- 2020年02月07日 19:36
「漫才協会に師弟関係を復活させたい」ナイツ塙宣之が漫才文化を残すためにしたいこと
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東京で活動する芸人らで構成される漫才協会の理事を務めるナイツ塙宣之さん。2018年に続き、2019年もM-1グランプリで審査員を務め、2019年8月に発売した初の著書『言い訳~関東芸人はなぜM-1で勝てないのか~』はお笑い関連書籍としては10万部超えの異例のヒットを飛ばし続けています。そんな塙さんに、漫才協会での活動や現状、自身が体験した“いじめ”の話、今のお笑いについて思うことなどを、笑下村塾のたかまつなながインタビューしました。
https://www.youtube.com/watch?v=icJE2XaPiuw&list=PLGIs2lskpIl0n0Or6TPWuUAlNClRGc6h4
YouTubeでお話していただいた内容を元に記事にしました。動画は上記からご覧ください。
漫才協会では、芸人の”ありのまま”を最期まで見せたい

ーー本日のゲストはナイツの塙さんです!
塙さんには、以前、私の単独ライブにご出演いただいた時に漫才協会に入らせていただきたいと言って、本当に入らせていただいたんです。ありがとうございます。
漫才協会に入って、どんな感じ?
ーー老人ホームみたいで、びっくりしました。
お客さんが、じゃなくて、裏側がでしょ? 裏側はもう老人ホームですよ。
ーー今まで私が経験してきたお笑いライブって、先輩でも40代くらいの人しかいなかったんですけど、今は90代の方もいて。
ななちゃんが漫才協会に入ってきてから亡くなった方も何人かいましたね。
ーーそういうメールが届くのも不思議な感じですね。
それがありのままじゃないですか。芸人の最期の。漫才協会のいいところだと思う。
年をとると声が出なくなるんですよ。耳も聞こえなくなるから、自分の声の出し方もわからなくなる。お客さんから「声ちっちぇーよ」とか言われるし、その師匠を出さない方がいいんじゃないかという話も出たりするんですよ。
でも、違うんです。声がちっちゃくなっちゃったとか、そういうのも含めての芸。ありのままを見せられる場所が絶対に大事だから、出しましょう、と俺は言っているんです。
ーー私、感動しましたもん。1日ずっと袖で見させていただいたことがあったんですが、師匠が出るだけで笑いが起きるというか。
”師匠が出るだけ”で。究極でしょ、それ。内海桂子師匠のことでしょ? 桂子師匠は、言葉もいらないのよ。生き様だけで人の心を動かすことができる。
ーー本当にかっこいいです。
客にもネタに真剣に向き合ってほしい

ーー死ぬまで舞台に立ち続けることは素敵だと思うんですけど、漫才協会に入って、自分が50、60代で舞台に立つ姿を想像できないんですよね……。
上の人がいるからね。漫才協会の悪いところでもある。50、60代の人でも焦らなくなるんだよ。みんな30歳のときに焦るじゃん。もうすぐ30歳だから売れなきゃ、みたいに。でも、漫才協会では50、60代でも売れてないから、30歳でも売れていなくてもいいやって思っちゃうわけ。
ーーお客さんの層も、他のライブハウス等とは全然違いますよね。
年齢層高いんだよね。
ーー久しぶりに東洋館で舞台に立って、政治のネタをやったらウケが良かったんです。それで他のお笑いのライブでもやったら、急にウケなくなって。あれ?こんなに違ったっけ?って。
一番苦しい時期だね。東洋館に出てから急にライブに出ると、アキレス腱が切れるみたいな感じになるよね。
ーー塙さんはどうされていたんですか?
どうしようもないよ。俺も両方出ていたけど、だんだん慣らしていくしかない。いいネタができて、何年かしたら、なんとなく分かるようになってきたけどね。
あと、基本的にお客さんがネタを聞いてくれないからね。特に平日の東洋館では。マナーが悪いんですよ。
ーーそんなこと言っていいんですか?
言っていかないと変わらないから。
お客様は神様なんだけど、こっちだって真剣にやっている。この前も漫才をやっている時に、おばちゃんがずっと喋っているから、俺、言っちゃったんです。「うるさいです、静かにしてください」って。変な空気にはなったけど、お客さんの中にはナイツの漫才を見たくて全国から来ている人だっているわけでしょ。そのままにするのが一番良くない。出ている芸人がネタを聞いてもらえなかったら本末転倒じゃない。客がそうだったら、芸人も舞台に出たくなくなるよ。
- たかまつなな
- お笑いジャーナリスト・株式会社 笑下村塾 取締役
1993年神奈川県横浜市生まれ。慶應義塾大学大学院政策メディア研究科、東京大学大学院情報学環教育部修了。フェリス女学院出身のお嬢様芸人としてデビューし、日本テレビ「ワラチャン!」優勝。また「朝まで生テレビ」「NHKスペシャル」などに出演し、若者へ政治意識の喚起を促す。
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