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愛と経済
幼い頃の初恋に、高齢者の熟年離婚ーー。「愛」には人それぞれ様々なかたちがあり、なかなか一言では語れないものです。これらを経済という観点から見たとき「日本人のイマドキ恋愛・結婚事情」が見えてきました。バレンタインデーの季節に、いま一度、色んな愛のかたちについて考えてみませんか。

恋愛が若者にとって「コスパが悪いもの」に変わったのはなぜ?グラビアアイドル倉持由香が中央大学山田昌弘教授に聞いた

  • 2020年02月05日 09:58
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戦前、結婚するきっかけの約70%を占めていたお⾒合い結婚は、その後⼀貫して下がり続け2015年時点でその割合は約5%まで下がっています。⾃分で相⼿を選ぶ⾃由恋愛が⼀般的になりましたが、若者たちの中では異性と出会ったり、デートを重ねたりすることをコストパフォーマンスが悪いと感じ、「めんどくさいから恋愛はしない、結婚もしたくない」という人たちが増えてきているようです。

この意識の変化にはどのような要因があるのでしょうか?そして今後もこの「若者の恋愛・結婚離れ」は進んでいくのでしょうか?

昨年(2019年)11⽉にプロゲーマーのふ〜どさんとの結婚を報告したグラビアアイドルの倉持由⾹さんが「婚活」「パラサイト・シングル」という⾔葉の⽣みの親でもある中央大学の⼭⽥昌弘教授に話を聞きました。

【倉持由香&ふ〜ど 結婚インタビュー】「グラドルとしてはマイナスの結婚も、この人とだったらプラスに変えられる」

「コスパ重視」になったのはなぜ?

恋愛は「気を使う」「お金がかかる」「時間の無駄」――と、コスパが悪いと感じる若者が増えています。また「恋愛は面倒だからしたくないけれど、子どもは欲しいのでいきなり結婚したい」という究極のコスパ重視の声も。恋愛や結婚にコスパを求める意識はなぜ浸透していったのでしょうか。

倉持:私個人としては、「コスパを計算して人を好きになる」なんて考えたことすらなかったので、若者が恋愛でコスパ重視になっていることにびっくりしました。遠距離恋愛をしている人たちは交通費がかかって大変なんだろうな……くらいは考えたことはありましたが、それ以外で「好き」という感情に対して、お金を気にしたことがありません。
ただ、仲の良い男友達に「彼女作らないの?」とか「結婚願望ないの?」と聞くと「お金がないからできない」「自分の生活で精一杯で妻子を養っている余裕がない」と返ってくることも多いので、男性の場合はやはり収入に余裕がないと結婚する気持ちになれないのかもしれません。

山田:いま「若者の恋愛離れ」と言われていますが、結婚する人が少なくなっているだけではなくて、未婚者の中で彼女・彼氏がいる人もどんどん減り続けています。世の中全体でカップル自体の数が減ってきています。
理由はいろいろありますが、様々な調査で2000年を頂点にして、彼女・彼氏がいる人の割合が減っていっているんです。いない理由の中で一番多い回答は「めんどくさい」。細かく調べていくと、付き合うとトラブルがあるから面倒なのではなく、どうやら「コスパが悪い」という意味で面倒だと思っていることがわかってきました。

倉持:「この人と付き合いたい!フラれるかもしれないけど、デートを重ねたり頑張ってアプローチするぞ!」というマインドの人が減って、「お金もかかるし、めんどくさいから別に良いや……」というドライな若者が増えたということですね。

山田:バブルの頃、30年位前は、まさに当たって砕けろ式の人が多かったんですけどね。当時のテレビドラマは恋愛ものが多く、若者の間でも大人気でした。一方、最近流行っているドラマは「ドクターX」や「科捜研の女」など。これらは、女性を主人公にしていても恋愛要素があまり入っていないものが多く、恋愛への関心が減っているというニーズの変化をうまく捉えていると言えます。

倉持:バブル当時のドラマを見ると今の若者は「こんなに恋愛だけに全てを注げないよ」と思う人が多いかもしれませんね。

山田:30年以上、大学で教壇に立ってきましたが、若者は、恋愛に関してとにかく慎重になってきています。最近は、ゼミの学生の方から「先生、好きになったからってこの先続くかわからないし、一時的な気持ちで付き合ったり結婚したりしたらいけませんよね?」と念を押されました。

