- 2020年02月13日 11:19
アニメ産業のエコシステムを考えるシンポジウムに登壇しました
1/2
左)津堅信之さん 山田太郎(中央) 右)和田丈嗣さん
先週2月6日(木)、在日米国商工会議所(ACCJ)とモーション・ピクチャー・アソシエーション(MPA)共催のシンポジウム『映像産業における日本の競争力向上と国際プレゼンスの強化』に、パネリストとして登壇しました。
私が登壇したのは、パネルディスカッション2「映像産業を支える持続可能なエコシステム」でしたが、モデレーターの津堅信之さん(日本大学芸術学部映画学科講師・アニメーション研究科)、櫻井大樹さん(Netflixアニメチーフプロデューサー)、平澤直さん(アーチ株式会社代表取締役)、和田丈嗣さん(株式会社ウィットスタジオ代表取締役社長)たちと、非常に内容の濃い議論を交わすことができました。
映像産業、特に、アニメ産業を支える持続可能なエコシステムを考える上では、大きく分けて5つの問題をクリアしなければなりません。私は、この5つの問題を中心に発言しました。
1つ目は、産業の利益配分の問題。アニメクリエイターに利益が十分に回って来ていない現状は、早急に解決しなければなりません。アニメ産業を支えるのは、これまでも、これからも、人材です。しかし、生活できないような収入しか得られないのであれば、新しい人材が生まれず、今いる人材も外国や他の産業に流出していってしまいます。
エヴァの庵野監督も、あと数年で日本からアニメクリエイターがいなくなってしまうと危惧しているように、この問題は解決しなくてはならない喫緊の課題です。アニメ産業の規模が2兆円を突破したのに、制作現場に回っているお金はその10%程度と言われています。どうやったらそれを増やすことができるのか、製作委員会方式のメリット・デメリットや新しい方式の可能性を含めて検討を進めていきます。
2つ目は、生産性とインフラの問題。日本のアニメは、伝統的な「手書き」文化がまだまだ根強く残っています。しかし、遅かれ早かれ、世界標準はデジタル作画になっていきます(もしかすると、既にそうなっているのかもしれません)。手書き作画は、HD画質・フルHD画質が精一杯であって4Kや8Kの超高画質に耐えることが難しく、また各国の放送事業等に合わせて必要となる様々な調整がしにくいといった事情があるためです。
一方、デジタル作画は、瞬時に複製をつくってそれを元に新しい作画を作ることができ、また、書き直し(undo)も容易です。そのため、生産性の面からも、デジタル作画へのシフトは必然といえます。やはり、日本のアニメ制作現場においても、早急にデジタル作画対応をしなくてはなりません。
もちろん手書き作画の良さもありますので、全てをデジタル作画にすべきとは考えておりませんが、世界では手書き作画もデジタル作画もできる人材・スタジオが増えており、それらと競争できるだけのインフラの整備と生産性の向上は避けて通れません。私も、立法、行政の面で後押しできることを、全力で進めて参ります。
3つ目は、キャリアパスの問題。アニメ産業のキャリアとしては、作画、制作、色彩、美術等さまざまなものがありますが、フリーランスは一つの業務を受注し続けることが多く、多様なキャリアを積むことは困難です。また、同種業務内でのキャリアアップについても、長い低収入・長時間労働の時期を経る必要があり、容易ではありません。
アニメ制作会社の正社員であれば、少しは事情が違うのかもしれませんが、赤字の制作会社が多い現状では、従業員が希望するような働き方を実現できるところはそれほど多いとは思えません。日本のアニメ産業を支える持続可能なエコシステムをつくり上げるうえでは、アニメーターという職業が、将来に不安を持たなくてよいもの、未来に希望が持てるものにしていくことが何よりも重要な前提となるはずです。私が進めているフリーランス政策の中でも、この問題についてしっかりと取組んでいきます。