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夜間定時制高校の生徒に、ホームレス状態になった体験談はどう受け止められるか―大阪府立桃谷高校へのビッグイシュー出張授業レポート

ビッグイシューでは、ホームレス問題や活動の理解を深めるため、教育機関や各種団体などに出張して授業をさせていただくことがあります。
今回訪れたのは、夜間定時制高校である大阪府立桃谷高等学校多部制単位制Ⅲ部の「人権ホームルーム」。卒業を控えた4年生20名ほどが集いました。
 夜間定時制高校では、学齢期に様々な事情により学校で学べなかった年配の方々や、全日制の学校に通っていたけれども中退してしまい、再チャレンジしている若者たちなど多様な人々がともに学んでいます。今日の授業には仕事帰りにかけつけた方もいらっしゃいました。


先生たちが作った授業案内

自信の取り戻しの積み重ねが、未来につながる

まずは、ビッグイシュースタッフの吉田耕一が、人がホームレス状態に陥っていく過程を説明します。「失職することで、家族とのつながりを失い、家を出ていくことになり、お金もなくなって、最後にはホームレス状態に陥る。『なぜそこから這い上がってこないの』という人もいますが、ホームレス状態に陥った時には、目の前にこれだけ高い壁が立ちはだかっているんです」

「就職活動をしていても、何度も面接で落とされると自己肯定感が低くなりますよね。だから僕たちは、あえて販売者にマニュアルを押しつけません。アドバイスはしますが、自分たちで工夫をすることで売り上げが上がり、うまくいったら嬉しいじゃないですか。そういうちょっとした『自分はできる』という自信の取り戻しの積み重ねが、未来につながると信じてやっています」

 人生経験を積まれてきた年配の生徒さんたちは、同意を示すようにうなずきながら話を聞いておられます。


話に聴き入る生徒の皆さん


ギャンブルによる借金がかさみ、家族との縁も切れる

 続いて、講師である販売者・Mさんの登場です。Mさんは大阪出身。男きょうだいが多く、小さい頃はご飯の取り合いが激しかったと懐かしそうに振り返りました。

 中学の時に数学の授業でつまずいて以来、勉強に興味が持てなくなり、卒業後は就職。電気工事士の見習いや建築のアルバイトに従事します。

「当時は、仕事は教えてもらうものではなく、見よう見まねで真似て学ぶものでした。気性の荒い人も多く、仕事はけっこう辛かったです」とMさん。23歳の時、パチンコにはまってしまい、軽い気持ちで手を出した闇金の借金が気づくと200〜300万円になり、家を追われるように出ました。

以来、日雇い労働者として働いてきましたが、30代に入ると途端に「仕事がない」と断られる日々。仕方なく帰阪するものの、かつての借金トラブルで家族との縁は切れてしまっています。行く当てもなく途方に暮れていた時に、「ビッグイシュー」を知りました。

半生を語るMさん(左)



 ギャンブル依存症の時期もあったMさんは、お金が入るとすぐに使ってしまう習慣がなかなか抜けきりませんでした。しかし現在はビッグイシュー基金のサポートもあり、お金の管理ができるようになってきたと語ります。「これまでの人生は友人もおらず、いっときの感情で短絡的に物事を決めてきました。これからは、周りの人とも相談しながら、感情的に決断を下すことはしないでいこうと思っています」

アンケートには、Mさんの体調を気遣う声も

 授業後、生徒さんたちのアンケートには、家族との縁も切れてしまうギャンブル依存症の怖さを知ったという声や、今もネットカフェで寝泊まりするMさんの体調を気遣い、「身体に気をつけてがんばってください。無理せずに」「駅で見かけたら買わせてもらいます」という言葉が記されていました。人生経験を積まれた生徒さん方の「あたたかいまなざし」が、行間からにじみ出ていました。

卒業後の人生の視野が広がるようにーーー先生方のお話

授業を企画した村山拓磨先生は、灘中学校での出張授業の記事でビッグイシューのことを知ったと言います。

授業を企画した村山拓磨先生



「卒業年度の4年生対象の授業でしたので、卒業後の人生において少しでも視野が広くなればいいなと思って企画しました」。そして、「自分たちにできることは少しかもしれませんが、困っている人がいたらできることをして助けてあげてほしい。定時制高校も様々な人が集い『社会の縮図』のようですが、皆で生きている社会だからこそ、そういう助け合いの気持ちを持ってほしいなと思っています」

また、稲垣靖准校長も村山先生からこの企画趣旨を聞き、ぜひ実現したいと思われたとのこと。「若い生徒がこれから生きていく中で、卒業して社会に出てうまくいかないことがあっても、いくらでもやり直しができるというメッセージを受け取ってほしいですね」と語りました。

稲垣靖准校長



(写真と文章:八鍬加容子)

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