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新型コロナウイルス感染症の現状と見通しについて(2/6晩現在)

 新型コロナウイルスによる感染症について、連日報道が相次いでいます。当初は未知の感染症で詳細は不明でしたが、1月15日に日本で最初の症例が確定してから3週間が経過し、武漢市からのチャーター便3便により帰国された方々や、横浜港にいるクルーズ船「ダイヤモンドプリンセス」の方々など、日々さまざまな事態が積み重なっており、その数字を見ることができるようになってきました。

 日々、厚生労働副大臣および厚生労働省対策本部の本部長代理として関連業務にあたっていますが、ちょっとこの辺りで、個人的な振り返りを兼ねて、現状を整理してみたいと思います。なお基本的に数字などは公表資料によりますが、コメントなどはあくまでも私見として記すものであり、政府ないし厚生労働省としての見解ではありません。ご留意ください。

【国内における感染者の由来】

 2月6日の時点で、日本国内では45名の感染者の方が確認されています。うち、湖北省滞在歴のある方は21名おられます(チャーター便帰国者も含みます)。この方々は湖北省で感染後、日本で発症された輸入症例と考えられます。また20名は、クルーズ船「ダイヤモンドプリンセス」船内における検疫およびPCR検査により確認された方々で、船内での感染と考えられるため、この方々も輸入症例と考えられます。

 残り4名の方々は、武漢市からのツアー客を乗せたバスの運転手さん(6例目)、その運転手さんと同行したバスガイドさん2名(8例目、13例目)、勤務先で中国からの観光客(300人/日程度)に接客する方(21例目)の4名であり、国内で感染したと思われますがいずれも中国から来られた方々との接点を持っておられます。

 したがって現時点では、日本国内で新型コロナウイルスによる感染症の感染は限定的であり、不特定多数に感染が拡大しているような状況には至っていないものと考えています。

【感染者数の今後の見通し】

 おそらく2月7日以降、いくつかの要因により感染者数は大きく増加します。理由は、(1)「ダイヤモンドプリンセス」号の有症状者等に関する検査が、現在102名終了しています(うち陽性20名)が、まだ171名残っており、明日以降その結果が順次確定します。仮に同じ割合で陽性の方が含まれるとすると、あと30名は増加するかもしれません。(2)チャーター便の4便目が明日朝武漢から戻ります。これまでも1便あたり数例ずつ陽性の方が含まれていましたので、もう数例確認されるかもしれません。

 ただ、以上は国内での感染ではありません(「ダイヤモンドプリンセス」船内も厳密には国内ですが、一般の方々とは隔絶されています)ので、これらの理由による感染者増をもって国内での感染拡大を恐れる必要はありません。

 国内で、湖北省とは全く滞在歴もなくそうした方と会うこともない感染者が確認され、その数が増加し始めると、国内での感染拡大が次のステップに移ったと考えるべきですが、まだそのような状況ではありません。

【感染した方々の状況】

 まず、PCR検査で陽性となったものの無症状の方々が4名います(当初5名でしたが、1名が発熱・咽頭痛を発症しました)。この方々も入院はしていますが、症状はなく元気でおられます。ちなみに、一般的には無症状の方にPCR検査を行うことはありませんが、チャーター便で帰国された方々は特別に全員に検査を行ったため確認された例です。おそらく世界でもあまり報告されていないものと思います。

 残り41名も全員入院しましたが、全快して退院された方が4名おられます。幸いにして、亡くなった方はおられません。

 こちらに、実際に国立国際医療研究センターで新型コロナウイルスによる感染症の患者の治療にあたられた大曲医師による所感の記事がありますので、ご参考にしてください。

 なおこちらのサイト(中国語ですがわかりやすい)によると、7日0時時点にて世界中で565名が亡くなっています。しかし分布をみると、中国の湖北省が549人とほぼ大半を占め、あと河南省、重慶市、四川省、北京市、上海市、黒竜江省、河北省、海南市、天津市、貴州省、香港、フィリピンで1~3名ずつという分布となっています。また致死率でみても、湖北省で2.8%ですが、湖北省を除く中国全土では0.2%と一桁違っており、同じウイルスでこれだけの偏りがあるのは湖北省のみ何か特殊な事情(例えば病院がパンクしており機能してないなど)があるのではないかと考えざるを得ません。

 パンデミックとは、世界的にある感染症が蔓延する状態を指しますが、現時点でそのような状況ではありません。

【国内の今後について】

 現時点では、検疫などによるスクリーニングがそれなりに功を奏しているものと考えています。しかし、潜伏期間がある以上、ウイルスの侵入を減らすことはできても、ゼロにすることは不可能です(可能性をゼロにしたければ鎖国するしかありませんが、現実的ではありません)。ただ、ウイルスの侵入機会を減らせば、それだけ国内での感染の拡大を遅らせる効果はあるものと考えます。

 そして、感染拡大を遅らせ、時間を稼いでいるうちに、相談窓口や治療にあたる医療機関の準備を行い、実際に拡大が始まったら治療が必要な患者を的確に治療につなげられる体制を整えます。一時、武漢市の映像として、病院に大勢の患者が並んで待っていたりする様子がテレビで見られましたが、こうなってしまうと真に治療が必要な重篤な方に手が回らず本来救えたはずの方も救えなくなる結果になります。

爆発的な感染拡大をさせず、感染拡大を緩やかにすることで、医療機関などの準備を整えることが可能となります。検疫による水際作戦の意味は、そこにあります。具体的には、全国各地域の保健所および医療機関において「帰国者・接触者相談センター」および「帰国者・接触者相談外来」を近日中に設ける準備を行っています。

 なお仮に蔓延するような状態となれば、風邪程度の症状であれば、自宅で安静と経過観察とすることになるでしょう。7種類のコロナウイルスのうちSARS(重症急性呼吸器症候群)、MARS(中東呼吸器症候群)、および今回の新型コロナウイルスを除く4種類のコロナウイルスによる感染症は、実際には風邪に含まれてしまいます。

 感染に対する最終防御ラインである一人ひとりの免疫力を高めることや、感染機会を減らすことも重要です。ちゃんとバランスのとれた食事をし、睡眠時間を確保し、生活リズムを保つこと(深夜までブログを書いたりしてはいけない)と、石鹸やアルコール消毒液による手洗いなどを行うことが効果的です。高齢者の方や、基礎疾患がある方は、人ごみを避けるなど、一層の留意が必要です。

 また、自分が周囲の人の感染源となることを防ぐため、咳やくしゃみをする際の咳エチケット(マスクを使う、ハンカチなどで口元を覆う、(手のひらではなく)腕やひじで口元を覆う)も気にしていただけるとよいと思います。

 「敵を知り己を知らば百戦危うからず」といいます。これは感染症との戦いにおいても通じる格言です。正しく対応するようにしましょう。もちろん私も、新型コロナウイルスによる感染症の拡大を防ぐため、職務に全力であたります。

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