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新型コロナウイルスと危機管理

 中国湖北省の省都・武漢において、新型コロナウイルスによる肺炎患者が見つかったのが昨年末。それから1ヶ月もしないうちに患者数が増え、1月末現在で9000人を超え、2003年に大流行したSARSを超える事態となった。致死率はSARSが9.6%に対し、新型が2.3%と低めだが、一方感染率はSARSよりも高いと言われている。ヒトからヒトへの感染を繰り返すごとに毒性が強まり、致死率上がる可能性もある。現地では4次感染も確認され、日本国内でもヒトからヒトへの感染ケースが認められ、人数も17名を超えている。

 ちょうど中国は春節にあたり、人の往来が年間で最も多い時期のため、中国政府などは異例の対応をして来た。武漢市では市外に出る航空機や列車、高速道路を事実上封鎖、中国政府も団体の海外旅行を禁止するなど、新型ウイルスの封じ込めに躍起だ。SARSの際は中国政府から発出される情報が極めて少なく、国際的な批判を受けたことを教訓として、今回は破格の対応を取っているが、初動対応の遅れなどで、感染拡大防止の効果が十分とは言い難い。

 日本政府も水際作戦を開始したが、既に武漢を含め多くの中国からの団体客が国内に入っていたため、作戦は必ずしもうまくいっていない。武漢市に滞在していた日本人をチャーター機で救出するという、紛争や治安の悪化以外の理由として初めての措置を取ったが、うち2名の日本人が帰国時検査を拒否したことは、極めて残念である。その後この2人も検査に同意したと聞く。

 この度の新型肺炎は、国内で指定伝染病に指定されたため、強制的な入院や隔離は行えることとなったが、症状も出ていない人に検査を義務付けることまでは出来ない。危機管理のあり方に警鐘を鳴らす事態となっている。一人の人権を守ることは大切である。しかし多くの人々の安全を確保することも同様に大切である。このバランスをどう取るのかは、いつも悩むところである。今後議論されるであろう危機管理のあり方においては、後者をより重視する方向が望ましいのではないだろうか。

 この度の新型コロナウイルスによる肺炎患者の扱いについては、匿名性が守られている。しかしなんらかの理由で公に漏れた場合は、偏見や排除の論理が横行しかねないことが懸念され、ネット社会においてはなおさら気をつけなければなるまい。さらに今回はウイルス罹患が陽性になっても発症しないケースもあることや、なお致死率が過去の感染症に比較して低い数字であることなどから、国民の間では冷静に、しかしながら予防の手段は個々人において確実に実行してもらうことが、とても重要になっている。

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