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機密情報ネットワーク「ファイブ・アイズ」――日本、韓国、フランスと連携 - 平井和也 / 人文科学・社会科学系の翻訳者(日⇔英)

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1月26日(日)に共同通信が、アメリカ、イギリス、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドという英語圏5ヶ国の機密情報ネットワーク「ファイブ・アイズ」に、新たに日本、韓国、フランスを加えた「拡大版」の枠組みが発足した、というニュースを報道した。この共同通信の記事では、「中国へのけん制をにらんだ情報共有の枠組みに発展させる構想もあるという。米国は英語圏5ヶ国に友好国を加えた「ファイブ・アイズ+(プラス)」の拡大枠組みを通じて対抗することを目指している」と報じられている。

「ファイブ・アイズ」といえば、1946年に、当時のソ連と東欧の衛星国に対する監視を主な目的として英米間で機密協定が交わされ、後にカナダ(1948年)、オーストラリア、ニュージーランド(両国とも1956年)が加わって結成された英語圏5ヶ国の機密情報共有ネットワークだ。そして、2010年に英国政府通信本部(GCHQ)が創設文書の一部を公開したことで、初めて公式に機密解除となり、その存在が公に明らかとなった。結成以来、ずっとこの英語圏5ヶ国の枠組みを維持してきたが、今回そこに日本、韓国、フランスとの連携を図ると発表した。筆者は、インテリジェンスの歴史の中で注目すべき展開として、このニュースに注目している。

まずは、英字新聞『ジャパンタイムズ』がこのニュースについて報じた概要を、以下にご紹介したい。

北朝鮮と中国の脅威に対抗するための「ファイブ・アイズ+(プラス)」の枠組み

英語圏5ヶ国の情報共有同盟「ファイブ・アイズ」が、北朝鮮の挑発を抑えるためにフランス、日本、韓国とも連携する、と政府筋が1月26日(日)に発表した。この枠組みの拡大によって、オーストラリア、カナダ、ニュージーランド、イギリス、アメリカによって構成される同盟に、新たな3ヶ国を加えて、現在日米韓が進めている北朝鮮の弾道ミサイルの分析以上の情報活動を強化していく考えだ。

日米両国の政府筋によると、8ヶ国の当局者が2019年秋に会合を開き、北朝鮮に関する最良の情報収集方法について議論したという。また、新たな3ヶ国との連携によって、これまでの情報ネットワークを、中国の軍事力増強に関する情報交換を円滑に進めていくための情報ネットワークへと発展させる考えもあるという。

アメリカは、やはり中国が勢力を増している、宇宙およびサイバー空間のセキュリティを含めた新たな領域における脅威に対抗するために、友好国を加えた「ファイブ・アイズ+(プラス)」の枠組みを構築しようとしてきた。

ここまでが『ジャパンタイムズ』が報じた概要だ。

次に、英BBC、米PBS NewsHourの関連報道に基づいて、「ファイブ・アイズ」の歴史について、以下に振り返ってみたい。

最初に英BBCの解説記事をご紹介する。

「ファイブ・アイズ」の歴史

「ファイブ・アイズ」は、第二次世界大戦中の英米間の緊密な情報連携と、特にブレッチリー・パーク(訳者註:第二次世界大戦中に数学者アラン・チューリングをはじめとした所員が暗号解読を行った英国政府暗号解読施設があった敷地)での暗号解読活動で、ドイツと日本の暗号を解読した経験から生まれた。暗号解読に当たった所員は協力して技術的な課題を克服し、世界中の通信を傍受することに大きな役割を果たした。

この経験から生まれたのが、1946年3月に調印された最高機密情報共有ネットワークである英米情報伝達協定(後にUKUSAと改名)だ。この協定の詳細については数十年間機密指定とされてきたが、2010年に両国がファイルを公表したことで、ついに明らかになった。

冷戦が始まってすぐに英国政府通信本部(GCHQ)と米国家安全保障局(NSA)が誕生し、機密情報ネットワークが冷戦時代の極めて緊密な協力関係の基盤を形成した。これこそが英米間の「特別な関係」として知られるものの核である。この機密クラブはカナダ、オーストラリア、ニュージーランドという英語圏3ヶ国にも拡大され、「ファイブ・アイズ」として知られるようになった。

このネットワークでは、情報を共有し、お互いに加盟国間でのスパイ行為は行わないとう原則がある。英米のヒューマン・インテリジェンス(ヒューミント)組織、すなわち、米国中央情報局(CIA)と英国秘密情報部(MI6)は、許可がない限り相手国で活動することはない。しかし、CIAとMI6は情報を共有するが、通信内容を扱うシグナル・インテリジェンス(シギント)を専門とするGCHQとNSAほど緊密に連携してはいない。UKUSAの下で、これらの情報機関はほぼすべての情報を共有しているが、許可なくお互いに相手国の国民を監視対象とすることはない。

ところが、エドワード・スノーデン氏がリークした文書によって、情報が機密クラブ以外の国と共有された場合には、保護の範囲が拡大されることが明らかになったのだ。英紙『ガーディアン』の報道によると、NSAとイスラエルの間の協定の下では、NSAはオーストラリア、カナダ、ニュージーランド、イギリスとの協定によって、米国人に適用されるのと同様の手続きと保護措置を用いて、英国人、豪州人、カナダ人、ニュージーランド人に関連した情報を保護することが義務づけられている、ということをイスラエルは認識しているという。

