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クルーズ船「ダイヤモンドプリンセス号」について

 現在横浜港にいるクルーズ船ダイヤモンドプリンセス号について、累次にわたり新型コロナウイルスによる感染者の発表が行われています。メディアの報道も相次いでおり、船内の様子断片的に伝わっています。ここで、現時点(2月8日晩)の状況を整理しておきます。数字等は公表資料に基づき記しますが、コメントなどはあくまでも私見を記すものであり、政府ないし厚生労働省の見解ではありません。ご留意ください。

【ダイヤモンドプリンセス号概要】

 2月3日横浜港に到着したダイヤモンドプリンセス号には、乗客2,666名および乗員1,045名、合計3,711名が乗船していました。ところが、香港において発症した患者1名がその前にこのクルーズ船に乗っていたという通知が香港からあったため、横浜港において再度臨船検疫を受けることとなり(その前の寄港地那覇において一度検疫を受けていました)、現在でも検疫官が乗船して臨船検疫中という状態です。この間は、検疫所長の許可がなければ乗員・乗客ともに上陸することはできません。

【検査結果について】

 一般の検疫は、空港で行われているような体温の計測や症状の有無の確認など簡易なものです。ダイヤモンドプリンセス号では、横浜港入港後2月3日から臨船検疫を開始しました。同時に、発熱等の症状のある方、その濃厚接触者、香港で下船して感染が確認された方の濃厚接触者に対してPCR検査を実施することとし、検体採取を行い、検疫所などの施設でPCR検査を行いました。現時点で乗客279名の結果が公表されており、64名が陽性となっています。

 PCR検査には時間がかかり、また一度に検査できる量にも限界があるため、5日朝~8日にかけて結果判明次第順次公表し、該当者を医療機関に搬送することとなりましたが、これらは3日~4日にかけて採取した検体の結果が逐次公表されているだけですので、この結果をもって日々感染が拡大していると捉えるべきではありません。また、この数字だけ見ると感染率22.9%となりますが、あくまでも感染リスクが高いと考えられる上記条件の方のみを検査した結果ですので、3,711人全体が同様の割合で感染していると考えることも、誤りです。もっとも、それにしても多い数字であることに違いはありません。

 なお、乗客は比較的高齢の方が多く、新型コロナウイルス感染症とはおそらく関係なく脳梗塞や心不全等の患者も発生しています。この方々は随時上陸させて救急搬送しています。なおその方々にもPCR検査を行っており、上記の結果の中に含まれています。

【船内について】

 2月3日から検疫官が乗船して検疫にあたりましたが、その最初の結果(31名中10名陽性)が翌日判明しました。船内には新型コロナウイルスの感染がそれなりに拡大していることが明らかになったため、翌日に最初の10名を下船させた際に、厚生労働省の職員(医師)を乗船させ、船長のご協力をいただいて、船内の感染防止環境を整えさせました。なおこの職員は、本省から交代を打診しましたが、感染のリスクがあるから自分がここに居続けるとして船内に留まっています。ありがたいことです。

 感染防止策として具体的には、乗客・乗員に対して極力個室で滞在すること、アルコール消毒や手洗い等を徹底すること、健康維持のためにデッキでの散歩は推奨するが、マスクをつけること等の注意事項を伝え、守っていただいています。なお2月4日まで船内でイベントなどが行われていたようですが、5日以降は中止しています。また同時に、wi-fi環境を整えて過ごしやすくすることなども行っています。

 なお、高齢の乗客が多く乗船が長期化したため、手持ちのご持病の医薬品がなくなる方がおられます。必要な医薬品を記入いただき調達して船内にお届けしていますが、普通の病院をはるかに上回る規模であることもあり、必ずしもスムーズに届けられていない状況もあります。ITの活用などにより改善することを検討しています。

【今後について】

 検疫済みとするためには、新型コロナウイルス感染症の感染者が船内にいない状態になる必要があります。このウイルスの潜伏期間は現在議論中ですが、同じコロナウイルスであるSARSの潜伏期間から長く見ても14日であろうと考えています。したがって、発病しないで14日過ぎれば新型コロナウイルス感染症に感染していないという証明となります。また、WHOは12.5日という数字も示していますので、その後にPCR検査のダブルチェックを行って陰性であれば感染していないとみなすこともできます(これは、チャーター便帰国者で現在宿舎にて過ごしていただいている方々も同様です)。

 ただ、PCR検査のキャパシティや検体採取の手間上、12.5日経過したところで一度に約3,700人全員の検査をして上陸させるということは容易なことではなく、フル回転で行ったとしてもその作業だけでおそらく数日を要します。現在PCR検査を各検疫所や国立感染症研究所・地方衛生研究所等以外でも民間研究機関や大学病院などで行っていただけるように準備もしていますが、可能となるまであと1週間はかかるようです。そうしたことを考慮しつつ、潜伏期間終了後どのように上陸していただくかは、引き続き検討中です。

 なお、今後も船内で発熱したり他の病気を発症したりする方が出た場合は、船内で医師の診察等の対応を行い、随時必要に応じてPCR検査を行ったり病院に搬送したりすることとなります。また既に感染が判明した方の濃厚接触者(同室の方です。本来は感染防止のため全員個室滞在にすべきですが、船内のためどうしようもありません)についても検査を行います。その結果などは都度公表します。

【所感】

 まだ現在進行形のオペレーションであり、反省したり感想を述べたりするタイミングではないとは思います。厚生労働省対策本部としては、全力を挙げて取り組んでいます。ただ、やはりSARSや新型インフルエンザ、エボラ出血熱等の経験はあったとはいえ、正直ひとつの町規模の大型クルーズ船での新しい感染症の発生という事態は日本では全く未経験であり、手探りで日々加藤勝信厚労相がひとつひとつ決断しつつ業務を進める状況となっています(チャーター便の帰国も同様でしたが)。たとえば検疫所で行うべきPCR検査のキャパシティひとつとっても、今後はその規模までを想定しなければならないものと思います。

 ダイヤモンドプリンセス号の乗客・乗員の方々が船内に留まる不自由に耐えていただいていることで、国内に新型コロナウイルスが上陸拡大することを防いでいただいています。そのことを念頭におきながら、乗客・乗員の方々もさらなる感染拡大は防止しつつ、潜伏期間を船内とはいえできるだけ不自由のないよう過ごしていただき、終了後はすみやかに日常生活に戻っていただくまでがミッションだと思っています。引き続き全力で取り組みます。

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