し合えば良いのですが、それができる夫婦関係りではありません。特にモラハラ系の夫の元では離婚を切り出すこと自体が困難な場合が少なくありません。

 夫が好き勝手やっていて出て行ってしまったという事案はむしろ幸せとさえいえるくらいです(比較の問題ではないので、それはそれで別の意味での問題はあります。)。

 離婚についての協議など言い出そうものなら、どのように対応されるかわからない、そうした日々の不安の中で生活している人たちにとって、まずは別居しなければ次に進むことができないということは当たり前のことです。
 そのための行政の支援が支援援助センターなどがあるのです。

離婚後に子の監護をしたいと言ったらモラハラ? モラハラ被害の女性を保護せよと言ったら女性をにしている?

 子を連れて出ることも当然です。例えば、母親が乳飲み子を置いて出れますか。常識でわかることです。それまで監護をしてきた親が連れて出るのは当たり前のことであり、これが理解できないような人は、立派なモラハラ人格の持ち主です。ネット上では、自分は被害者だと声高に叫んでいる人たちがいますが、このような人たちの主張(ツイート)をみると、誰もが「やっぱり話し合いでの離婚なんて無理だよね」と想像がついてしまうようなおぞましさがあります。

 別居とは、する側にとっては一大決心のことです。連れ戻されたらどうしよう、別居に失敗したら何をされるかわからない、など不安は常につきまといます。ちょっとでも想像力があれば、誰でもわかることです。
 しかも、一番重要なことはこうしたモラハラ夫は離婚にはまず応じることがありません。

 「自分は何も悪くない! 嫁のわがままだ!」

 離婚調停、離婚訴訟の決着まで同居の継続ですか。子を連れての別居が禁止されると、そうなってしまいます。
 一体、どこまでモラハラなんでしょう。そういった状態で同じ屋根の下での生活など非現実的なことくらいわからないのでしょうか。

 「共同して監護してたんだ!」
とモラハラ夫から常套文句のように主張されます。「主たる監護なんて一体、誰が判断するんだ!」というのも同じ類いの主張です。

 全く同じなんていうこと自体が想定しづらいものであるし、乳幼児であれば通常、母親が監護しており、父親だけでは1日ももたないでしょう。母親が一緒だから何とかなっているだけのことで、しかも通常は日中は仕事でいないのが現実ですし、「完全平等の共同の監護」ということ自体がフィクションでしかありません。

 ところで、「連れ去り」禁止を主張する人たちも「DV」事案だけは例外を許容します。

 「だったらいいじゃない?」
なんて思わないでください。そこでいう「DV」は暴力を伴うもの、さらには有罪立証ができるものに限定されます。それ以外は「DV冤罪」であり、そもそもDVの概念に含めません。

 こうなってくると、自分が連れ出せば、それは禁止された「連れ去り」に該当するのか、ましてやそれに罰則が設けられるとなると、萎縮効果が威力を発揮します。
 もはや別居そのものが不可能になります。

Q 共同養育支援法(旧名称:親子断絶防止法)の「連れ去り」禁止の問題点はどこにありますか。

 ここまでして「連れ去り」を禁止したいのは、離婚そのものを阻止し、モラハラ支配を貫徹したいからとしか理解しようがありません。

 伊藤たかえ議員(国民民主党)のツイートです。

 「ある日突然妻子が消えて絶望」だそうですが、それは違います。連れて出ることとその後の面会交流は全く別のものです。その後に会えないのであれば別の事情があります。

 離婚を前提とする以上、子を連れて出ること自体は、それまで監護してきた以上、当然として考えてもらわなければなりません。

 その後に会えるかどうかは、面会交流の是非も含め、裁判所の手続きにより検討すべきものです。
 連れて出た別居=その後、全く子に会えない
ではありません。

 また、監護もしていないような親が連れて出て別居したとしても、それだけで連れて出た親が親権者(監護者)に指定されるという家裁の運用もありません。

 「連れ去り勝ちではないか」というネット上の主張がありますが、大嘘です。結果、自分が親権者になれなかったことをもって「連れ去り勝ち」を主張しているにすぎません。それを弁護士までもが述べているとしたら問題です。

 まずは伊藤議員も含め、国会議員には家裁実務も含めて、現在のあり方がどのようなものであるかを正確に理解して欲しいと思います。
 一部に声高に言われている「連れ去り勝ち」という運用はありません。

Q 離婚後の親権は、連れ去った側に有利な運用になっていませんか。

 またハーグ条約についていえば、これも問題にはなりません。外国との関係でいえば、その国の制度は異なるという大前提があり、また国外に連れ出すということになると、その影響は大きいので、国内外を別途に考える余地はあるからです。したがって、ハーグ条約を批准したからといって国内において連れ去り禁止を整備しないこと自体が問題というわけではありません。

 いずれにしても国内での別居時の「連れ去り」を禁止してしまったら、取り返しのつかない被害が発生することは間違いありません。
 そこには離婚を切り出せず、生涯にわたってモラハラ支配に屈服させられた配偶者や子の悲劇です。救済手段がなくなるのですから。

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