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IMFの声明が指し示す、日本社会の最重要課題。政治は本気で取り組め‼

桜よりももっと、日本の将来にとって極めて重大なニュースがあったが、その扱いは小さく、そして与野党共にほぼ無視している。

その一つは財政再建先送りの発表(NHK「諮問会議で財政悪化の試算 黒字化は2027年度の見通し示される」)。本来2020年に基礎的財政収支(PB)黒字化がなされるはずであったものが、2025年度に先送りされていたが、今度はそれが2027年度にまたもや先送りされてしまった。理由は税収が想定を下回っていること。

それはそうだろう。元々「計画」とは名ばかりで実現可能性が低い経済成長頼みの願望のようなプラン。名目3%・実質2%程度の経済成長が続くのが前提なのだから、叶うはずもない。そして、そのAプラン以外にBプランは無かったのだから、真剣に達成しようという気は最初から無かったのであろう。

もう一つは、IMFが協定4条によって加盟国と行うサーベイランスに基づく声明が発表されたこと。その中身が重要で、「aging cost」つまり高齢化社会のコストを賄うために「消費税率を2030年までに15%まで、2050年までに20%まで徐々に上げる必要がある」と示唆し、「調整を先送りするリスクは莫大であり、現在の高齢者に恩恵をもたらす一方、将来世代に不利益をもたらす」と指摘している。

さて、先般麻生大臣が、財務金融委員会において所信表明の中で「急速な高齢化等を背景として、社会保障給付費等が大きく増加している中、国民の安心を支える社会保障制度を次世代に引き渡すためにも財政の持続可能性を今後とも維持することが重要」と述べられたが、まさにそのとおり。上記2つのニュースはこの言及に密接に関連し、「桜」よりも「総理のヤジ」よりも重くて大切な問題だ。これらの点について、私に頂いた貴重な10分という時間で、財務金融委員会において麻生財務大臣に質問させていただいた。

先の国会ではF35が一機116億円で高いか安いか、野党の攻撃材料となった。国の予算は細部の合計なので、一つ一つの細部の価格についてこだわるのは当然なのだが、下のグラフを見ていただきたい。

これを見れば一目瞭然、近年公共事業費のみ近年の激甚化する災害対応のため目立つ伸びをしているが、社会保障費以外は、ほぼ横ばいか減少。歳出における真の問題は社会保障費にあり、それ以外については実は予算に与える影響は極めて少ない。

政府参考人によればこの10年の社会保障費の対前年度予算比の伸び率は2.9%とのこと。ちなみに、平成25年度の社会保障費は29.1兆円。3%複利が7年続けば1.22倍になるので、7年後の令和2年度予算は35.5兆円となるはずで、実際、今年の政府案では35.8兆円。予算は社会保障費の圧迫で限界的に硬直化している。

では、この伸びがいつまで続くか。

次に、下の重要なグラフをご覧いただきたい。

日本の未来社会の真の問題点は、人口減少・少子化ではない。高齢者層の人口に占める割合が上昇し、生産年齢人口と拮抗してしまうこと。2050年ころには現在約6割の生産年齢人口が約5割に減少し、逆に3割の65歳人口が約4割まで増大する。当然社会保障の負荷は、増え続ける。現在の3%の社会保障費増加が30年続けば、2.43倍。35.8兆円の社会保障費は87兆円にまで増える。ただし、そこで人口構成の変化は安定する。

したがって、この2050年までをどうやってしのいでいくかが、大問題。30年しかないともいえるが、準備期間が30年もあるともいえるのだ。

同じ委員会で、野田前総理が委員として、団塊の世代が大量に後期高齢者となる2022年問題を触れられたが、それと同じく、あるいはもっと大きな問題として、この2050年問題に政権与党だけではなく、野党も真剣に取り組んでいくべきなのだ。

そのためには、費用負担者である国民に強まりつつある不公平感を是正するために、

①所得税を今の階段状の税制ではなく指数関数的なカーブのものに変えて、本当の高所得者の最高税率を上げる

②法人税に数年前までのアメリカのように3段階程度の緩やかな累進性を取り入れる

などしながら「将来世代への負担先送り」を回避しつつ、「社会保障を次の世代に受け渡す」責務を果たすべきなのだ。

麻生大臣の答弁は、この問題の重要性と深刻さについて十分に理解されていることを示していた。概略を紹介すれば、

「社会保障関係費の予算に占める割合の伸びが債務の累増を呼び、政策の自由度が押し下げられている」、

「給付のかなりの部分を赤字公債で賄っているのは将来世代の負担となっている」、

「次の世代に社会保険などの社会保障制度を引き継ぐため、改革を実現しなければならない。中長期的に日本にとって最大の課題はこれだ、」

との答弁であった。

さて、この問題に対する解として、基本的な選択肢は3つしかない。

1 経済成長に期待を寄せつつ、社会保障費の伸びに合わせてその場しのぎの給付減と利用者負担増を図りつつ、不定期に増税を行う。(現在の政府の立場)

2 MMT的な発想で、財政赤字の増大を気にせず赤字国債を発行して歳入不足を補い、福祉の充実と少子化対策に万全を期しつつ基幹3税(消費税、所得税、法人税)には手をつけない。(国民民主党、れいわ新撰組(消費税は減税あるいは廃止))

3 将来的な人口予測と現実の経済成長を合わせ、社会保障制度を維持するための社会保障制度の負担軽減のための諸策と税収増を2050年までのタイムテーブルを立てて計画的に行う。

最後の3つ目が私の立場で、より具体的には経済成長については近年実績の実質1%程度の成長しか望めないことを前提に、行き過ぎた解雇規制の緩和を図ると共に非正規労働者の待遇改善(正規と非正規の待遇差別を認めない、派遣会社の報酬の在り方を規制(派遣労働者の給料からの搾取を規制)などして労働力の流動性を高め、不公平感の少ない生涯労働を可能とする社会を形成しながら社会保障費支出を削減し、同時に不公平感を解消するために消費税だけでなく、応能負担原則に基づき所得税と法人税改革を図る、というもの。

どれが正解か、現時点で正確に判断することは自然科学ではないので不可能。しかし、時間は限られているし、もっとも合理的と思われる政策を国民的議論の末に選択する方が後に後悔を残さないだろう。

一部野党やリベラル派層は、桜やヤジに関する議論は少なめにして、という声は安倍首相の責任を置き去りにするもので右派層の陰謀的な捉え方をしているがそれは大間違い。

普通の政治的な話にあまり関心のない友人と話すと、たいていはもう桜とかの議論はいい加減にしてほしいと思っている。昔の自社二大政党の時代のように、政治が予定調和のような攻防をしていても、世の中は安定的に成長していく世の中ではないのに、政治が重い現実から目を逸らしてその役割を果たしていないことに誰もが気づいてしまっているのだ。

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