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厳格な入国拒否で日本国民の生命・財産を守るのは当然- 国境を越えた感染症の侵透は水際で防ぐしかない

<入管法でいの一番に感染症患者の入国を拒否>

 1月下旬、各紙に一斉に「入国拒否」の文字が踊った。法律的に実は「上陸拒否」で入国管理難民法第5条を根拠にしている。まだ航空機による移動がそれほどなく、船による移動が大半だった頃の法律であり、そのまま改正されずにきているからだ。

 しかし、上陸拒否(以下は、「入国拒否」で統一する)の内容をよく見ると、法制定時の14項に枝番が3つ途中で付け加えられ、計17項目が規定されている。そしてその第一項が指定感染症条項であり、「指定感染症の患者又は感染症の所見のある者」の入国を拒否できることになっている。その他に犯罪者、麻薬等を所持した者と具体的な規定が続くが、いの一番は、今回の新型コロナウイルス感染症のような危険な病気の侵入を防ぐことが規定されている。

<かつて感染症が国を滅ぼした>

 今やすっかり忘れられているが、歴史を紐解くと国家や町や村が滅んだ原因は、外敵の攻撃などよりも原因不明の感染症だったことが多いからだ。このことは今でも北朝鮮の対応に垣間見える。公衆衛生体制が整っていないためだろう、国家非常防疫体制をひき、ドル箱の中国人観光者の入国を禁止しているという。国家存亡の時ととらえているからである。

 今まで、入国管理難民法が一般国民に取り沙汰されることはほとんどなかったが、18年秋の臨時国会で外国人労働者受け入れを巡って対決法案になった。今は過度な自由化、グローバリゼーションを抑制しなければならないものを、漁業法、水道法とともに自由化なり民営化という古ぼけた二十世紀の理念で惰性で改悪してしまった。

 その同じ法律で、武漢のある湖北省という特定の地域を限定して入国拒否の措置をとるのは初めてのことである。片や外国人労働者として野放図に受け入れる規定があり、片や日本に都合の悪い者は入れないという規定も混在している。WHOが「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」と宣言したのを受けて、2月1日から施行された。WHOも日本国政府も後手後手に回った。

<後手に回る日本の対応>

 こういう緊急予防には初動態勢が重要であるが日本の対応は甘くドタバタした感がぬぐえない。

 私が最も驚いたのは、政府が武漢の邦人をチャーター機で帰国させた第一便の中で、2名が検査を受けるのを拒否して、そのまま自宅に帰ったことである。その時は、法律的には今回の新型肺炎は指定感染症に指定されておらず、外国人すら入国拒否はできない状況だった。8万円の航空運賃も政府が負担するというのに何という我がままか。

<法の趣旨に沿った超法規的措置は許される>

 私はこの2人にどういう事情があったか知らないが、こんなことが許されるのは、軟弱な日本だけではないだろうか。

 各国一斉に自国民の武漢脱出を手助けし始めたが、帰国後は全員潜伏期間とみなされる2週間隔離している。オーストラリアは1500km離れたインド洋のクリスマス島、米・仏は軍事施設に収容している。考えられる常識的対措置であり、法律的根拠は定かではないが、いってみれば超法規的措置である。日本の場合、国民のために感染症法と検疫法、入国管理難民法等既存の方の趣旨に沿って運用すればよいのだ。

<国民全体の命を救うことが一番の人権重視>

 こうした強制措置には人権上の問題があるとすぐ反論されるが、感染症が更に拡大して何人もの人が命を落とすことのほうが、よほど重大な人権問題である。帰国(あるいは入国)に当たり、ウイルスを保持しているかどうか強制的に検査したり隔離するのは、まず第一に本人の命を救うためであり、次はその家族や接する人々の危険を減らすためである。指定感染症に指定する政令施行により、2月1日からやっと患者に入院を勧告したり、就業制限したりできるようになり、従わない場合は、罰則や強制入院も可能となった。当然のことである。

