記事

アイヌ民族との共存 アイヌヘイトに罰則を与えよというのは時代に逆行する

 アイヌ民族に対する差別発言はなくなっていません。ネット上もそうですが、日本会議や在特会など、アイヌ民族が特権を与えられたかのように攻撃したり、アイヌ民族そのものが存在しないかのような発言が繰り返されています。
アイヌ民族はいない発言の金子快之札幌市議は差別意識丸出し、議員辞職せよ

 ネット上でも誹謗中傷が絶えないようであり、この記事は衝撃的でした。
パブコメ98%公表せず アイヌ新法方針案 大半が差別表現」(北海道新聞2020年1月18日)
「政府が昨夏行ったアイヌ施策推進法施行に伴う基本方針案のパブリックコメント(意見公募)で、寄せられた6305件の大半がアイヌ民族の存在を否定するなどの差別的な表現で占められ、約98%が公表の対象外となっていたことが北海道新聞の情報公開請求などで分かった。」
 どうやら特定少数の人たちが、アイヌ民族は存在しない、先住民族ではない、差別はなかった、という趣旨のパブコメ意見を出していたということであり、こうなってくるとパブコメの本来の目的とはほど遠いものがありますが、それはさておき、ネット界では堂々とこうした主張がまかり通っているのも事実です。

 このような現実認識は問題で、後から入植してきた倭人によるアイヌ民族支配が確立し、その過程で生活の手段が奪われ、貧困が固定化してしまったり、倭人とは違うというだけで差別意識がもたれてきたこれまでの歴史を前提に、これからのアイヌ民族と倭人との相互理解の中での共存をどのように考えるのか、その前提として貧困層の底上げを具体的にどうすべきかということを考えていくことが重要です。
 こうした実態を道民や日本国民全体に理解を求めていくことが大切なことです。

 ところが、差別解消に逆行する動きがあります。
「アイヌ民族ヘイトに対応を」 道の施策会議で発言相次ぐ」(北海道新聞2020年1月28日)
「アイヌ文化の担い手を育てる札幌大学ウレシパクラブ代表で、同大の本田優子教授は「若者たちがアイヌ文化の発信活動をしていて、怖くなるのは最近のヘイトスピーチだ」と指摘。刑事罰を盛り込んだ川崎市の差別禁止条例と同様の条例制定を強く求めた。」

 アイヌ民族に対する問題ある言動があることは事実です。

 しかし、そうしたアイヌ民族にむけたヘイトデモなどが北海道内にあるのでしょうか。それが常態化しているとでもいうのでしょうか。少なくともアイヌ民族は北海道から出て行けとか、ゴキブリ、ゴミなどという類のヘイトデモは聞いたことがありません。

 川崎市と同じような条例というのですが、対象は道路などの外に向けた場でのヘイトデモが対象です。

 この川崎市の条例ですら重大な問題が含んでいるのですが、それはさておき、「若者たちがアイヌ文化の発信活動をしていて、怖くなるのは最近のヘイトスピーチだ」というのは飛躍も甚だしいものがあります。

 先のパブコメでもそうでしたが、そこでいう差別発言というのは、在日朝鮮人に対するヘイトとは質が違います。アイヌ民族はいない、先住民ではない、差別はないという主張ですが、これをヘイトとして罰則を与えよということは、こうした発言を違法として禁止せよということになってしまいます。この発言自体が差別だというのは意見との違いすらも全く区別がつかなくなります。

 取るに足りない意見というものであって、それ以上でもそれ以下でもありません。

 例えるならば、ナチスによるホロコーストはでっち上げという主張(意見)はドイツでは犯罪とされているようですが、日本でいえば南京大虐殺はでっち上げという主張に相当しますが、それ自体が暴論とはいえ、禁止して犯罪化せよ、というのは、力で押さえるしかないという強権的姿勢しか見えません。

 結局、本田氏の主張は、禁止して罰則を与えよという対象となっているものがはっきりしないのです。

 若者が例えば大学でアイヌ民族についての勉強会を開催したり、公共施設で同じことをしたり、デモをした場合に実力行使による攻撃を受けているという事実はありません。

 アイヌ協会などに執拗に絡んでくるという勢力があるとうことは聞いています。しかし、それは個別事案ですし、若者の行動への妨害が現実にあるのであれば、それも同様に個別事案です。威力業務妨害などによって対応が可能であるし、妨害行為そのものが犯罪なのです。

それとヘイトに罰則をという主張とは全く次元が異なります。

 それともネット上の発言を取り締まれというのでしょうか。若者が発信するのは主にはネットだろうと思いますが、そこにウヨウヨとやってくるヘイトツイートなどがあることは事実ですが、未だネット上のヘイトに対する罰則化などは、川崎市ですらもなされていません。

 結局、本田氏の主張は、どのような場面に対し、どう対処すべきかということがすっぽりと抜け落ちており、罰則化だけが強調される結果となっています。

 北海道新聞の記事の見出しも「相次ぐ」というのはいかがなものかと思います。

 昨年も白石区民センターで起きた、日本会議主催のアイヌ民族に関する集会を実力で妨害しようとした人たちがいました。そのときの北海道新聞の記事の見出しも同じでした。アイヌ民族へのヘイトと、罰則を与えよという主張は全く次元が異なるため、「相次く」ものは前者だとは思うのですが。

(現時点で、道庁のホームページには議事録等はアップされていないようです)

アイヌ民族を差別的に扱った団体の施設利用について

 政治的主張の違いによって施設の利用すら認めないというやり方は問題であり、断じて許容できるものではありません。

 さて、先のパブコメの件ですが、北海道新聞の記事には師岡康子氏のコメントが掲載されています。
「差別問題に詳しい師岡康子弁護士は、非公表とした政府の対応を評価する一方で「単に隠しただけでは何も解決しない」と指摘。「こうした言動がアイヌの人々を生きにくくしているのは確かだ。政府は何かあるたびに差別的言動は許さないとの姿勢を明確にし、啓発を強めるべきだ」と話している。」
 ヘイトに罰則をと声高に叫ぶ師岡氏は差別を助長するだけの方ですが、政府がすべきことは差別は許さないという姿勢ではなく、何故、差別が許されないのか、そして差別を解消していくために必要な啓蒙をすることです。師岡氏の姿勢はここでもそうなのですが、いつも対決姿勢だけなのです。

 広く理解を得て差別意識を解消していくという方向性とは逆行しています。

 反ヘイト集団が求めているのは差別意識の解消ではなく、差別主義者との対決だそうですが、このような運動は差別意識をかえって助長し、社会を分断するだけのものであって有害でしかありません。

あわせて読みたい

「ヘイトスピーチ」の記事一覧へ

トピックス

ランキング

  1. 1

    緊急事態宣言できない理由を考察

    長谷川一

  2. 2

    マスク配布への攻撃はお門違い

    青山まさゆき

  3. 3

    朝日は布マスク記事を撤回せよ

    青山まさゆき

  4. 4

    BCG接種 コロナ予防の仮説に注目

    大隅典子

  5. 5

    パチンコ屋は警察が閉店指示せよ

    水島宏明

  6. 6

    俺の子産んで 志村さんが依頼か

    NEWSポストセブン

  7. 7

    よしのり氏 なぜコロナを恐がる?

    小林よしのり

  8. 8

    マスク配布案が通る国家の滑稽さ

    井戸まさえ

  9. 9

    マスクせず批判浴びた議員が本音

    山下雄平

  10. 10

    97人感染受け小池都知事が危機感

    AbemaTIMES

ランキング一覧

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。