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『日本人の勝算』 生産性向上こそ日本人の勝算の鍵

私は今米国に住んでおり、日本で保有しているマンションは三菱地所系の会社に委託して他の人に貸している。

昨年のゴールデンウィークにその物件の給湯器が壊れてしまい、その間の銭湯代(3千円程度)を支払って欲しいという依頼が借り主の方からあり、快諾したのだが、その金銭の授受に契約書が必要だという。

まぁ、金銭の授受に相応のペーパーワークが必要だというのは理解できるので、手続きを進めた。委託会社の担当者から、契約書を印刷して先方の押印をもらった後に、二部の契約書を郵送で米国に送付するので、双方押印の上、そのうちの一つを日本に郵送で送り返して欲しいと言う依頼をうける。

ちょっと待って欲しい、印刷した契約書に押印したものをスキャンしてPDFで送ってもらい、それを印刷・押印してスキャンして電子的に送付すれば終わりではないのか、何故わざわざ紙を郵送する必要があるのだろう。

書類作成業務が多い不動産会社がドキュサインのような仕組みを持っていれば、色々スムーズなことこの上ないが、それがないのは仕方がない。ただ、今どき原本を郵送で日米間でやり取りするって、どういう感覚なんだろう。

そして、PDFでやり取りしても法的には問題ないはずだ、と指摘して返ってきた答えが奮っていた。「法的には問題ないかもしれませんが、うちの社内はそれではまず通りません」日本の大手企業の「変わらない力」をここに垣間見た


日本人の勝算: 人口減少×高齢化×資本主義
作者:デービッド アトキンソン
出版社/メーカー: 東洋経済新報社
発売日: 2019/01/11
メディア: 単行本

 本書、『日本人の勝算―人口減少×高齢化×資本主義』はゴールドマン・サックスの元パートナーであるデイビッド・アトキンスが、日本の経済経済状況の参考となる海外の文献を読みまくり、日本に処すべき処方箋を書き綴った本だ。

筆者の日本愛とその裏返しである愛の鞭に溢れた本である。処方箋の骨子は、「日本がこれから迎える少子高齢化という大波を乗り越えるためには、生産性の向上が不可欠であり、中小企業の統合促進や生産性増加に伴う給与の増加などを国策として進めていく」ことが提言されている。そして、本書で容赦なく繰り返されるのが日本人の生産性の低さだ。

日本は、 GDP 総額ではいまだに世界第 3 位の経済規模を有しています。その要因は先進国第 2 位の人口の多さです。一方で、日本の生産性は世界第 28 位です。

本書のこのくだりを読んで思い出したのが冒頭の不動産委託会社とのエピソードである。国民全体の生産性というと自分ごとではないような印象を覚える方もいるかもしれないが、無駄な社内手続き、無駄な会議、無駄な判子リレー、そして無駄と思いつつも前例をただ踏襲し、問題を放置してきた結果が、生産性28位という結果であろう。先進国の中で未だにFAXが多く活用されているのも日本固有の事象だという指摘が本書ではなされている。

誰かが「日本人の変わらない力は異常」と言っていましたが、まったく同感です。私はこれまで、金融業界、文化財業界、観光業界で、どんなに小さいことでも反対の声ばかりが上がり、なかなか改革が進まないことを痛感してきました。

先日、本ブログで日本の英語教育に対して苦言を呈したところ「日本の英語教育は大学で論文を書いたり読んだりするためのもので、聞き取りや会話をすることを目的とされていない」という指摘が多くよせられた。

「より実践的な英語を身につけるための教育改革が必要」という声にも、「変わらない力」を発揮して、今のままでよいんだと古い感覚を総動員して理論武装する方が多いことに驚かされた。異常なほどの「変わらない力」で生産性という尺度での国際競争力が低下していることをもっと真正面から受け止めるべきだ。

筆者は別の統計から日本の人材の評価は世界4位であることを紹介する。米国で仕事を長くしている私の感覚からもこれはしっくりくる。日本人は、責任感は強いし、時間をきちんと守るし、一度やると約束したことはハードワークを厭わず実施するため、評価が高い。

そういったことは日本人としての当たり前と思うが、やると約束したこともプッシュされなければやらないのがグローバルスタンダードっぽいので、日本人として普通に供えた勤勉さを活かし、私もそれなりの成果をえることができている。

前例にとらわれずに、できない理由を完璧な論理的整合性を保って提示する代わりに、できるようにするためにはどんな課題があり、それを解決するためにはどうしたらよいのかを考え、古いやり方を打破する人が増えれば、他国に生産性でひけをとることなどまずないだろう。

筆者は本書で繰りかえし、「日本人の人材の豊富さを考えれば、生産性をあげることは十分に可能」だと強調する。デイビッド・アトキンスの愛の鞭を受け入れ、生産性向上に取り組む人が増えることを切に願う。耳が痛いと感じたり、鼻につく点もあるかもしれないが、良書であるので、多くの方に手にとって欲しい。

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