

相次ぐ「あおり運転」や「高齢ドライバー事故」などを受け、ドライブレコーダー(ドラレコ)が売れに売れている。
不測の事故に巻き込まれたときにきちんと“証拠”を残してくれる──そんな期待がドラレコ人気の背景にあるわけだが、法科学解析研究所・代表理事の石橋宏典氏は、こんな注意喚起をする。
「最近の交通事故鑑定では、ドラレコの映像解析作業が多くを占めますので、使い方には注意を払っていただきたいですね。たとえばHDR機能はオフにしたほうがいいでしょう」
HDRとは、画像の明暗差を自動補正する機能で、白トビと黒つぶれを抑えて〈見やすくする〉が、石橋氏によれば注意すべき点があるという。
「HDRを使うと、一見きれいな映像が撮れますが、ズームアップして見ると、細部がブレていることがある。ドラレコのモニター上では鮮明に映っているように見えても、細部を拡大してみると、ブレブレでナンバープレートが読めないということがあります。
それなら機能をオフにして、ピント優先のノーマルモードで撮っておいたほうが安全です。映像の明るさは後で調整できますが、ずれたピントを合わせることはできません」(石橋氏)
映像が思ったより粗かったという例では、こんな落とし穴もある。定年退職後は最新電気製品をチェックするのが趣味だという60代男性は、前方に急に割り込んで走り去った自動車のナンバーを撮り逃してしまった。
「360度レンズが2つついた、〈720度全天球レンズ型〉を購入したんですが……。危険な運転をした自動車のナンバーを確認しようとしたら、思ったより不鮮明でした」
最新機種だからと過信してはいけない。
「〈720度全天球レンズ型〉と言われると、死角が全く無いようですが、じつは広い範囲を撮れる分、画質が落ちます。画素数や解像度がよっぽど高い機種じゃないと、細部までは撮れないことが起こり得ます」(自動車パーツ会社の役員)
ドラレコが強い味方、大きな安心であるのは間違いないが、その機能の長所と短所はきちんと把握しておきたいところだ。
※週刊ポスト2020年2月14日号