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"現存最古のコンビニ"がセブンではなくセコマである理由

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現存するコンビニチェーンの中で最も古い店舗が札幌市にある。北海道のローカルコンビニ「セイコーマート」は、酒類を中心に扱う卸業者によって誕生した。中堅コンビニが大手に吸収されていくなか、セコマはなぜ業界王者・セブン-イレブンと互角に渡り合えるまでに成長したのか――。

※本稿は、梅澤聡『コンビニチェーン進化史』(イースト新書)の一部を再編集したものです。

2019年4月12日、札幌市中央区のセコマの店舗。運営手法は大手コンビニとは大きく異なる - 写真=北海道新聞社/時事通信フォト

現存する最古のコンビニを開いたのは酒類の卸業者

現存するコンビニチェーンの中で、現在も営業する最も歴史のあるコンビニ店舗が「セイコーマートはぎなか店」である。酒類中心の食品卸、丸ヨ西尾の社員だった赤尾昭彦(あかおあきひこ)が、取引のある食料品店をコンビニに業態転換させたのが始まりだ。1971年8月、セブン-イレブン豊洲店の三年も前に、北海道でコンビニが誕生していることになる。

赤尾さんは、スーパーカブに乗って店にやってきて、棚を見ながら補給する商品を手帳に書いていました。翌日には商品が配送されてきましたね。そうこうしているうちに、赤尾さんの力を貸してもらってタバコや酒の免許が下りたので、71年に私(筆者注:1号店オーナー、荻中末雄)が32歳のときに『コンビエンスストア はぎなか』の看板を出して衣替えしました(「リアルエコノミー」2010年12月29日配信)。

これより赤尾は、セイコーマートの実質的な創業者としてチェーン化に邁進し、2016年に他界するまで同社の発展を支えてきた。

なぜ、これほど早くコンビニ事業に着手したのであろうか。その理由は、主要な取引先である食料品店の将来に危機感を抱いたからだ。当時、全国に70万軒あった零細な食料品店の近代化が、国の政策として浮上していた。

同様に丸ヨ西尾と取引の多かった酒販店も、家族経営からの脱皮が迫られていた。売上全体の中で配達が占める割合が高く、生産性の低さが課題であり、当時も人材難と後継者不足が深刻化していた。一方のスーパーマーケットは安売りを掲げて急成長している。いずれ「内地(本州)」から総合スーパー勢力が進出してくるのは、目に見えていた。現にダイエーは73年に、イトーヨーカ堂は76年から、北海道への進撃を開始している。

アメリカで見たコンビニのレイアウトを手書きで写し取った

もう一つの理由は、中堅の食品卸である丸ヨ西尾自身の危機感であった。国分など大手総合卸が中小問屋の系列化を進め、総合商社も卸売りの各段階に介入を始めていた。スーパーマーケットが勢力を拡大すると、一社による大量販売が可能となり、メーカーとの直接取引も増えていく。中堅の卸売業にとって、メーカーと小売をつなぐ中核的な機能を果たすことが、この先も続けられるのか不安があった。

そこで浮上したのが、コンビニ業態によるフランチャイズ・システムの導入であった。すなわち卸売業がチェーン本部となり、酒屋を主とする中小商店が加盟店となって、双方の経営を安定化させるというものだ。

セブン-イレブン、ローソン、ファミリーマートは、大規模小売店舗法による出店規制がかかる中、グループの新規事業としてコンビニをスタートしたのに対して、赤尾のセイコーマートは、自社の存亡と取引先支援という確固たる目的があった。

71年の一号店から酒販店の業態転換を推進し、74年に「セイコーマート(現セコマ)」を設立する。当時は取締役本部長の肩書であったが、実質的には赤尾自身が立ち上げた会社である。

“取引先の近代化を図らないと、卸は駄目になってしまう”という危機感から、既にコンビニチェーンが確立していた米国に渡り、通訳を雇ってオーナーや店長の話を聞くなどして、チェーン理論の研究を重ねた。米国のコンビニのレイアウトを手描きで写し取るなどして一号店を開設した(『月刊コンビニ』2016年2月号)。

