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羽田空港に大型ホテルを開業する住友不動産の狙い - 中西 享 (経済ジャーナリスト)

luplupme/gettyimages

これまで主にオフィスビル、マンションを手掛けてきた住友不動産が、羽田空港国際線ターミナルに直結した複合型の大規模ホテルをこの春に開業する。ホテルは1997年から「ヴィラフォンテーヌ」のブランドでグループ会社を通じて営業はしてきたが、700室を超える大規模ホテルは初めて。今年は東京オリンピック・パラリンピックの開催を控えて、ホテルの集客競争は激化することが予想される。担当する桝井俊幸社長にこの空港直結型複合プロジェクトの狙いを聞いた。

不足する空港ホテル

羽田空港の国際線の利用客数は2011年と比較して、20年には3倍の年間約2200万人になり、1日当たり約5.5万人に増える見込み。10年ほど前までは羽田空港の国際線はアジア路線など近距離が中心だったが、2、3年前からは欧米路線も羽田から発着するようになり利便性が一気に高まった。国際線ターミナルが充実したことで、ビジネスマンの多くがアクセスに時間の掛かる成田空港よりも、近くて便利な羽田空港を利用するようになっている。

「ヴィラフォンテーヌ羽田空港」外観

しかし、世界で5位の旅客数を誇る羽田空港の周辺(5キロ圏内)のホテル数について桝井社長は「世界の主要空港と比較し圧倒的に少ない。エアポートホテル需要が1万室あるのに対して、2100室しかないので、需要は確実にある。富裕層向けに160室の『プレミア』というラグジュアリーな客室と、ハイグレードな『グランド』1557室の2種類の客室を用意し、多くのニーズに対応したい。ターゲットとなるのはインバウンドだけでなく既存の日本人客も含まれる」と話す。

1700室を超える客室数のあるエアポートホテルは日本では初めてで、現状ではこのエリアの主要なホテルが富裕層向けのラグジュアリー対応の部屋が少ないと指摘されていたため、同社では富裕層向けに「プレミア」という高級クラスを設け、差別化を図っている。

住友不動産は「オールインワン・ホテル」の構想のもとに、ホテルを核とした空港に直結した複合開発プロジェクト「羽田エアポートガーデン」の計画を進める。国から土地を借り受けて、国際線ターミナルに隣接した4.3ヘクタールの土地に、宿泊施設とこのエリアに相応しい複合業務施設を作ることでより多い集客効果を狙っている。羽田空港が今後、国際線旅客の拡大が見込まれる中で、レストラン、温泉、イベントホール、会議室など多様な施設を併設したのが特長で、戦略的な街づくりを目指している。中でも、12階に設置した広さが2000平方メートルある富士山を眺めながら楽しめる天然温泉の展望露天風呂は人気になりそうだ。

「羽田エアポートガーデン」は近接する開発プロジェクト「羽田イノベーション・シティ」ともつながる計画で、国際線ターミナルの周辺が商業施設を含む新しい街に生まれ変わる。その「羽田エアポートガーデン」内にはショッピングゾーンも日本文化を発信する逸品に出会える90店舗のショッピングゾーンを用意し、ジャパンプロムナードの「羽田参道」に仕立て上げたい考えだ。桝井社長は「これからは、こうした複合型にすることで、空港の利用客でなくても遊びに来てもらえるような施設にしたい」と期待する。

同社は、羽田空港を含む「ヴィラフォンテーヌ」ホテルが有利に利用できるメンバーシップの登録を昨年12月からスタート、ビジネス客を中心に登録を増やして囲い込みを狙っている。

また、羽田空港の南西に多摩川の河口を挟んで位置する川崎市殿町地区は国際戦略特区「川崎キングスカイフロント」に指定され、ライフサイエンス、環境分野の研究施設が集結している。ジョンソン・アンド・ジョンソンの東京サイエンスセンターもあるなど、世界から研究者の往来がある。この「キングスカイフロント」と空港とは羽田連絡道路で20年度中には結ばれる計画で、そうなれば「羽田エアポートガーデン」の存在価値が一段と高まることになる。

供給過剰の懸念は?

首都圏では東京オリンピック開催を控えて、新築ホテルの相次ぐ開業、簡易宿泊所の大幅増加などから、ホテルの宿泊は一部では供給過剰になるのではないかと言う指摘も聞こえてくる。このため、特徴のないシティホテルは集客に苦労するのではないかと言う見方もある。

「ヴィラフォンテーヌ」ブランドのホテルが15店あり、20年春にはこれに羽田空港の「プレミア」「グランド」に加えて、有明に「グランド」クラスの749室のホテルをオープンし、全部で18店になる。このほか大阪梅田駅前にも開業する計画で、桝井社長は「駅や空港とのアクセスの良い場所に多目的で利用できるホテルを作るので、ほかのホテルとは競争力で勝負できる」と自信を見せる。

現在の店舗は東京と関西が中心で、全国に広げる計画はなく、あくまでも多くの利用客が見込める場所での、街づくりに関与するような開業に絞っている。

訪日外国人数は18年に3000万人を突破、19年は韓国人旅行者が減るなどしたが、17日に観光庁が発表した年間の訪日外国人数は前年比2.2%増の3188万人(推計値)を記録、史上最高を更新した。政府は20年に4000万人の目標を掲げているが、昨年の後半から訪日数の伸びが鈍化してきており、いまの伸びペースではオリンピック開催による特需があったとしても4000万人には届かない見通しで、さらなる外国人の誘致対策が求められる。

羽田空港は3月からの国際線の発着枠拡大に伴い、さらに利用者数の拡大が見込まれている。それだけに羽田空港は今まで以上に「日本の玄関口」としての役割を果たすことが期待されている。重要なことはオリンピックという「宴」が終わった後に、新設される羽田空港周辺施設がインバウンド、日本人客を含めてどれだけの人を安定的に集められるかが課題になる。

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