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新型コロナウィルス問題をどう見るか

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(1)  新型コロナウィルス感染 - まだ最悪は見えない、サプライチェーンの遮断懸念

加速度的感染止まらず

新型コロナウィルスの蔓延が加速している。武漢での感染は公表されているペースを遥かに上回っているとみられる。チャーター便で武漢から日本に帰国した565人のうち8名が新型コロナウィルスに感染していた。1.4%というこの感染比率を武漢の人口1,100万人に掛け合わせると、15万人になる。中国当局は2月3日、感染者数は17,205人、死者数361人と発表したが、この数値は実態からかけ離れていると言えそうだ。香港大学の研究チームは1月25日時点で武漢市内の感染者が7.5万人に上ったとの推計を発表した(2月3日付 読売新聞)。

ウィルス学の権威、東北大学押谷仁教授は、「武漢では想像できないスピードで感染が広がっている。中国の各都市では武漢から2~3週間遅れて流行が始まった。今後すべての場所が武漢のようになるか注視していかなければならない。・・・  SARSと違い感染連鎖が見えない。潜伏期間でも感染するとなると、封じ込めを目指した公衆衛生対策にとって致命的だ。日本と中国との人の行き来を考えると、中国以外の国で最初に感染拡大するのが日本になる可能性は十分に考えられる。・・・今夏の東京五輪までに終息している可能性は低い」と述べている(2月3日付 日経新聞)。

WHOが緊急事態宣言を発表すると、直ちに米国は中国に滞在歴(過去14日間)のある外国人の入国拒否、米中直行便の約3か月間の運航停止を打ち出した。既に60か国が中国人の入国制限を打ち出している。中国政府も武漢を封鎖し、春節休業を延長するなどの措置をとっているが、すでに蔓延は重慶、北京、上海、広州、深圳などに及んでおり、手遅れとなっている可能性がある。2月3日現在で中国国内の患者数は湖北省11,177人(うち武漢5,142人)、湖北省外6,028人とすでに武漢市以外に大きく拡大している(2月3日付 日経新聞)。より広域、長期間の人的接触の遮断が必要になってくるかもしれない。その場合の経済的影響は深刻になるかもしれない。

(2) 但し、世界経済回復シナリオ不変

封印(=人的接触遮断)コストは世界リセッションをもたらすほどではない

新型コロナウィルスの究極の人的接触遮断により、事態はいずれ沈静化に向かうだろう。その場合でも、① 中国での経済活動遮断・需要と生産急減(少なくとも数週間~数か月間)、② 当面金利低下・物価下落圧力、などが想定される。その場合IMFが推奨するようにさらなる金融緩和が世界的に展開されよう。

厳格な水際遮断が打ち出された米国においては新型コロナウィルスが伝播蔓延する可能性はほとんどないだろう。となれば、米国経済がリセッションに陥る可能性は小さく、世界的景気回復、株高のトレンドは継続されると見られる。

かねてから説明しているように、10年以上にわたる米国長期景気拡大の中にもミニサイクルがあり、市場はその影響を受けてきた。最近では2015年春ピーク、2016年央ボトム、2018年春ピーク、2019年秋ボトムとなっている。2018年半ばからのミニ後退は、スマホや自動車の買い替えサイクルでピーク感が強まっている時に、米中貿易戦争が勃発し、不透明感から多くの投資案件が棚上げされたことによって起こった。しかし今、買い替えサイクルの一巡とともに、米中貿易戦争の不透明感も解消された。

ミニサイクルは2019年で底入れし2020年にかけて反転する軌道に入っている。新型コロナウィルスにより中国経済の下押しはあっても、対GDP比が消費70%、非製造業90%の米国経済がリセッションに陥るとは考え難い。ただ、旧来型の製造業やエネルギー産業などは世界最大の中国需要の落ち込みで、一時的に打撃を受けるかもしれない。

さらに5Gなど新技術投資が始まり、最先端半導体などで競争先行のための投資が活発化し始めている。中国は5G投資実績で他を引き離す構えで、中国国内での5Gハイテク投資が急増、他国もそれに引きずられて投資競争が始まりつつある。2018年以降の米中摩擦激化により世界の半導体投資に急ブレーキがかけられたが、それが逆に供給力制約となり半導体の需給の想定外の改善を引き起こす可能性がある。製造業景気変動に敏感な米国半導体株の最高値更新がそれを示唆している。

では米国経済(付加価値生産)の9割のウェイトを占める非製造業でリセッションが起きるとすれば、その原因は何だろうか。サービス業には製造業のように在庫循環も設備稼働率と投資の循環もない。医療・教育・娯楽・観光・専門サービス・不動産・流通・通信などのサービス業の拡大を止める主たる原因は金融であろう。① インフレ高進または通貨安による金融引き締め・金利上昇、② バブル崩壊による購買力の急減である。この点で中国経済へのダメージは金融緩和要因となり、市場にはむしろポジティブに働く面がある。

世界経済拡大という基本線が崩れないとすれば、(日本での感染拡大などの事態さえ回避できれば)日本株式上昇の長期トレンドは不変といえる。2月に日経平均の月足に2年移動平均線を1年移動平均線が下から突き抜けるゴールデンクロスが表れた。テクニカル及び需給面からは好条件が揃っている。2010年以降、ゴールデンクロスは2012年12月、2017年5月に続き3回目であり、いずれも大幅上昇の起点となった。新型コロナウィルスが制圧されれば、この間の下押しは上昇に向けての、絶好のスプリングになるかもしれない。

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