製造から物流、販売が一貫したシステムを確立した

会社設立時のセイコーマートの店舗数は14。セブン-イレブンは78年に北海道に進出し、同年サンチェーン(後にローソンと経営統合)も出店、82年にサンクスが進出する。

セイコーマート設立から10年後の84年9月末時点で、北海道内のコンビニ店舗数は、セイコーマート152店、セブン-イレブン145店、サンクス57店、サンチェーン56店となっている。以降、道内においては、セブン-イレブンがセイコーマートに肉薄する関係が続いていく。それは両チェーンが1000店舗を超えた現在も同様である。

赤尾はアメリカのチェーン理論を研究する中で、システムの重要性に気がついた。製造から物流、販売にいたる一貫したシステム、それを支える情報システム。30坪の小さな売場と少人数の運営態勢。客の目に映るコンビニは、家族経営の食料品店を洗練させた程度の印象だろうが、コンビニを成立させるには盤石な仕組みが必要とされるのだ。

自社製造体制を確立させるために、79年にはグループ内に食品会社を立ち上げて、惣菜の製造を開始し、その後は水産加工会社や乳業会社などを傘下に収めて、原材料の確保、および商品の製造に尽力した。物流網の整備にも早くから着手し、90年代初めにはすでに全道内の配送体制を築き上げている。

情報システムについては、店舗にストア・オートメーション・システムを早期に導入し、発注から製造、仕入れ、配送、納品までの流れを管理、加盟店が販売に専念できる体制を整えると同時に、チェーン本部としてマーチャンダイジングの精度の向上に努めている。

大手に先駆けて始めた店内調理「ホットシェフ」

赤尾は1984年に受けた取材で、次のように答えている。

売れ筋データは、あくまでも売れた筋なのです。CVSにとって必要な情報は、売れた商品の情報ではなく、明日これから何が売れるのかなのです。データからトレンド(傾向)を的確に読み取り、それに対応できるかどうかです(『食品商業』1984年12月号)。

過去に売れた商品を追いかけるのではなく、未来に売れる商品をどう見つけるのか、存在しなければ自分たちでつくるのか。特に回転の速いコンビニの商品は「鮮度」が命である。過去の商品が並ぶ売場では、安売りのスーパーマーケットと差別化ができない。コンビニの業態特性を、赤尾はいち早くつかんでいた。

そして、特筆すべきは「ホットシェフ事業(店内調理事業)」だ。94年に立ち上げた事業で、赤尾が手塩にかけて育てたカテゴリーである。この時代、おにぎり、弁当、焼き立てパンまで、本格的な主食を店内調理する大手チェーンは存在しなかったが、赤尾は店内で一から調理をして、すべての対象店舗で同じ味と仕上がりを求めた。当時は大変に難しいチャレンジであった。

この店内調理には、北海道ならではの意義がある。北海道には飲食店に不自由する町や村が多く、そうした過疎地(かそち)にもセイコーマートは出店している。飲食店が存在しない地域にも店を出しているほどだ。

過疎地ではイートインスペースが飲食店として機能

イートインスペースを備えているセイコーマートには、地域で数少ない、あるいは唯一の飲食店として機能している店もある。比較的長い時間、座って食事ができる施設は、住人にとって心強い存在となる。現在は、ホットシェフ事業の売上だけで年間150億円を超えており、道内の外食産業においてトップの地位を確立している。

ヒントはアメリカの視察から得た。80年代にフィラデルフィアのミニ・スーパーを視察した際、店の真ん中に小さなテーブルが置いてあり、そこで若者たちが店内で購入したパンを食べ、牛乳を飲んでいる光景が赤尾の目にとまった。そこにイートインスペースと店内調理のヒントがあった。ちなみに牛乳についても、後に道北の広大な牧草地を生産拠点とする「とよとみ牛乳」を、自社専用商品として全店に供給するにいたっている。

取引先への支援、中堅卸売業の成長戦略、アメリカ視察、製配販一体のサプライチェーンづくり―ローカルのコンビニが、総合スーパー勢力による大手コンビニチェーンに敗れていく中、セイコーマートは北海道でセブン-イレブンと互角に戦っていく。

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