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一人で意味もなくビジネスホテルに泊まるのが好きだ - pha

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嫌なことがあったら、日常から距離をとる。場所が変われば、考え方も、気持ちも変わるから。そんなふらふらと移動することをすすめるphaさんの『どこでもいいからどこかへ行きたい』が2月6日に文庫で発売になりました(解説は漫画家の渡辺ペコさん)。冒頭を抜粋してお届けします。



欲しいものは全て小さい部屋の中にあることに気づいた

一人でビジネスホテルに泊まるのが好きで、ときどき用もないのに泊まりたくなる。1泊4000円くらいの一番安いやつだ。

なんとなく毎日の生活に飽きてきたときとかに、ネットの旅行サイトでとにかく安いビジネスホテルを検索して、「1泊4000円プラス交通費を出せば、行ったことのない街でぶらっと散歩したり適当に飯屋でごはんを食べたりしてからいつもと違う部屋の清潔なベッドでゆっくり眠って朝を迎えられるのか……」と想像するだけで、なんだか解放感を覚えることができるのだ。

ホテルというのは日によって値段が変わるものだけど、日曜が一番安いことが多い。平日は出張の人が泊まるし、週末は休日に出かける人が泊まる。そのどちらもが来なくて空いているのが日曜の夜だからだ。日程に調整がつくなら日曜の夜を狙ってみよう。

ビジネスホテルのあの、とりあえず生活に必要なものは一通り揃っているけれど、全部高級ではなく安っぽくて、部屋も狭くて、でもそれなりに清潔感だけはある、という最低限かつ機能的な感じが好きだ。

変に高級なホテルだと、「ここはいい部屋なんだからあまり散らかしてはいけない……」とか「だらしない格好で寝そべるんじゃなくてもっと優雅に過ごさなければいけない……」とか、いろいろ遠慮して気を遣ってしまってくつろげなそうだけど、ビジネスホテルは安っぽい感じだからこそ、自宅と同じように気兼ねなく自由に過ごすことができる。

ビジネスホテルはどこに泊まっても画一的で同じような部屋なのもいい。日本全国どの土地のビジネスホテルに泊まっても、部屋に入るとワープして全部同じ空間につながっているんじゃないかというくらい、無個性で外界から隔絶されている量産型の水槽のような感じがある。

フロントで簡単なチェックインを済ませて、部屋に入ってドアを閉めた瞬間、「よっしゃー」という気分になる。でも別に部屋で何か特別なことをするわけじゃない。最初は少しテンションが上がって、意味もなく服を脱いで綺麗(きれい)にシーツがセットされたベッドにダイブをし、ムフーンとか唸(うな)りながら裸でごろごろ転がってみたりもするけど、すぐに我に返って落ち着いて服を着て、あとは一人でだらだらとテレビを見たりインターネットを見たりするだけだ。食事なんかも適当にコンビニで弁当を買ってきて部屋で食べたりする。

要は僕がビジネスホテルでやっていることは普段家でやっていることと全く変わらない。でもそれがいつもと違う場所だというだけでなんだかすごく楽しくて解放感がある。見てるものは同じはずなのにいつもと違う場所で見るインターネットはなんであんなに楽しいんだろうか。普段ほとんど見ないテレビもビジネスホテルでは面白く見たりする。それは、外で弁当を食べたりお酒を飲んだりすると美味(おい)しいのと同じことなんだろうか。

旅行をしても旅先でネットを見たり本を読んだりすることが多いんだけど、そういうことをしてると「せっかく旅行してるのにもったいない。もっと何か旅でしかできないことをすればいいのに」って言われたりする。でも、それはちょっと違うな、と思う。

僕の実感としては、「旅行中にインターネットをしている」のではなくて、「ずっと家でインターネットしてると飽きるからたまには別の場所でインターネットをしている」というほうが近い。部屋が好きだし部屋で過ごすのが好きだけど、でもずっと同じ部屋でネットをしているとなんか行き詰まったり飽きたりしてくるところがどうしても出てくる。だからたまにちょっとこもる部屋を変えてみるという、それだけのことなのだ。

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