WSJは、Federal Agencies Use Cellphone Location Data for Immigration Enforcement(連邦政府、スマホの位置情報を移民の取り締まりに活用)の中で、トランプ政権がスマホのアプリで得た位地情報を移民の取り締まりを強化するため、お金を払って民間のデータベースを活用していると報じています。
アプリは、ゲーム、天気、ネット通販などで利用者は位置情報をONにした場合にアプリ側は位置情報を把握できるとしています。
これを使って、国土安全保障省は、不法移民が拘束された際に先立ってどこにいたかを確認したり、メキシコとの国境沿いの荒野など不自然なところに携帯電話を使った場合の情報を得たりしているということです。
国家が直接、位置情報を得ているわけではなく、民間企業からビジネスの一環で得ているため違法ではないという専門家の見立てを示していますが、「これは民間の監視(commercial surveillance)が国家に浸透している」という反論も紹介。
政府は、2017年からモバイル広告大手のGravy Analyticsの関連会社のVenntelから位置情報を購入しているということです。政府は、購入した位置情報は、基地局から得た情報は含まれておらず、個人を特定する情報も入っていないと説明。
携帯電話会社が保有する基地局のデータは電話を特定することができ、最高裁判所で特別の保護が必要だという判断が出ているとしています。
契約によると連邦政府はVenntelから位置情報を購入。さらに関係者の話として、Venntelは数百万のスマホ位置情報を広告会社に販売している企業から購入したとしていします。これらの位地情報は、消費者に近くのレストランや店の広告をフェイスブックなどで提供するためにデジタルマーケティング会社が一般的に使われているそうです。
政府はこうしたマーケティング用のデータを外国での諜報活動には使っているということです。
New York Timesは、このWSJを引用する形でThe Government Uses “Near Perfect Surveillance” Data on Americans(政府は、アメリカ国民を対象に“ほぼ完璧な監視”データを活用)という社説を掲載しました。
この中で最高裁判所のロバーツ長官が2018年に「政府が携帯電話の位地を掌握するとほぼ完璧な監視となる。それはあたかも電話の利用者にGPS機能つきの監視端末を足首につけたのと同等だ」として、政府が令状なしに基地局の位置情報を入手してはならないとする判決を下したことを指摘しています。
ただし、今回は、政府が使ったのは通信会社から得た情報ではなく、位置情報を取っているアプリ会社の情報で、天気予報アプリやクーポンを提供するアプリなど、利用者がよくわからないままに承諾したことで、政府がその位置情報を購入できるとしています。
政府が最高裁の判断を迂回するために「国家監視主義を未完企業にアウトソースしている(outsource the surveillance state to commercial entities)」と表現。
香港で政府による顔認証カメラが多用されたように、アメリカで現在は不法移民に向けられている戦術がこのままでは社会で広く使われ、取り返しがつかなくなると批判しています。
これはWSJのすっぱ抜きでしたがNew York Timesは、Clearview’s Facial Recognition App Is Identifying Child Victims of Abuseの中で、アメリカの捜査当局がClearviewという顔認証のスタートアップの技術を使って、性的犯罪の被害者を動画や画像から特定していると伝えています。
このスタートアップは、Hoan Ton-That氏(31歳)が創設し、30億の画像をデータベース化していて、「プライバシーとは名ばかりとなった」としていて、フェイスブック、リンクイン、ツイって-、ユーチューブなどは、画像を入手しないよう、さらにこれまでに得た画像を消去することを求めたということです。