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特集
愛と経済
幼い頃の初恋に、高齢者の熟年離婚ーー。「愛」には人それぞれ様々なかたちがあり、なかなか一言では語れないものです。これらを経済という観点から見たとき「日本人のイマドキ恋愛・結婚事情」が見えてきました。バレンタインデーの季節に、いま一度、色んな愛のかたちについて考えてみませんか。

“終活”へ恋愛楽しむお年寄り シニア婚活市場はにぎわうも、子どもや社会の理解は不十分

  • 2020年02月07日 10:22
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人口減とともに、加速する少子高齢化。65歳以上の人が人口に占める割合を示す高齢化率は2018年10月時点で28.1%と、1950(昭和25)年の4.9%から大きく伸びた。

これと並行して、独居の高齢者の数も増えている。内閣府の調査によると、1980年には約88万人だったものの、2015年には約593万人と7倍近くまで激増。離婚や死別、さらには熟年離婚の増加など背景は様々だ。

一方、こうした状況でにぎわいを見せているのが“シニア婚活市場”だ。現場の様子をのぞくと、75歳以上の後期高齢者となって新たなパートナーと出会うケースも珍しくない。「高齢になって一人身でいる寂しさ」というシニア特有の事情が浮かんできた。

茜会公式ホームページ

“独身証明書”提出を義務付け 高い信頼性得てきた茜会

「確かなパートナーと夢の続きを。」

そんなキャッチフレーズで、シニアの婚活をサポートしているのが茜会だ。スタートは今から60年前。東京・渋谷区で結婚情報サービス事業を始めたのをきっかけに、数多くの出会いを生み出してきた。

登録を希望する人は、東京と横浜、大阪に置かれたオフィスに出向いて、社員と直接面談する。顔写真や、収入、学歴を証明する書類とともに提出するのが“独身証明書”。茜会では独身証明書の提出を義務づけるなど、情報の信頼性が高く評価されてきた。

10年間で会員数は約35%増 背景に東日本大震災

会員数は10年間で3000人から4000人へと増えたという。統括部長の川上健太郎さんは2011年に発生した東日本大震災を要因の一つと見ている。

東日本大震災では多くの方が命を落とされ、一人だけ残された人も多かった。そうした人の姿を知って、「誰かと一緒にい続けたい」と目覚めた人が増えたのかもしれません。

さらに、就活に代表されるような「〇活」という言葉が浸透し、結婚についても「婚活」とキャッチ―な言葉で表現されるようになったことが大きいという。

もともとはこっそりと人目に知られずに結婚相手を探すというのが一般的だったのでしょうが、“婚活”というフレーズが生まれて気軽なものという意識が定着したことで、カジュアルに取り組むことができるようになりました。

増える70歳代の利用 離婚や死別経てなおパートナー探し

茜会の主な利用者は50,60代が中心だが、70代以上も増えつつあるという。40代は初婚の男女が多いが、年齢が高まるにつれて、離婚や死別を経験した人が増える。

近年は、登録者の特徴の変化が見て取れる。かつては、意中の人へのアプローチなどが苦手だが一度は結婚をしたいという“おとなしめ”の人が多かった。それが最近では、離婚や死別を経験した上で再びパートナーを見つけようとする“積極的”な人が増えたという。

チーフカウンセラーの北村純子さんは、

比較的スムーズに結婚できそうな人でも、自分の希望するような相手を見つけることに苦労する人は増えている。そうして、「ここ(茜会)に来れば」という思いで来る人が増えました。

独身の人が大半である10代の恋愛に対し、40代以上のそれは大きく状況が異なる。たとえ気になる人が出来たとしても、その人が既婚者であれば道は閉ざされてしまう。そうした人が、未婚者が集う茜会を頼りに訪れるというのだ。

入籍にこだわらないシニアのカップル その背景は

茜会では、パーティーやお見合いなどを年間300回以上も開催。他にも、ビール記念館や水族館を訪れたり、一緒にゴルフを楽しんだりする“クラブ活動”などを用意し、異性の参加者同士が互いを良く理解するきっかけづくりをしている。

そうした交流を通じて関係が深まったとしても、そのゴールは「入籍」とは限らない。30、40代の人が入籍にこだわるのに対し、シニアでは、婚姻届けは提出しない“事実婚”や、週末のみ生活を共にする“週末婚”で済ますケースも少なくないという。

川上さんはシニア特有の課題を次のように話す。

入籍については「もういい年なので、今さらなぁ・・・」といった感じで、パートナー探しに主眼を置いている人も少なくありません。他にも、子どもの存在や財産の問題などシニア特有の問題もあります。

年を重ねたときの一人の寂しさは当事者にしかわからない

現役世代とは事情が異なるというシニアの婚活。その実態はどういったものなのか。数多くのカップルを取材し、シニア婚活の実態に迫った話題の書『ルポ シニア婚活』(幻冬舎新書)。著者でライターの篠藤ゆりさんは「シニアの結婚に対する理解は十分なのか。社会ぐるみで考えることがより高齢者の恋愛を充実させる」と指摘する。シニアの恋愛事情を尋ねた。

――シニア婚活での婚活が増えている背景をどう見ていますか。

結婚する割合を見てみると、1960年代ぐらいだと50歳までに結婚を経験する人は男女ともに100%近くでした。今とは全く状況が異なります。

そうした世代の人で結婚して、離婚なり死別なりをした人には、やはり結婚してない状態ではどこか宙ぶらりんという感じなのかもしれません。

――独居の高齢者が急増する中で、シニア婚活もにぎわいを見せています。

かつては三世代同居の生活様式も多かったので、年を重ねて伴侶を亡くしたりしても、一人で暮らすケースはそれほど多くなかったと思います。今は、子どもらと離れて暮らすケースが多くなったことも影響しているのでしょう。