スノーデン自身の存在そのものが、ある意味では、この機密ネットワークがいかに緊密なものであるかを表わしている。米国人であるスノーデンは、英国側の何千ものインテリジェンス文書にアクセスすることができたのだ。そのため、GCHQは機密ネットワークが緊密で、そのネットワーク内が開放的であるがゆえに、不自然な形で犠牲者となったのだ。

次に、米PBS NewsHourは、次のような解説を載せている。

「ファイブ・アイズ」は、第二次世界大戦中に、英米が情報分野での協力によって創設した英語圏5ヶ国によって構成された機密情報ネットワークだ。その始まりは、1946年に英米間で交わされた7ページの機密協定「英米情報伝達協定」(後にUKUSAと改名)だった。結成当時はソ連と東欧の衛星国に対する監視を主な目的としていたが、後に1948年にカナダが、1956年にはオーストラリアとニュージーランドが加入し、「ファイブ・アイズ」となり、世界的なネットワークを張り巡らせていった。

加盟国は情報共有、特に通信内容の電子監視の誓約を結ぶ一方で、加盟国間での相互監視は行わないという約束を交わした。この機密クラブが存在しているようだという気配を感じさせる報道が時々流れることはあったが、その存在が公式に認められることはなく、2010年に英国政府通信本部(GCHQ)がその創設文書の一部を公開して初めて機密解除となり、その存在が公に明らかとなった。

この機密ネットワークのメンバーとなるメリットは絶大だ。アメリカは世界的な衛星監視能力を有しているが、ネットワーク全体はそれぞれの加盟国の地域的な専門能力からの恩恵を享受している。例えば、オーストラリアとニュージーランドは極東地域における強みを有している。加盟国間で情報の責任分担を行っており、お互いに自国にとって難しい分野を補完し合っている。

5ヶ国間で情報を容易かつ迅速に共有することができるため、より迅速に個々の点と点とを結び付けることができ、共通の言語と法制度、文化も重要な意味を持っている。が、なんといっても全面的な信頼関係が大きい。そのため、加盟国同士で指導者や当局者の電話を盗聴しないというルールがあり、その根底には、指導者同士の議論は完全な誠実さの下に行われるものだという信念があるからだ。

しかし、ネットワークの加盟国同士が相手国の国民に対してスパイ行為を行わないという合意が成立しているかどうかは曖昧だ。米国側の当局者は、それも協定の一部を成していると言う。が、英国メディアは、実際には「ファイブ・アイズ」の加盟国同士でスパイ活動を行っており、情報機関が自国民をスパイすることを防止する法律をかいくぐるための情報を共有していると報じており、この情報はエドワード・スノーデンのリークによってさらに詳しい内容が明らかになっている。

以上が、「ファイブ・アイズ」の歴史についての解説のまとめだ。

次に、中国に対抗する動きを加速させている「ファイブ・アイズ」のここ数年間の動向を追ったロイターの報道に基づいて、その要点について以下に見てみたい。

中国に対抗するための連携を強める「ファイブ・アイズ」

オーストラリア、イギリス、カナダ、ニュージーランド、アメリカによって構成される世界を主導する情報共有ネットワーク「ファイブ・アイズ」は、2018年の始めから中国の外国での活動に関する機密情報を、考えを同じくする国と交換している。「ファイブ・アイズ」のドイツや日本との協力強化は、中国の影響力工作と投資に対する国際的な戦線が広がっていることを表わしている。

ある米国政府当局者は、主張を強める中国の国際的な戦略に対する対応策について、考えを同じくする同盟国と頻繁に協議しているとし、協力に向けた最良の行動とさらなる機会について詳細な協議を行っていると語った。「ファイブ・アイズ」の協調強化は、トランプ政権が秘密裏に中国に対抗するための非公式の連携努力を進めていることを示している。

政府当局者によると、主に二国間の会談が気づかれないように行われており、そこにはフランスも含まれているという。ただ、ドイツや日本などの「ファイブ・アイズ」以外の国が会合に招かれたと示唆する者はいない。しかし、8月下旬にオーストラリアのゴールドコーストで開かれた「ファイブ・アイズ」の会合後に出された声明は、協調がより緊密になっていることをほのめかす内容で、「世界的な連携」によって外国妨害活動に関する情報の共有を加速させる考えであることを示している。

影響を受けやすいテクノロジー企業への中国の投資を制限し、習近平政権下で強まる外国政府・社会への浸透工作に対抗するための国家的な措置が次々と打ち出される中で、国際的な協調が加速している。2017年12月にオーストラリア政府は、中国の影響力に対する懸念から、外国のロビー活動と政治献金に関するルールを厳格化する新たな法案を明らかにし、国家反逆罪とスパイ活動の定義も拡大した。アメリカも特定の外国投資を封鎖する権限を政府に与える外国投資リスク審査近代化法(FIRRMA)を制定した。

以上がロイターの報道のまとめだ。

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