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幼い頃の初恋に、高齢者の熟年離婚ーー。「愛」には人それぞれ様々なかたちがあり、なかなか一言では語れないものです。これらを経済という観点から見たとき「日本人のイマドキ恋愛・結婚事情」が見えてきました。バレンタインデーの季節に、いま一度、色んな愛のかたちについて考えてみませんか。

「結婚式は挙げなくてもいい」多様化する若者の価値観 それでもブライダル産業が市場拡大を目指せる理由

  • 2020年02月06日 10:06
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最近、結婚しても結婚式を挙げない人が増えている。「今度結婚するんだけど、式は挙げないつもり」「挙式は親族だけで、その後に1.5次会をする」など、これまでの形式に捉われない選択をする人の話を聞く機会も増えた。

一方、結婚式の招待客1人当たりの費用は増加傾向にあり、式の平均単価は上昇している。婚姻届けを役所に提出するだけで済ませる「ナシ婚」層が現れるなか、招待客へのおもてなしを重視した式を挙げる人も増え、結婚式に対する価値観は二極化しているのだ。

さらに、少子化の進行で婚姻組数が減っていることを考えると、現在約2.5兆円規模のブライダル産業は縮小が懸念される。しかし、ブライダル産業新聞社のデスク・権藤咲さんは「まだ拡大させることが可能」だと考えているという。結婚式が多様化する背景、業界の市場拡大への動き、課題について話を聞いた。

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ブライダル産業新聞社のデスク・権藤咲さん

「ナシ婚」増加の背景にある若者の現実思考

ブライダル産業の市場規模は、少子化や「ナシ婚」層の増加を考えると、顕著に縮小傾向になりそうだが、そこまで大きな落ち込みもなく横ばいを続けている。実際、「ナシ婚」層はどれくらいの割合を占めてきているのだろうか。

権藤さんは話す。

「結婚しても式を挙げていない人、いわゆる『ナシ婚』層は、最近は婚姻数の約4~5割くらいにのぼります。ブライダル業界としては、そういった人たちにどのようにアプローチしていくのかが課題になってきています。

また最近は、なにをもって”結婚式”と呼ぶのかという線引きが難しくなってきています。挙式と披露宴をおこなう最もスタンダードな結婚式なのか、1.5次会も結婚式に含めるべきなのか、はたまた家族だけの会食はどうなんだといった具合に」。

さらに、結婚式を挙げる人が減るに従って、参列者が式に出席する機会も減少する。それは同時に、「いい結婚式だったな」「自分のときはこうしよう」と思う機会の減少にもつながり、ブライダル業界にとってはマイナスとなる。

写真AC

「ナシ婚」層が増えた背景には、どのような理由が考えられるのだろうか。結婚情報サイト「みんなのウェディング」が昨年おこなった「ナシ婚」に関する調査では、結婚式を挙げない理由として「経済的事情」が1位という結果に。しかし、権藤さんは、ただ金銭的に余裕がないという訳ではないのではないかと話す。

「ここ最近の結婚式の平均費用は360万円程です。それを踏まえて、例えば80人が列席するとしたら、ご祝儀が1人3万円として単純計算すると240万円いただけることになりますよね。それを費用に充てた場合、新郎新婦の持ち出しは1人約50万円になります。

親の援助がある場合もあるでしょうし、30代前後で結婚したとしたら、払えない額ではないように思います。結婚式を挙げない理由に、経済的な事情が上がりがちですが、実態としてはそのお金を、結婚後の生活費や不動産、保険、子どもの養育費などに充てたいと考える人が多いのではないでしょうか」。

「ナシ婚」増加の背景には、結婚を点として考えるのではなく、その後続いていく生活を見据えた、現実的な意味での倹約思考があるようだ。また、結婚したら一様に結婚式を挙げるというこれまでの形式に捉われず、自分のライフスタイルにあった選択をできるようになったのも、価値観が多様化している表れだといえる。

キティちゃん、ポケモン、モンハンなど異業種コラボの動きも

「ナシ婚」層へのアプローチを狙う企業の間では、Instagram(以下、インスタ)をはじめ、TwitterやFacebookなどSNSの活用を意識した取り組みが活発になってきている。上場企業のエスクリは、キティちゃんや、ピカチュウ、ゲーム「モンスターハンター」などとコラボした、結婚式プランを打ち出しているという。

「『結婚式はやらない』と決めている層は、やはりウェディング情報誌はなかなか手にしないため、そこに広告を出しても効果は低いです。なので、同社はそういったプランを、サンリオやカプコンの公式SNSやウェブサイトで発信しました。

そうしたところ、キャラクターやゲームのファンの目に留まり『こんな式だったらやってみたい』といった反響が得られたといいます。ゼロをイチにする戦略として面白い発想だと思います」(権藤さん)。