――一人で暮らすことに不安を感じるのでしょうか。

やはり寂しさでしょう。年齢を重ねるほど、健康や老いへの不安を感じたり、心細さも増すでしょう。また、男性の場合はとくに、定年後の人間関係が希薄になり、孤独感を抱く方が多いようです。そのあたりの寂しさは、おそらくその年にならないと私たちにはわからないかもしれません。

一人でいることの寄る辺なさや、寂しさ、不安を感じたとき、誰かそばに人がいてくれたらと思うのは、人間の根源的な気持ちなのだろうと思います。

パートナーを得ることで残りの人生がより豊かに

――シニアの婚活に着目したきっかけを教えてください。

私の友人のお母さんが80歳でパートナーを見つけたことです。少し驚いて、その時の私には理解できない感覚でした。相手がすぐに死んでしまったり、介護が必要になったりしたらどうするのだろうと思っていたのですが、本人たちにお会いしてみると違和感がなくなりました。パートナーを得ることで残りの人生の彩りが豊かになるという確信があることが分かって、自分の固定観念に気づかされました。

高齢者施設でも恋愛沙汰があると聞いていたので、人を好きになるということはあると思っていました。けれども、家庭を作るわけです。このお母さんはずっと関東で暮らしていたのに九州に嫁入りしました。もともと前向きな考え方の方でしたが、パートナーを得たことでますます活動的になり、新たな土地でも人間関係を作っています。その様子を実際に目の当たりにすることで、こういう形もあるのだと理解することが出来ました。

――恋愛の形に年齢ごとの違いはあるのでしょうか。

年を重ねてからの恋愛は、特に人となり、人間性が重視されるように思います。離婚を経験したり、DV(ドメスティック・バイオレンス)を受けたりした人は、また結婚して嫌な思いするぐらいなら一人の方がいいはずです。それでも、一緒になることを選ぶのだから、惹かれるのはその人の人間性です。

心配は子どもとの関係 結婚への理解、財産トラブルは…

――シニアの婚活は時間的にも、経済的にも余裕がある印象です。

例えば団塊の世代では、会社などに勤めていた人は正社員で終身雇用というケースが少なくなく、それなりに退職金や年金もある。持ち家なども踏まえたら、今の若い世代よりは余裕があると言えるかもしれません。

現在は、非正規雇用の若い人は「給料が安くて結婚できない」とおっしゃいます。そう考えると、シニアの人たちはそういう意味で安定しているし、しっかりと生活できるだけの経済的な余裕があるのかなと思います。

――数多くのカップルを取材する中で、共通して見えてきた課題はありましたか。

一番は子どもとの関係です。

子どもからしたら、シニア世代の自分の親が結婚することへの抵抗感を抱くこともあります。「この年になって今さらそんなことしなくても」とか「相続はどうなるの」といった疑問を抱くのです。シニアの側もそれが分かっているから、結婚に対して子どもの理解を得られるかどうかが悩みの種となってくるのです。

例えば、将来の相続をどうするか、公正証書を作るなりして明文化するなどの手間を惜しんではならないと感じました。ただ、子どもの側はそれ以上に感情的にモヤモヤする場合が多いようです。

――感情的なモヤモヤは共感してしまいます。

子どもにとって親はいつまでも親なのです。40,50歳代で再婚するのと違い、「何もこの年でしないでいい」とか、周囲から“色ボケ”と思われないかだとか。

今回取材したケースでは、78歳なのに見た目が50歳代にしか見えない男性もいました。奥さんも同じぐらいに若々しい。恋愛しているから若さが出ているんですね。それでも、奥さんの子どもが結婚に反対しているために、籍は入れずに事実婚状態です。既婚のお嬢さんが、『恥ずかしくて舅姑に話せない』と言っていると聞いて、なるほど、そういう感覚もあるのかと気づかされました。

――シニア婚活で特有のマッチングの難しさはありますか。

男の人の方が少し考えは古く、「家事をやってくれる人がいなくて不便だから結婚したい」という人もいます。離婚経験者の女性はこれまで家族のために一生懸命家事をしてきたのに、「だったらお手伝いさんを雇いなさい」という話になります。「不便だから再婚したい」という気持ちが見えてしまうと、女性は引いてしまう人が多いようです。

シニア婚活は“終活” 世の中の理解が可能性広げる

――著書では「シニア婚活は“終活”」と記しています。

この先、年を取れば心細さは増していきます。その時に手を取り合う人がいたら、人生が豊かになっていくと思います。婚活パーティーに参加していた男性から聞いた「この年での婚活は、ある意味で究極の終活」という言葉から、前向きでポジティブな考え方を感じました。

――シニア婚活をめぐる改善点はどういったものでしょうか。

子ども側の感覚に代表されるような、シニア婚活への認識の点でしょうか。世の中が全体的に「シニアの結婚か。そういうことも全然ありだな」って思えるようにならないと、当事者が気を使って躊躇してしまいます。実際に、子どもに気を使って泣く泣く我慢するケースもありました。

しかし、これから先、長生きする時代なので、一回の結婚で終わらない人もいるだろうし、若い頃は世界中を飛び回って結婚する暇がなかった人もいるかもしれない。何歳でも伴侶を見つけるという事は普通なんだと考えられるようになるといいなと思います。

篠藤ゆり:福岡県生まれ。国際基督教大学で美術史を学び、卒業後はコピーライターとして広告代理店に勤務。退社後、世界各地を旅する生活を経て、1991年「ガンジーの空」で海燕新人文学賞受賞。女性誌を中心に人物インタビューなどを多数手がけている。著書に、『旅する胃袋』(幻冬舎文庫)、『食卓の迷宮』『音よ、自由の使者よ。―イムジン河への前奏曲』など。

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