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- 2020年02月09日 06:00
『麒麟がくる』“悪モックン”が話題! これまでのイメージを覆す斎藤道三像
長谷川博己主演のNHK大河ドラマ『麒麟がくる』(毎週日曜20:00~)で、のちに斎藤道三となる斎藤利政役の本木雅弘が魅せる熱演が話題だ。第2回では利政の戦術に長けた策士ぶりと共に、娘婿の毒殺という、勝つためなら手段を選ばぬ非情ぶりに息を呑んだ。本木の緩急をつけた演技の凄みについては、落合チーフ・プロデューサーも「悪モックンのすごさです」と賛辞を送る。

斎藤道三といえば、これまで“美濃のマムシ”といわれた成り上がりの武将として知られるが、今回は若き斎藤利政時代が深掘りされる。まずは、『麒麟がくる』で描かれる利政のバックグラウンドを見てみよう。
池端によると「応仁の乱のあと、室町幕府が無力化されていき、三河や尾張など、各国で力のあるものが国を支配するようになりました。道三の父親は、ただの油売りの商人でしたが、そこから身を起こし、美濃の偉い人物に成り上がった。従来の斎藤道三は、一代で築いたという描き方が多かったのですが、実は親子で1つの国を牛耳ったんです。そうなると、道三は、野心ひと筋で生きてきた人ではないことになる」という解釈だ。
すなわち、父親がある程度成し遂げたものの上に立っていた人となり「攻めもあるけど、守るという立場もあった」と池端は捉えた。「いわばよくできた二代目で、今まで描かれてきた、ただ動物的にわさわさと人のものを盗んで自分の地位を築くという感じではなかったのではないかと。狡猾だけど、身内への愛情はあり、親としての悩みもあったと思います」

この第2回は、まさに利政がフィーチャーされる回だったが、最後の毒殺シーンはSNSでも大いに反響を呼んだ。落合プロデューサーによると、同シーンは本木がクランクインした初日に撮影したそうだ。
「初日なのに、斎藤利政にしか見えなかった。斎藤道三は、過去のドラマでは、ハゲ頭の入道というイメージがあり、もはやそれがアイコンみたいになっている。でも、道三にも、勇猛果敢で戦闘が得意な若き利政時代があったわけです。そこをきちんと演じているのが、本木さん、悪モックンのすごさです。本木さんは悪モックンバージョンをいつも使い分けていますね。映画では、テロリスト役などもやっていますから」
その映画とは、堤幸彦監督作『天空の蜂』(15)のことだと思うが、確かに鬼気迫る演技が大いに評価された。また、池端作品では、大河『太平記』の公卿・千種忠顕役のあと、NHKドラマ『聖徳太子』(01)でもタイトルロールを務めている。何よりも大河ドラマ『徳川慶喜』で主演も経験済みで、NHKから絶大なる信頼を得ていることは言うまでもない。

確かに、今後、勢いを増していく道三に、光秀がどうくらいついていくかが、前半の見どころになりそうだ。今しばらく、悪モックンをたっぷりと堪能してほしい。
■落合将(おちあい・まさる)
1968年神奈川県生まれ。1992年にNHK入局。主なプロデュース作品に、連続テレビ小説『ゲゲゲの女房』、大河ドラマ『平清盛』、連続テレビ小説『とと姉ちゃん』など。演出作品に『僕はあした十八になる』など。
■池端俊策(いけはた・しゅんさく)
1946年1月7日生まれ、広島県出身の脚本家。明治大学卒業後、竜の子プロダクションを経て、今村昌平監督の脚本助手となる。映画『復讐するは我にあり』(79)『楢山節考』(83)などの脚本に携わる。代表作は大河ドラマ『太平記』(91)のほか、『羽田浦地図』(84)『イエスの方舟』(85)『聖徳太子』(01)『夏目漱石の妻』(16)など。2009年に紫綬褒章を受章
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