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「みんなが課金しないところに課金してしまうプレイヤー」問題

“ファミ通モバイルゲーム白書2020”最新市場動向が発表。国内年間課金売上トップは『FGO』。もっとも遊ばれたのは『ポケモンGO』 - ファミ通.com
 
 リンク先では、『ファミ通モバイルゲーム白書2020』にもとづいた2019年モバイルゲーム課金ランキング、それと総プレイ時間ランキングが紹介されている。ソーシャルゲームに費やされている金額と時間のスケールに気が遠くなりそうだ。
 
 ランキングを眺めると、興味深いことにも気づく。『Fate/Grand Order』は、総プレイ時間では6位だが課金売り上げでは1位となっている。他のゲームに比べて『Fate/Grand Order』はプレイ時間のわりに高額課金なゲーム、ということになろう。
 
 正反対に『ポケモンGO』や『ディズニーツムツム』はプレイヤーを長時間拘束するわりには課金額は少な目で済んでいる、ようにみえる。尤も、『ポケモンGO』のような位置情報ゲームの場合、交通費や飲食費、ときには被服費などもかさむので、ゲームそのものへの課金額だけでは計り知れない部分もあるが。
 
 『パズル&ドラゴンズ』(『パズドラ』)の課金売り上げが3位と善戦しているのも興味深かった。パズドラの近年の売り上げについては、以下のリンク先が参考になる。
 
FGO 711億円、モンスト 709億円、パズドラ 522億円、荒野行動 424億円、スマホゲーム課金売上ランキング(2019 日本国内)|アプリマーケティング研究所|note
 
 パズドラの2019年の課金売上は、522億円だという。2018年には487億円、2019年には473億円だったということは、ここに来て課金売上が増えているわけだ。
 
 パズドラはリリースから7年経っていて、このジャンルでは古株だ。ゲームが好きな人間なら、もうひととおり遊んでしまっているだろう。
 
 ではパズドラは、プレイヤーに課金させてやまないゲームなのか?
 
 私や私の周囲のパズドラプレイヤーをみる限りでは、そうとは思えない。
 
 序盤に課金をするメリットはあったと思う。神をはじめ、レア度の高いキャラクターを幾人か持っておけば中盤までの展開が楽になる。パズドラを遊び始めてまもないプレイヤーが許容範囲の課金をするのは、だから理解しやすいことだ。
 
 しかし中盤以降、レア度の高いキャラクターを課金してまで取りに行く必要性は下がったはずだ。パズドラの運営は、ガチャを回すためのアイテムはそれなり配ってくれるし、レベルを上げたり攻略したりしているうちにおのずと手駒が揃った、と記憶している。無課金系のキャラクターも十分役に立った。そもそも、レア度の高いキャラクターをやみくもに入手しても育成が追い付かない。育成スピードとレアキャラクターの入手率が釣り合ってきて、あまり困らなくなり、やがて私はプレイするのをやめた。
 
 周囲のプレイ状況をみても、ネット上の攻略情報をみても、パズドラは良心的なゲームではなかったのか? いずれ飽きそうなゲームデザインでもあり、手ごわい課金システムのゲームに比べれば与しやすいと思っていた。
 
 ところが2019年になってもパズドラで課金する人は絶えない。
 
 その後、私や私の周囲の基準でみれば信じられないパズドラの遊び方をする人、ゲームリテラシーや課金リテラシーが信じられない人が世の中に存在することを、私はオンラインとオフラインから知った。
  
 パズドラに限らず、ソーシャルゲームには「ほとんどの人が課金しない時に課金する人」や「ほとんどの人が課金しない対象・目的に課金する人」が一定数いる。課金する理由は、コレクション欲であることもあれば、ランキング欲によることもあれば、ゲーム内のリソースが管理できないこともある。が、とにかく大抵のプレイヤーが課金しないで済ませるところでも課金してしまう、ブレーキのきいていないプレイヤーが存在している。
 
 してみれば、この、「たいていのプレイヤーが課金しないところに課金してしまうプレイヤー」がソーシャルゲームの"上客"、ということになりそうだ。詐欺の世界では、詐欺に引っかかった人の人名リストが高値で取引されているという噂があるけれども、それなら「たいていのプレイヤーが課金しないで済ませるところでも課金してしまうプレイヤー」のリストも高値で取引されるのではないだろうか。
 
 ところがあまたのプレイヤーのうち、こうした"上客"はごく一部だから、"普通に"遊んでいるほとんどのプレイヤーは「このゲームは良心的」「このゲームはそれほど課金しなくて大丈夫」と判断する。
 
 ソーシャルゲームには、"普通に"遊んでいればたいした問題にならないけれども、"上客"からは徹底的にお金を搾り取るフィーチャーがちりばめられている(たとえばランキング制度など)。多くのソーシャルゲームのビジネス戦略には、"普通に"遊んでいるプレイヤーには良心的なイメージを植え付け、良心的という評判を維持しながら"上客"からはお金を搾り取る、そんな側面があったりするのではないだろうか。
 
 もし、ほとんどのプレイヤーには無害な課金フィーチャーが、ごく一部のプレイヤーにだけ凶暴な牙をむくとしたら……。
 
 この仮定に基づくなら、ソーシャルゲーム批判をする際に「"普通"に遊ぶプレイヤーがどれだけ課金しやすいか」、あるいは「"普通"のプレイヤーがどれだけ魅了されやすいか」といった視点で批判するだけでは足りない。たいていのプレイヤーは、より新しく、より面白いゲームに課金する傾向があり、その金額も身の丈をはみ出さない。そのようなプレイヤーの課金やプレイスタイルは、問題としては大きくない。
 
 本当に批判しなければならないのは、ほとんどのプレイヤーには無害だが"上客"からは徹底的に搾り取る、それでいて良心的なゲームという評判を維持できるような、そういった一連のカラクリのほうだったりしないだろうか。
 
 と同時に、そのような"上客"に相当する人々、ほとんどのプレイヤーが素通りするところで課金し、ほとんどのプレイヤーが自制するところでも自制できないプレイヤーの事情や病理性がリサーチされなければならないだろう。そうしたリサーチに際しては、たとえばゲーム障害のような医療的なフレームワークが功を奏して、大半のプレイヤーの遊び方から乖離した、いわばgame addiction(ゲーム依存)というよりgame abuse(ゲーム乱用)とでもいうべき状態の輪郭がとらえられるのでは、と期待している。
 
 ほとんどのプレイヤーが無事息災に遊んでいるゲームを、歯止めのきかない遊び方で遊んでしまう極一部のプレイヤーが存在し*1、そのことまで織り込み済みでゲームがデザインされているとしたら、そこは批判されてしかるべきだろうし、そのようになってしまう特異なプレイヤーや状況についてリサーチされなければならないだろう。
 
 私はゲーム愛好家なのでゲーム障害が過剰診断される未来は望んでいない。とはいえ、あまりにも不健全で歯止めのきかない、乱用という言葉がよく似合うゲームプレイが現実にあって、その不健全なゲームプレイを狙い撃ち、あてにするようなゲームデザインが野放しになっているとしたらまずいと思う。
 
 冒頭のとんでもない金額の課金ランキングのうち、「みんなが課金しないところに課金してしまうプレイヤー」が占めている割合はいったいどれぐらいだろうか?
 
 [関連]:「FGOガチャ売上4000億円突破 1DL辺り課金額は5万円」に震えが止まらないマスター達 - Togetter

*1:または、歯止めのきかない遊び方になってしまう事情や状態が存在し

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