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驚がくの全編ワンカット『1917』劇場で“従軍”すべき理由

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サム・メンデスの『1917 命をかけた伝令』を公開初日に観てきた。第一次大戦中、味方の兵士1600人の命を救うため、伝令に飛び出した若いイギリス軍兵士2人を描いた戦争映画だ。

すでに知れ渡っているとおり、本作は全編ざっと2時間あまりを、ワンカットで表現するという驚くべき手法が撮られている。実際のところ、本当にワンカットで撮ったわけえはないのだが、擬似的にそう見せようとしている。

そうした手法的な特異点があるために、観ているときはいつも以上にカメラワークに気をとられてしまうが、なめらかに動くカメラはまるでドキュメンタリー映画のようである。それが完璧に制御されているというのだから、「目には映らない技術」の厚みを感じざるを得ない。

 撮影については下記のインタビューが興味深かった。

ワンカットがもたらす“従軍”体験

全編ワンカットという手法が鑑賞体験にもたらすもの、それは“従軍”体験だ。

ワンカットということは、観客の時間と、スクリーンの中の若者2人の時間が完全に同期する。かといって、ゲームでいうFPS(一人称視点シューティング)のように、主人公たちの視点から全く外れないわけでもない。ときにカメラから2人ともいなくなる瞬間もある。こうしたカメラワークにより、観客は“3人目”の兵士として、彼らと共に「従軍」しているかのような体験を得ることができるのだ。

それにさらに拍車をかけているのがカメラの高さだ。全編、カメラはほとんどの場面で主人公たちの目線の高さを逸脱しない。「疑似ワンカット」なのだから、どこかでつなぎ目をこしらえてドローン撮影もできたはずだが、本作ではそれをしていない(たぶん)。

ここで思い出してほしいのは、レオナルド・ディカプリオ主演の『レヴェナント:蘇りし者』で、冒頭、先住民族の襲撃を受けるシーンだ。

あのシーンでも、カメラはレオ様たちと同じ目線を維持する。観客はレオ様と同じ目線を借りることで、どこから飛んでくるか分からない弓矢への恐怖を追体験できたわけだ。それと同じで、本作では「彼らと同じ目線の高さ」を獲得したことで、観客はより精度の高い「従軍」体験をすることができる。

ただ一点だけ、ストーリーにひねりがなさすぎる、という点は気がかりで。ワンカットという「形式」を際立たせるためにあえてそうしたのか、「形式」に拘泥しすぎるあまりそうなってしまったのかは定かではない。どちらにせよ、「起きそうなこと」しか起きないのは確かである。

絶対に劇場で観るべきもう一つの理由

それを鑑みても、今年劇場で観ておくべき1本であることに間違いない。

ただ、「劇場で観ておくべき理由」は「劇場ならではの鑑賞体験」だけではない。もし、本作の公開が終わり、しばらくしてVOD配信やレンタルが始まり、家で観るとするだろう。すると我々、誘惑に弱い現代の鑑賞者は確実に映像を一度は止める! スマホを観てしまう! ほかの映画ならまだよい。しかし、本作『1917』についてだけは、「一度も止めずに観る」ことそのものが、作品の“鑑賞要件”にビルトインされている(と、ぼくは勝手に思っている)。一度止めて、ツイッターを確認して、また再生する…みたいなのを繰り返していたら、そもそも観たことにならないのだ。だから「一気観」を強制される劇場が絶対的にオススメだ。

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