倉持:一番恋愛が楽しい時期のはずなのに……!!ハタチの子が、冷めることを前提に恋愛するというのはさびしさも感じますね。なぜこのように考えるようになったのでしょうか?
山田:理由のひとつに、やはり情報があふれる時代になったことがあるのではないかと思います。将来に不安があるため、常に確実な選択肢を取ろうとするようになっていきます。「失敗したら無駄じゃないか」と考えるようになってきたんですね。この傾向は恋愛に限らず、学業や就活などでも同様で、あらゆることに関して言えると思います。

倉持:トライ&エラーという考えが段々通用しなくなってきたんですね。

山田:2年ほど前、テレビの報道番組に私のゼミ生たちが出演したことがあるのですが、ある女子学生が「老後を見据えて個人年金保険に入りました」と言っていて、私やキャスターなどスタジオが仰天したことがありました。 「老後が不安だから学生時代から年金にお金をかける」なんていう発想は、私のような世代の人間からすると想像もできないことでした。それぐらい、将来に関して楽観的に考えることができない世の中になってきているのだと思いましたね。

倉持:最近では、老後に2000万円が必要という「老後2000万円問題」のニュースもありましたし、今後その傾向はもっと強まっていくかもしれないですね。

結婚する人の減少は「世間体重視」が影響

日本人女性が結婚相手に求めるのは、ずばり「お金」。意識調査では「結婚相手の年収は関係ない」と答えた女性はたったの2割、6割以上が「年収400万円以上」としています。また、相手が非正規・正社員かどうかを気にする人も女性の場合8割を超え、女性が結婚相手に経済的な安定を求める声は根強いようです。

倉持:私の場合は夫がプロゲーマーという不安定な職業なので、もし収入がなくなった時は自分が養うぞという覚悟で結婚しました。女性自身がお金を稼ぐことで「好きなのに相手にお金がないから結婚できない」という悲しい選択をしなくても良くなりますし、結婚後は世帯年収で考えていけば良いのかなと思っています。

ただ、婚活中の女友達は、相手の収入を気にしている子が多いですね。中には「年収3000万円以上じゃないと無理!」という子もいます。その子の場合、高身長や有名企業勤務など条件がほかにもいろいろとあって、まるで賃貸物件を情報サイトで探すときのように「風呂トイレ別」「浴室乾燥あり」「ディスポーザー付き」など、どんどんチェック項目を増やしていっているな……という印象です。あれ、どこかで妥協しないとキリがなくなってしまうんですよね。家賃の予算を上げるしか解決方法がなくなっちゃう。

山田:10年ほど前に、似たような調査をしているのですが、倉持さんのように「相手の収入にこだわらない」と回答した人は約2割。さらにその割合は10年くらいずっと変わらないんです。
「女性が結婚相手に求める年収」の意識調査

理想の年収にマッチする未婚男性は少ない

年収3000万円とはいかなくても、女性は結婚相手に「ある程度の」年収は欲しい、「せめて」安定した仕事、正社員でいて欲しいと望む人が大多数です。さらに、「親や友人に恋人を紹介するときにフリーターと付き合っているとはなかなか言いにくい」など、世間体を気にする目が働いてます。
今ではSNS上でも簡単に周りの私生活が見えますから、さらにその意識は強まっているかもしれません。

倉持:確かにSNSでも、「うちの彼氏は外資系勤務だから〜」とか「会社を経営しているの」とか、彼氏の職業マウンティングみたいなものを見かけます。

山田:また、収入が十分ある女性でも相手にはそれなりの年収の条件を求めます。そこには「このまま、働き続けることができるだろうか」という意識が背景にあります。

毎年、講義で女子学生に「結婚出産したら仕事を辞めたいですか?それとも続けますか」とアンケートをしているのですが、昨年、「その時にやっている仕事が“楽しかったら”続けるけど、大変だったら辞めたい」と答える学生が数人いました。

2015年に起きた電通新入社員女性の過労自殺事件の影響は大きく、自殺するまで追い込まれるくらいの仕事ならやりたくない、好きな仕事なら良いけど、体を壊してまで働きたくないという女子学生は増えてきています。
倉持:「仕事を辞めても良い権利」を持ちたいということですね。

山田:まさにそうです。一方、男性はそういうことを考えることはないわけです。収入が高い女性と結婚したら、もう仕事を辞めても大丈夫と思う人はほとんどいません。やはり、こうした側面からも日本の男女格差は大きいと感じています。

婚活アプリは若者の恋愛離れを変える起爆剤になるのか

この数年で、婚活アプリ「ペアーズ」などを使い相手を見つける人たちが急増しています。「友達に紹介を頼むよりも多くの人に出会えるし気軽」とコスパ重視の若者にはマッチしているようです。こうしたサービスは今後も広がり続けるのでしょうか?

