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東京五輪で一部民泊が「宿泊料金吊り上げ」、是か非か

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 需要があるならいくら高く設定してもいいではないか──というのはある種の原則かもしれないが、ホテルの運営会社ではプライスポリシーを設けているケースがある。

 たとえば、お馴染みのビジネスホテルでみると、料金変動が激しい印象のアパホテルでも、「上限は正規料金の1.8倍に決められている」とされ、その範囲内での変動については各ホテルの支配人に裁量が委ねられているという。

 一方、東横インでは、「大型イベントや観光シーズンなど、一時的に宿泊需要が急増する時期に大幅に販売価格を上げ、閑散期には極端に価格を下げるなど、日々価格の変動を行うことで収益の最大化を図ることは宿泊業界では一般的な販売手法となってきた」としたうえで、「日々料金を変動させることはしない」とする。

 続けて、「(予約する)タイミングによって同じ日・同じ部屋の料金が毎回変わるのはお客様の安心感を損なうことになる、そう私たちは考えます。料金の変動が少ないこと=お客様の安心感に繋がるものと確信しています。」(東横イン公式サイトより引用)とし、料金変動が常識というホテル業界にあって際立つスタンスを明示する。

 ホテルそれぞれに考えがあり、どちらが正しいかという問題ではないが、料金設定がもたらす利用者の心象への配慮もホテルブランディングに重要ということだろうか。

「いつも利用してきたホテルなのに」「弱みにつけ込みやがって」という声、「困った時はお互いさま」という発想。いずれもステイする場所を提供するというホテルビジネスだけに繊細なテーマである。

 いずれにしても、一般のホテルや旅館の料金変動については「公共性」が意識されていると強く感じる。「公益に資することが宿泊業の使命のひとつ」というホテル事業者の声もよく聞く。実際に「公益資本主義」を掲げるブランド(リゾートホテルやカプセルホテルなど運営する株式会社サンザ)もある。

 一方で、民泊は長らくグレー(ブラック)な状況下で存在してきた。様々な評価はあるものの、ようやく法令の交通整理が進み、既存事業者の振り分けがなされてきた。法的には宿泊業として資格を与えられたともとれるが、ある人気観光都市では住民との軋轢等から民泊に対する締め付けが連発しているらしく、まさに民泊に“宿泊業”としての資格があるのか否か試されているといってよい。

 多くのホテルや旅館業者は、宿泊というゲストが身を預ける場所だけに、安全性の担保をはじめプライバシーに対する意識など、厳しい法令条件をクリアしたうえでプライドを持って運営してきた自負を語る。そうした経緯から、未だ民泊に対する懸念を持つホテル・旅館事業者が多いのも頷ける。驚愕の料金設定をする民泊に、「いかにも民泊がやりそうなことだ」という旅館経営者もいた。

 地域あっての宿泊施設であり、ホテルの格はエリアの文化を表すともいえるが、“売れるなら儲けられるときに思いっきり値を吊り上げる”という宿泊施設が、果たして地域から共感を得られるか──。東京五輪を控え、観光立国邁進の裏にはリアリティのある問題が山積している。

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