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中国“大本営発表“は実態と乖離?拡散されるデマ情報に注意

死者600人、感染者3万人超

[ロンドン発]新型コロナウイルスによる肺炎が猛烈な勢いで中国から世界に大流行し、死者600人、感染者3万人を突破した問題で、ソーシャルメディアでさまざまな情報が入り乱れ、虚実ないまぜに複雑な波紋を広げています。

AP

ジョンズ・ホプキンズ大学CSSEのサイト
https://gisanddata.maps.arcgis.com/apps/opsdashboard/index.html#/bda7594740fd40299423467b48e9ecf6

アメリカ政府の国際放送ラジオ・フリー・アジアは、中国・新疆ウイグル自治区で新型コロナウイルスの感染がどのように広がっているのか、関係者の間で「国家機密」扱いされていると伝えています。表になっている感染者数は4日時点で29人です。

中国共産党が新疆ウイグル自治区でイスラム教徒約100万人に対し組織的に洗脳や予防拘禁を行っている実態が内部文書で明らかになっています。過密な施設と貧しい食生活、不衛生な状態はさらに大流行の温床になる恐れがあります。

しかし関係者は口を閉ざしたままです。『やがて中国の崩壊がはじまる』の著者ゴードン・チャン氏はラジオ・フリー・アジアに「新型コロナウイルスへの中国政府の対応は2002年の重症急性呼吸器症候群(SARS)時の対応と大きく変わっていない」と指摘しています。

「違いがあるとすれば、SNSが国民的対話を形作る上ではるかに重要な役割を果たすようになったことだ。SNSがなければ北京の対応は全く変わらず、それが隠せなくなって明るみに出るまで秘密にされていたはず。ニュースを制限したことが流行を危機に変えてしまった」

介護者が隔離され、脳性麻痺の少年が死亡

国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウォッチによると、中国共産党はメディアの取材を厳しく規制。新型コロナウイルスの感染者を治療した医師らが「未知の病気だ」とSNSで警鐘を鳴らそうとしたところ公安に取り調べられ、「ウワサ話」を広めるなと口止めされました。

この医師は肺炎の症状を起こして入院し現在、重篤な状態。新型コロナウイルスの流行に関する報道やオンライン討論は厳しい検閲を受け、“集団隔離”されている湖北省武漢市など5600万人の住民が十分な医療アクセスや食料を確保できているかどうかはっきりとは分かりません。

英BBC放送などによると、唯一人の介護者である父親(49)や、自閉症の弟(11)が感染の疑いで隔離されたため、湖北省で暮らす脳性麻痺のヤン・チェンさん(16)は約1週間後に死亡しました。この悲劇はSNSを通じて瞬く間に拡散しました。


父親は最初、「脳性麻痺の息子が水も食べ物もなしに自宅に取り残されている。誰か助けて」と地元の慈善団体や湖北省に助けを求めました。しかしチェンさんは2度、食事を与えられただけでした。チェンさんの死因は不明です。

中国共産党の"大本営発表"では、病院で看護師と感染者が手を取り合い、歌って励まし合う姿が映し出されますが、SNS上では感染者とみられる男性が地面に押し付けられ消毒液を噴霧されたり、自宅に施錠され強制隔離されたり、家族が連行されたりする動画が広がっています。

「武漢の病源体研究機関からウイルスが流出?」は本当?

一方、こんなニュースも出回っています。「新型肺炎、米メディアが報じた『研究所が発生源』説 武漢の病源体研究機関からウイルスが流出?」
〈「ウイルスに襲われた武漢には中国の生物戦争計画に関わる2つの実験所がある」(略)武漢市で発生した新型ウイルスの肺炎が同市内に存在する「武漢国家生物安全実験室」から漏れたウイルスが原因である可能性がある〉
ネタ元は米紙ワシントン・タイムズ(1月24日付)です。しかしBBCは、元イスラエル軍情報員の証言を引用したワシントン・タイムズ紙の記事について主張の根拠は示されておらず、記事中「そのような事故が起きたことを示す証拠や示唆はない」と断っていると指摘しています。

この記事は数百のSNSアカウントに投稿されており、数百万人に読まれた可能性があります。

「コウモリのスープを飲む中国人」という動画も出回りました。
https://www.youtube.com/watch?v=VAQqE5jmV1I
今回、コウモリから人への感染が疑われていますが、調理済みのコウモリを持った中国人女性が笑顔で「鶏肉のような味よ」と話す動画が出回りました。中国人がコウモリを食べる食習慣が新型コロナウイルスの大流行を招いたという非難を巻き起こしました。

しかし、この動画は武漢市や中国で撮影されたものではありませんでした。

60カ国以上で中国人の入国制限

共同通信社

新型コロナウイルスによる肺炎の大流行で緊急事態を宣言した世界保健機関(WHO)は「貿易と移動の制限」を勧告しなかったにもかかわらず、アメリカやオーストラリア、シンガポールなどが入国拒否するなど60カ国以上で中国人の入国を制限する動きが出ています。

英インペリアル・カレッジ・ロンドンMRC国際感染症分析センターは「1月18日までに、各患者から平均2.6(不確実性範囲:1.5~3.5)人に感染したと推定できる。発生を効果的に抑制するためには、制御措置により感染の60%超を抑制することが必要」と指摘しています。

「抗ウイルス薬やワクチンがない場合、制御措置は症状を示した患者を迅速に検出して隔離することだが、現時点でこの流行が中国国内に収まるかどうか不明」だそうです。治療法やワクチンがまだ確立していないことから厳しい制御措置をとる国が多いようです。

日本や韓国は湖北省滞在者や居住者の入国を拒否しています。

致死率 感染力 潜伏期間 感染者数
新型コロナウイルス 2% 各患者から2.6人に感染 2~14日 死者634 人、感染者3万817人
重症急性呼吸器症候群(SARS) 10% 2人 2~7日(最大10日) 8096人(死者774人)
中東呼吸器症候群(MERS) 34% 0.7人 5日(2~14日) 2494人(死者858人)
豚インフルエンザ 0.02% 1.4~1.6人 1~4日(最大7日) 死者20万3000人
インフルエンザ 0.01%未満 1.3人 2日(1~4日) 年間死者25万~50万人
Worldometer,Eurosurveillance,CIDRAPなど各種データより筆者作成

イギリスで中国人の感染者2人が見つかってからロンドンの中華街では予約のキャンセルが相次いでいるそうです。中国人留学生を敬遠する動きも出ています。

閑散としたロンドンの中華街(筆者撮影)

中国の経済的・軍事的台頭や海洋進出、香港の大規模デモ、米中貿易戦争、中国通信機器大手の華為技術(ファーウェイ)による次世代通信規格5G参入問題で中国を敵視する空気が一気に広がっています。

新型コロナウイルスによる肺炎の大流行をきっかけに中国人に対する嫌悪や黄禍論の歴史がまた頭をもたげてくるかもしれません。SNSの情報を鵜呑みにして、拡散しないよう注意が必要です。

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