ただし、ハンセン氏病の例にみられるような差別につながってはならない。既にカナダでは保護者が中国人を学校によこすなという動きを始めたというが、明らかに行き過ぎである。こういうことを誘発しないためにも、国が責任を持って規制措置を講じなければならない。

<感染症緊急事態と憲法改正は無関係>

 私が今なぜこういう主張をするかというと、邦人保護という事態を奇貨として自衛隊の海外派遣をむやみに正当化したり、緊急事態条項による憲法改正の動きに結びつけようとする危険な動きが出て来るからである。案の定、伊吹元衆議院議長が、憲法にいざという時の緊急事態条項を加えるべきだと言い出し始めている。災害時に皆が動転している隙をついて一気にいかがわしい制度を導入させんとする、いわゆる「ショック資本主義」(惨事便乗型資本主義)の一種である。

 安倍政権の森・加計問題から桜を見る会にみられるとおり、書類を改ざんしたり捨てたり、次々と詭弁を並べたてゴマカシするような政府を信用するわけにはいかない。感染症への対応は既存の法律で足り、もし不備があったら一つ一つ修正していけばよいだけのことだ。憲法改正は、こんな時ではなくきちんと冷静に議論して進めなければならない。

<豚熱対策にも入国拒否が必要>

 実は私は昨年夏、豚熱(豚コレラ)とアフリカ豚熱の水際対策に入国拒否が一番有効だと考えていた。[ しのはら孝ブログ 2019.6.18 : 豚コレラ・アフリカ豚コレラは水際でくい止める以外になし 参照 ]。数か月後に「入国拒否」がこれだけ問題になるとは思わなかった。国民民主党は既に肉製品所持者を入国拒否すべきという法案を提出している。人の感染症も家畜(動物)の感染症も同じく水際で防ぐしかなく、一番手っ取り早いのは入国拒否なのだ。

<恐ろしく広い一般規定の入国拒否は緊急事態にのみ許される>

 正直言って入国管理難民法第5条の17項目は、ごった煮規定である。政府は湖北省発行の中国旅券所持者と2週間以内湖北省滞在者の一時入国拒否は14項「日本の利益を害する行為を行う恐れがある者」による閣議了解を根拠としていると言う。新型肺炎の症状がない者は1項で入国拒否できないからである。

恐ろしく広い一般規定であり、ほっておけば誰でもどんな理由でも入国拒否できることになる。しかし、何とか既存の法律で対処しようという姿勢は一応納得できる。ところが、私が12月5日の農林水産委員会で肉製品の所持者を入国拒否する前述の規定の追加を迫ったのに対し、義家法務副大臣が「14項でできるので、項目の追加は考えていない」と答弁している。これには納得がいかない。

<水際措置は早くしないと間に合わない>

 2002年日韓ワールドカップ共催の時に、フーリガン対策で枝番5項の2が追加された。この結果上陸を拒否されたのは65人に及び、欧米の大会とは異なり大暴動は一切起きなかった。日本の警察が事前に入国拒否を海外に向け広報したことが見事な抑制的効果を発揮したからである。フーリガンは日本の厳しい入国管理に恐れをなし、高い旅費を棒に振るのを避けるためもあり、日本に向かうのを躊躇したのである。つまり、肉製品を持っていったら日本では入国拒否されるとなると、中国人観光客は持ってこなくなり、同じような抑制効果がある。

 ところが、昨年末カルロス・ゴーン被告が関西空港からまんまと脱出に成功したため、日本の出入国管理に疑いの目が向けられている。ここでは入国管理を厳格に行い、さすが日本という名誉を挽回しないとならない。

 日本は法治国であり法律的制度は一つ一つ変えていくべきである。新型肺炎やアフリカ豚熱の侵入を防ぐためには、その場凌ぎの閣議了承などではなく入国管理難民法第5条に枝番を二つ追加して将来に備えるべきだ。

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