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世銀が中国を援助する不思議

中国イメージ 出典:pikrepo

古森義久(ジャーナリスト・麗澤大学特別教授)

【まとめ】

・世界第二の経済大国中国が世銀から巨額の経済支援を受け続けていることは不当。

・「国別パートナーシップ枠組み」で中国に対し2025年まで毎年10億から15億ドルの金融支援決定。

・日本は世界銀行にはアメリカに次ぐ二番目の額を出資。

世界銀行というのは開発途上にある貧しい小国を支援するために設立された国際機関である。

ところがその世界銀行の援助資金が中国に巨額に提供されている。おかしいではないか、とアメリカのトランプ政権が抗議の声をあげた。わが日本も世界銀行にはアメリカに次ぐ多額の資金を出資しており、無縁の論議ではない。

「世界第二の経済大国の中国が世界銀行から開発途上国並みの巨額の経済支援を受け続けていることは不当だから止めるべきだ」――アメリカのトランプ政権が公式にこうした抗議を表明し始めた。

▲写真 ホワイトハウスにて市長らに対して演説するトランプ大統領(2020年1月24日)出典:Frickr: the white house

1946年に創設された世界銀行は開発途上国の経済成長と貧困削減を目的として特別の低金利の融資や技術供与、政策助言などをする国際開発機関である。現在の加盟国は189ヵ国、本部はアメリカの首都ワシントンにある。

加盟国は経済開発の度合いに合わせて、援助を受ける国と援助を供する国とに分けられる。

この世界銀行は昨年12月に「国別パートナーシップ枠組み」と題する新たな国別支援計画を決めた。そのなかで中国に対して2025年まで毎年、10億ドルから15億ドルの金融支援を続けることを決定していた。

中国は現在は世界第二の経済大国に成長しながらもなお世界銀行の枠内では援助を受ける国として扱われ、一般の商業融資より低い4%台の金利での援助融資を受けてきた。

中国は1981年に世銀に加盟して以来、援助を受ける国として2018年までに総額600億ドルに達する援助融資を得てきた。この間、中国の経済は急成長を続け、2010年にはGDP(国内総生産)では日本を抜いて世界第二位となったが、なお世銀からは継続して援助を受けてきた。

この状況に対してトランプ大統領が昨年12月上旬、ツイッターで「なぜ世界銀行は中国に融資をするのか。こんなことがあってよいのか。中国は独自の資金を豊富に持っているのだ」と抗議の意を表明した。その背後にはアメリカ政府の明確な意向が存在していた。

▲ トランプ大統領の中国の世界銀行による資金融資への抗議表明ツイート 出典:twitter: Donald J.Trump

つまりアメリカ政府は世界銀行が公式に中国への支援の継続を決めた「国別パートナーシップ枠組み」への反対を明らかにしてきたのである。

アメリカ政府は世銀の出資金全体の17%を提供する最大出資国である。世銀の総裁もアメリカから選ばれ、いまは財務省出身のデービッド・マルパス氏が務めている。

アメリカ政府はトランプ政権になって中国がなお援助融資を受けていることに対して明確な反対を表明するようになった。しかもその反対はトランプ政権だけでなく議会上院の共和党多数派からも強く打ち出されていた。

だが世銀では主要政策は加盟国全体の多数決で決められるため、アメリカ側の意見は排されてきた。

アメリカ側の見解についてアメリカ政府と世界銀行の両方で高官を務めた開発援助の専門家ダニエル・ルンデ氏は以下のように説明していた。

(1)中国は世界でも最大の外貨約3兆ドルを保有しており、開発資金には国際機関からの支援を必要としない。

(2)中国は国民一人当たりのGDPでもすでに9500ドルに達し、援助受け入れ国を卒業した。

(3)中国は国際的な開発事業では自国主体のアジア・インフラ投資銀行(AIIB)を保有している。

(4)中国は世銀から得た5000万ドルの資金を新疆ウイグル地区のウイグル人弾圧の「教育・訓練プログラム」に直接、投入した。

ルンデ氏は以上の諸点を提起して、中国はもう世銀の支援を受けるべきではない、と主張した。中国はこれまでの世銀からの資金を自国の軍事増強や人権抑圧政策などに回してきた、とも非難したのだった。

ルンデ氏は総括として世界銀行の中国への支援融資は今後5年ほどの間に大幅に削減して、やがてはゼロにすることを主張していた。

トランプ大統領のツイッターでの反対意見は政府や議会のこの種の総意を踏まえての抗議表明だったわけである。

日本は世界銀行にはアメリカに次ぐ二番目の額を出資してきた。その一方、日本は中国に対して二国間の直接の政府開発援助(ODAを2018年まで40年間も供与してきた。だがなお日本国民の血税からの公的資金は世界銀行を通じて中国へ提供されているのである。

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