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  • 東龍

「いきなり!ステーキ」社長による3度目の張り紙がダメな3つの理由

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犠牲になっている空間とスタッフのコスト

原価はあくまでも食材に関するコストですが、飲食店の経営において、食材と並んで大きなコストは人件費です。

原価率はあくまでも全体の売上に対する割合なので、原価率が高くなると、当然のことながら、他の割合が低くなります。飲食店は、店に訪れて食事するという体験を提供しているだけに、その空間やサービスも非常に重要であることはいうまでもありません。

食材費が50%と通常よりも高くなっていることは、反対にいえば、空間やサービスにかけるコストの割合が少ないということになります。

確かに、「いきなり!ステーキ」はファストフードという位置づけなので、空間とサービスはファインダイニングに比べれば重要ではないでしょう。

しかし、やはり日本人にとってステーキは日常的に食べるものではなく、ある程度の高揚感を伴う高級料理であることは否めません。

そうであれば、立ち食いや窮屈なテーブル間隔で空間を犠牲にして賃料を抑えたり、アルバイトを中心にして人件費を削減したりすることは、逆にマイナスになってしまうでしょう。

「ステーキとワインを楽しめるスタイルのお店」というコンセプトを掲げており、ワインにも力を入れているのであれば、ソムリエがいなければ説得力を失ってしまいます。しかし、専門職であるソムリエは、アルバイトで簡単に集められる人材ではなく、給料も高いです。

日本ではただでさえ、飲食店における空間のコストやサービスを行うスタッフの人件費が必要であると理解されていません。そのため、飲食業界に従事する人々の地位や収入が低くなっているのが問題となっています。

したがって、空間やスタッフなどのコストを犠牲にしているにもかかわらず、原価率の高さだけを誇ることに危惧を感じているのです。

客には関係のない利益の上げ方

主張の中には、薄利多売によって成り立っているので、たくさんの客に来てもらわなければならないということも記載されています。原価を含めたコストが高くて薄利なので、多売によってしか、存続していけないというのは、確かにその通りです。

ただ、飲食店はもともと営業利益率10%以下であり、どこも薄利多売。しかも、低価格をウリとするようなチェーン店の場合であれば、営業利益率が10%を超える上場企業は数えるほどしかありません。

したがって、コストが高いことは理解できますが、「いきなり!ステーキ」だけが薄利多売を行っているわけではないので、あまり説得力がないように思います。

客は外食する際に、薄利多売をしているから訪れているわけではなく、原価率が高いから訪れているわけでもなく、営業利益率が低いから訪れているわけでもありません。

ただ単に、支払ってよいと思える金額で食べ飲みしたいものがあるから、飲食店に訪れているだけです。

ファインダイニングは、ワインをたくさん飲んでもらえると儲かりますが、だからといって、ソムリエから「ワインを飲んでもらうことで成り立っているので、たくさん飲んでください」といわれたら、おいしくお酒を飲むことなどできないでしょう。

その飲食店がどのようにして儲けているのかは、客に関係ありません。なぜならば、ビジネスモデルを開発したり選んだりするのは、飲食店の側であり、客には一切関与しえないことだからです。

飲食店の業態に合わせた戦略を立てることは必要ですが、それを、客の側に立った食体験に落とし込むことができないのは、提供側の怠惰であると感じてしまいます。

外食産業の発展と地位向上

一瀬氏は料理人出身の創業社長なので、自社が展開する店舗に対する愛情が深く、その強烈な発言がよくメディアに紹介されます。

個店のファインダイニングでも、独特のこだわりや自己主張を有するオーナーシェフは少なくないので、一瀬氏だけが特別変わっているわけではありません。

ただ、「いきなり!ステーキ」はもう個店ではなく、大きな影響力を与える立派な上場企業です。

一瀬氏は耳目を集める存在であるだけに、自分たちだけが優れていることを盲目的にアピールするのではなく、どのようにして客が素晴らしい食体験を得られるかについても考えて言及し、その結果、外食産業の発展と地位向上を進めてもらえると、なおよいのではないかと思います。

※Yahoo!ニュースからの転載

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