株式会社エスクリが提供する「ポケットモンスターブライダルフェア」ではピカチュウが式場に登場する演出も

最近では、ポケモンGOをきっかけに出会い、結婚するといったケースも出てきている。新たなトレンドを取り入れた、これまでにない結婚式プランの登場は、そういった需要を満たすものとして、今後も広がっていきそうだ。

また、式場運営会社や演出を手掛ける企業以外にも、結婚式を挙げた花嫁や参列者による、インスタへの写真投稿がここ数年非常に盛んになってきている。花嫁同士のコミュニティが生まれ、情報交換が活発であることから、業界としては無視できない状況だ。

インスタでは、結婚式の準備期間の花嫁を指す「#プレ花嫁」というハッシュタグが付けられた投稿を目にする機会が増えた気がしていた。というのも、「#プレ花嫁」が付けられた写真投稿は550万件あり、「#ディズニーランド」の570万件に匹敵する投稿数となっているのだ(2020年1月現在)。

「『#プレ花嫁』というワードが登場したころは、特に地方のブライダル関係者には浸透が遅く、紙面でも説明書きを付けていました。しかし、いまや『#プレ花嫁』『#卒花嫁(式を終えた花嫁が、式の情報を投稿する際に用いられる)』は、業界でも知っていて当然の言葉になりました。

正直にいって、業界のベテランの方がインスタなどで情報発信をするよりも、おしゃれな花嫁自身が口コミとともに写真を投稿するほうが、大きな影響力を持つ時代になってきています」。

誰もが情報を発信できるようになり、花嫁たちの情報網が生まれてきたことは、大きな変化だと権藤さんは話す。

結婚式を挙げる人が減少し、競争が激化するブライダル業界では、トレンドを実際のサービスに落とし込めるか、さらには、花嫁側がすでに多くの情報を持っていることを踏まえた接客ができるかという点が、明暗を分ける状況になってきている。

形式化した業界の”当然”が、消費者の心を遠ざけることも課題だ。レンタルドレスや装飾用の花代、引き出物の持ち込みNG、契約後のプランナー変更の有無など、説明不足やコミュニケーション不足が原因で不満を生む場面がまだあると権藤さんは指摘する。

「例えば、会場に飾る花の金額についても、金額の根拠をしっかり説明することで、不満を回避することができると思います。式当日に最高の状態の花を並べるには、咲き具合や温度管理など、様々なプロの手が入っています。金額に疑問を持ったお客さんに対し、プランナーはそういった理由を説明できるようになるべきだと思います。

見えないものに対して、お金を払うというのは不安が生じて当たり前ですよね。提供するサービスの価値をしっかり伝え、納得して決めてもらうことが大切です」。

「家族挙式」が選ばれる背景に再婚増加

多様化する結婚式は、「ナシ婚」だけでなく、海外ウェディングや、写真だけで済ませるフォトウェディングなど様々な広がりを見せている。最近では「家族挙式」という、主に親族のみでおこなう式を選ぶ人もいるそうだ。

「家族挙式が増えている背景には、価値観の多様化もありますが、再婚の増加が一因としてあると思います。ここ数年の婚姻組数は、厚生労働省の統計では年間59~60万組程とされています。そのうちのどちらか1人が再婚、もしくは両方が再婚となるパターンが大体4分の1から3分の1を占めているんですよ。

そうなると、1回結婚式を盛大にやっている場合、再婚で2回目も同様にやるかというと、ちょっと考えてしまう人も多いのではないでしょうか。ただ、やはり家族にはお披露目として、一度集まって紹介したいというニーズがあるのだと思います」。

婚姻組数が減少するなか、再婚比率は高まっている

再婚の増加など社会的な変化と、それにともなうニーズに「家族挙式」という形態がマッチした結果、親族のみでの式を希望する人が増えているという。

ブライダル業界が担う「少子化」への役割

このように、結婚式の多様化、価値観の多様化などの変化に対して、ブライダル業界がどのように対応していくのか課題は多くある。しかし、最も大切なのは、「結婚式を挙げてよかった」と思ってもらえる式を提供することだと権藤さんは指摘する。

「やはり家族でしっかりと思いを伝える機会があるというのはとても大切なことだと考えています。結婚はライフスタイルが変わるひとつの大きなタイミングなので、幸せな結婚生活をいい結婚式からスタートしてくれたらいいなと思います。

ブライダル業界としては、点ではなく線でお客さんをサポートしていけるかというのが、今後より注目されてくると思います。結婚後、子どもが生まれ養育費や学費、住み替えで不動産を検討するといったタイミングで、どんなサポートができるか。異業種と協力することで、市場としても広がりを見せる余地はまだまだあると考えています」。

写真AC

また、ブライダル産業は少子化が進行する日本において大事な役割を担っていると権藤さんは話す。

「日本が抱える最も大きな課題である少子化などの課題と、婚姻組数の減少は密接に関わっていると思います。人口も先細りしてきているので、そういう意味では、ブライダル業界はビジネス活動を通して、そういった責任を背負っているともいえるかもしれませんね」。

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