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国会リポート 第244号 2012/7/15

政府の 2030年における電源比率の選択肢が発表されました。その中で原子力電源比率をゼロとするか、15%とするか 20 - 25%とするかの 3択が示され、「大衆討議」にかけられています。

聴衆を集えば原発反対運動派は大動員をかけますが、一方賛成派が動員をかけた途端に「やらせ」の批判を受けます。

賛成側の人も反対側の人もバランスよく人を集めなければ正確な議論にならないにも関わらず、会場が反対運動家に占められるのは目に見えています。

そもそも政府が自分で泥を被らず、大衆討議にかけるというやり方は民主的なように見えて実は責任放棄でしかありません。つまり大衆討議方式ではどういう結論が出されようとも、それは国民の皆さんが選択した結果なんだから、それによって将来どんな不都合が生じようと政府は「俺のせいではない」という論法になります。

選良たる国会議員は日本の将来の国益にとって大事だと信ずることは身を挺して国民を説得していかなければなりません。

国民にアンケートを採ってその多寡で政策を決定していくのであれば、それはアンケート政治であり、国会も政府も必要ありません。アンケート庁と政策実施機関だけあればいいわけです。

『歴史が判断する』という言葉は、今は国民に理解されていなくても将来国益に適うことに対してどれだけ政治家が覚悟を決められるかを意味します。

仮に脱原発を選択するのであるならば代替エネルギーを具体的にどういう形で、どのくらいのコストで、そしてどれくらいの国民負担で進めていくかを赤裸々にユーザーたる国民に示していかなければ無責任です。

政府が示した 3案では再生可能エネルギーを 30 - 35%に高めていくとされています。現状は水力が 8%、新エネルギーが 1%ですからダムを増設することが不可能という前提に立てば 1%の新エネルギーを 22- 27%にしていくということを意味します。

しかも 1%の新エネルギーのうち内訳はバイオ (黒液・ 廃材) 0.3%、太陽光 0.2%、風力 0.4%ですから、それらを 22 - 27%に高めていく具体策は 20年では不可能です。

原発 1基を太陽光に置き換えれば山手線の内側の全ての面積が必要です。広大な土地は山間地にしか残されていません。そこから引いてくる高圧線の設置や高圧線が通る地域との調整も必要になります。

それらを含めた大規模プラントの一施設の設置には 10年かかると言われています。それ (1 - 2万kW) を何千基も作るとなると気の遠くなるような作業です。ですから 35%を占めるような比率は物理的に不可能だと思われます。

加えて、お天気頼みの風力・太陽光には他電源と異なり周波数安定化措置が必要となります。

このコストが発電設備と同額掛かると言われています。つまり旧電源と太陽光を比較すれば 8円の発電コストが 10倍の 80円以上になる計算です。このコストは国民が負担しなければなりません。

新エネルギー先進国ドイツでは高額全量買取に国民経済が耐え切れず価格を下げ、ついには全量買取を放棄しました。スペインも然りです。

そしてそのドイツは太陽光は 1.1%、風力は 6.6%で現在も 23%を原子力で賄っているという事実です。(2009年現在)

原発は止めろ。太陽光は増やせ。天然ガスも増やせ。料金は上げるな。という選択肢はありえないということを政府はきちんと国民に説明すべきです。

加えて原発は動いていようと止まっていようとリスクは変わらないということもきちんと説明すべきです。

現在日本の足元を見て原発の技術者が外国にどんどん引き抜かれています。周辺国で日本海や東シナ海沿いに原発が増産・林立され、一方で日本の原発の面倒を見る技術者がいなくなる、そんな悪夢だけは食い止めなければなりません。原発の安全性を高め最低限の原発は稼働し、新エネは技術開発の行方を見ながら時間軸で国民負担を抑えつつ少しずつ導入していく方法しかありません。

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