倉持:私の周りでも、婚活アプリを利用する人はかなり増えました。登録している知り合いのアプリ画面を見せてもらったことがあるのですが、男性も女性もカタログみたいに出てきて。年齢、住まいのエリア、年収、職業といったスペック以外にも、結婚願望の有無、子どもが欲しいかどうか、デートの支払いは男性が払うべきか、といった考え方なども細かく記入されていて、「こんなことまで書いてあるんだ!?」とびっくりしました。
そのアプリを使っている知り合いは、「デート代は男性が払う、と回答している人じゃないと会わないの」と言っていて。その方の場合、事前にデート代の負担についての考えを見てから実際に会うかどうかを決めることができるので、「これなら理想じゃない人と会う時間やお金も使わずに済むし、コスパが良いだろうな」と感じました。こうしたサービスの盛り上がりはいつごろからなのでしょうか。

山田:ここ5、6年の間で使う人が増えてきました。昨年、私たちが行った調査でも、結婚まで至るカップルも全体の結婚数の5%程度まで増えています。

10年ほど前は「気軽に出会える代わりに、書いてあるプロフィールが本当なのかわからない」というリスクがありました。でも今は、独身証明書の提出を義務付けるアプリなども出てきましたし、コスパとリスク回避の折り合いがうまくつくサービスが出てきたということなのでしょう。

倉持:確かに10年前は「出会い系サイト」とも呼ばれ、使うのは危険だと言われることも多かったので、「安全に利用できる」ということは特に女性にとって大事かもしれません。

山田:もともと、日本社会は「偶然による出会い」が少ないという特徴があります。国立社会保障・人口問題研究所というところが50年位前から「結婚相手とどうやって出会ったか」という調査を継続的に行っているのですが、街中や旅先で会ったという「偶然の出会い」は5%くらいでずっと変わっていないんです。逆に欧米だと非常に一般的で、飛行機で隣同士で喋ったことがきっかけで結婚したという人もいるのですが。
街中など偶然の出会いは5%にすぎない

つまり、日本は例え飛行機や長距離列車で隣になっても、他人と普通にコミュニケーションをとるという習慣があまりないんですね。結婚するカップルの多数派は「自然な出会い」と呼べるものです。一番多いのが「職場結婚」。次いで「学校」での出会いです。こうした出会いが好まれるのは、付き合う前に相手のことがわかっているので安心できるからということもあります。職場結婚であれば相手の年収までわかってしまいますから。

そして、その付き合いが結婚につながっていくわけですが、自然な出会いが段々衰退してきています。背景には、職場で正社員の数が少なくなったり、職場自体が忙しくなったりすることによって、出会いが少なくなってきていることが挙げられます。それが、アプリの利用や結婚相談所に相談する人の増加にもつながっていきました。

倉持:婚活アプリの利用者は今後も増加し、日本全体の結婚数は増えていくのでしょうか?
山田:婚活アプリで出会う人の割合は増えていくと思いますが、結婚数が劇的に増えるかというと、今後もあまり変わらないのではないかと思います。男性の稼ぎが減っていく中で、相手の年収を気にしない女性が2割しかいないという現状は早急に変わるものではないでしょう。

そもそも、いま彼氏・彼女がいないという人の間で、相手を探そうと積極的に動いている人は、多めに見積もっても2割くらいしかいないんです。みんなどこかからくる出会いを待ってるんですね。
相手を探そうと積極的に動いているシングルは少数派

倉持:女子会だけしてたり、家にずっといるのに「結婚した〜い」と言っている人もいますが、さすがに結婚相手は空から降ってこないよ!自分からちゃんと行動しないと出会いもないよ……!とは思いますね……。

山田:その「降ってくる」時代は、1990年代に昭和時代と共に終わってしまったということを私は言い続けているのですが、残念ながらなかなか一歩を踏み出せない人が多いですね。

2007年に「婚活」という言葉を作ったのは「相手を待っていても来ませんよ」というメッセージだったのですが、特に女性は依然として、黙っていたら男性が見つけてくれるはずだ、それが一番いいと思っている人が8割いるというのが現状です。

倉持:私もそうですが「母親が専業主婦」という子は、私たちの世代では一般的です。でもいまは親と同じように結婚しようとすると、逆に相手がいなくてうまくいかない時代になってきているのではないでしょうか。出会いがある・ないという前に、私たち自身の意識を、時代に合わせて適応させる必要があるのかもしれませんね。

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