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「世界のレアアースの3分の2がある」北朝鮮を米中が取り合うワケ

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北朝鮮をめぐり、アメリカと中国が熾烈な駆け引きを繰り広げている。背景には何があるのか。軍事戦略家のペドロ・バーニョス氏は、「北朝鮮の領土にはまだ開発されていない大量の鉱物が存在し、総価値は10兆ドル以上にのぼるともいわれている。これほどおいしい宝が見落とさるはずはない」と指摘する——。

※本稿は、ペドロ・バーニョス『国際社会を支配する 地政学の思考法』(講談社)の一部を再編集したものです。

2019年6月30日、ドナルド・トランプ大統領と金正恩朝鮮労働党委員長が南北朝鮮の軍事境界線上にある韓国・板門店にて面会。 - 写真=ロイター/アフロ

ドルに致命傷を負わせる覚悟の中国

世界最大級の石油輸入国である中国は、原油の国際取引を人民元建てで行う計画を立てている。人民元は、上海と香港の取引所で問題なく金(きん)と交換可能になるという。それが実現すれば、人民元がアジアにおける石油市場の通貨となり、石油輸出国はこれまでのようにドルを使用しなくてもかまわない。

北京が何年も前から画策してきたこの斬新な計画は、2017年末に実現する予定〔訳注:2018年3月に人民元建ての取引が開始している〕で、そうなると、ロシア、イラン、ベネズエラといった主要な石油輸出国のいくつかは、米国の制裁をかわすことができるだろう。

この動きは、近年、人民元が特別引出権(SDR)〔訳注:国際通貨基金(IMF)が1969年に創設した国際準備資産〕の構成通貨となったことと連動し、国際通貨取引におけるこれまでのドルの覇権に打撃を与えるに違いない。また、こうした動きは、中国と米国の現在の経済対立に照らして考える必要がある。こんなふうに明らかな財政的脅威を突きつけられたホワイトハウスは、いったいどう反応するだろうか?

中国のこの試みが成功すれば、他の国々や市場があとに続く可能性もあり、そうなると、前述のとおり米政府は困難な状況に陥ることになる。

「統一朝鮮」が日本のライバルになる日

北朝鮮は、強い経済体制の確立を狙っていると同時に、現在の政治体制と政府の運営形態をなんとか保ちつづけようと必死になっていると、国際ジャーナリストのロバート・D・カプランは考えている。朝鮮半島は中国北東の海上交通路をコントロールしており、しかもその境界線に位置する渤海には、中国の外洋においてもっとも豊かな油田が存在する。

カプランは、北朝鮮と韓国がひとつになって新しい国家が誕生すれば、それは重要な経済国となるという。なぜなら、韓国は技術力を持ち発展している一方、北朝鮮には天然資源と規律正しく教育された労働力があって、互いに相手にはない強みを持っているからだ。また統一されれば、その人口は、日本の1億2700万人に対し、7500万人となる。

日本政府にとってこの統一はおもしろくないだろう。なにせ、歴史的に日本に不信感を抱く理由には事欠かない統一朝鮮が、日本の手強いライバルとなるのだから。何より、統一朝鮮は、韓国にとっての最大の貿易国である中国の勢力圏に入ってしまう。そうなれば、中国政府と日本政府の対立は深刻化し、日本の軍事力強化に拍車がかかる可能性もある。

北朝鮮の鉱物資源を狙うアメリカ

また無視できないのは、北朝鮮に対する米国の狙いが、現在の平壌をより米国寄りの政府にすり替え、北朝鮮の有望な鉱業界に米国企業の参入を図ることだという可能性だ。

あまり知られていないいくつかの調査によると、北朝鮮の領土にはまだ開発されていない大量の鉱物が存在し、総価値は10兆ドル以上にのぼるともいわれている。北朝鮮に石炭が豊富にあることはよく知られているが、加えてとくに金、マグネサイト、銅、モリブデン、銀、タングステン、バナジウム、チタン、亜鉛、レアアース、鉄、黒鉛といった鉱物が眠っているらしい。

北朝鮮にはレアアースだけでも、世界の総埋蔵量の約3分の2、中国の6倍はあるだろうと推定されている。マグネサイトは世界で第2位、そして下層土には地球上で6番目に多いタングステンが存在すると見込まれる。米国の戦略から、これほどおいしい宝が見落とされているとはとても考えられない。

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